内力法
危険な魔物がいるという森の中に迷惑料代わりに送り込まれた俺ことアスラカーズは、目についたゴブリンに飛び掛かり、その頭蓋を拳で粉砕した。
「武器はいらないのかい」
「まぁ、これくらいなら素手でいいだろ」
俺のお目付け役にはシュレイドのパーティーがついている。
といっても、魔物を見つけるなり、俺が飛び掛かってぼこぼこにして殺すからすることもない。俺は人間は殺さないように努力してるけど魔物は別に死んでもいいと思ってるから、基本的に手加減はなしだ。
「ワイルドというかなんというか」
俺は足を払ってすっころばしたゴブリンの首を踏み砕く。
「危険な魔物ってこいつらじゃねぇだろ?」
俺がシュレイドに尋ねるとシュレイドは森の奥を指差した。
「街の近くの森だけど、開拓が進んでいなくてね、定期的に危険な魔物が現れるんだ」
ふーん、そりゃ領主の怠慢だな。俺は自然は征服するものって考え方だから、もっと開拓して魔物の住処をへらしてやりゃいいんだよ。弱い魔物が減るとそれを食う強い魔物が飢えるしな。まぁ、飢えた結果、なんかやらかさないとも限らないけど。
「っ! ダイアーウルフだ。ゴブリンよりも手ごわいぞ」
血の匂いに誘われたのかオオカミの魔物がやってきた。俺、動物嫌いなんだよね。動物で好きなのは人間くらい。
「手を貸そう」
「いいよ、別に」
俺がずいっと前に出ると一匹が突っ込んできたので踵落としで迎撃し、頭蓋を踏み砕く。気配からしてあと二匹くらいか。
俺はまたしても突っ込んできた狼の突進を横にずれてかわし、すれ違いざまに延髄に手刀を叩き込んだ。首の骨が折れ、神経が断裂したのだろう。頭だけが無様にのたうち回っている。
「やめてくれる? 暴力的な気分になっちゃうじゃん」
俺は振り向き、地面すれすれに低く構える。最後の一匹が襲い掛かってきたがそいつよりも身を低くしていた俺は下からそいつの首を掴み、腕力だけでへし折ると、力任せに地面に叩きつけ、止めに全力で蹴っ飛ばした。吹っ飛んだ体が木の幹に激突しぐったりと息絶える。
「どんなもんだい?」
俺は両手を広げ、俺の力量の称賛をシュレイド達に求める。
だが、シュレイドたちの表情はドン引きといった感じだった。
「いや、見事だよ。うん、これだけ鮮やかに魔物を殺せる人間はみたことがない」
表情に映っているのは恐怖に近いかな。
まぁ、これだけ暴力をふるうのに躊躇いが無くて、殺すのが上手な奴が近くにいたら嫌だろうな。
「で、どうシュレイド君は俺と喧嘩したいかな」
「仕事中だし遠慮しておくよ」
ビビってやがるな、つまらねぇ男だぜ。
まぁ、つまらねぇ男と面白くやるのが俺って男だからね。
「さぁ、次に行こうか」
俺は先陣を切って森の中を進んでいく。
ちなみにサンダルなんだが、そこらへんは誰か気を遣ってくれないのかしら。
とりあえず、その後も身の丈ほどもある蛇とか、鶏が巨大かつ狂暴化し人類への憎しみを糧に進化した化け物ともであったけど、全部殴り殺した。
頭蓋骨と脳味噌がある生き物は駄目だね、頭を砕くと死ぬからさ。つまらんよ。
「一応、サポート役としてきたんだけど、僕たち」
そりゃご苦労さん、いいサポート役してるよキミたちはさ。
ほら、脳味噌つぶすと手が汚れるじゃん、さっきから俺はキミらの服で手を拭いてるし、そういう点では役に立っている。
「待った。強敵がいる」
おっと、急に弓を持った斥候役の冒険者が警戒を促してきた。
「ハイオークとオークジェネラルの群れがいる」
ふーん、数は6匹か。
よし、じゃあ殺ってくるわ。
「待って、オークジェネラルは冒険者パーティーが何人もで──」
聞こえねぇ聞こえねぇ。何も聞こえねぇ。
ぶっ殺すと決めたら何も聞こえねぇ。
俺はこの場にいる誰よりも早く殺意を漲らせ、誰よりも早く敵の中に飛び込んだ。
硬いな。直感で判断した俺は右手に力を込めてぶん殴った。
それだけでハイオークの上半身がちぎれて飛んだ。
「くっせぇ、くっせぇ豚野郎ども。鎧や武器もって人間気取りかよ、四千年は早いぜ畜生共が」
俺はハイオークが振るってきた斧を生身の右手で弾いた。力を込めてるんだからなまくらじゃ俺の体に傷一つ付けらんねぇよ。
俺が拳を振るうたびにオーク共が肉片に代わり、逆にオークの刃は俺の体を通らない。
「俺はお前らがクソ嫌いだから、こうしてイジメてんの。だって、おまえら強くならねぇんだもん。どんだけ成長を待ってもクソのままだ。生きてても仕方ねぇよ」
オークジェネラルは立派な鎧を着たオークだが、俺の暴れっぷりにビビって腰を抜かしている。
「なんだよ怖いってのは分かんのか。そうか、そうか、感情が芽生えているんだな」
俺はしゃがみ込み、オークジェネラルの頭を優しく挟み込むよう掴んだ。
「……はぁ、つまんね」
俺はオークジェネラルの首を引きちぎり、そこら辺に放り捨てた。
ビビりはいらんはカス。
「おーい、もう出てきていいよ。全部片づけたからさ」
俺の言葉を聞いて、おずおずとシュレイドたちが姿を現すがその表情には明らかな怯えが見えた。
何を言えばいいかといった様子の彼らだったが、シュレイドが話題を変えるように言う。
「あの、アスラカーズ殿は体に闘気や魔力を込めて戦うことができるのですか」
おや、アスラカーズ殿に変わってら。
「いいよ、アスラカーズでもアスラ呼びでもさ。で、質問の答えだけど、できるよ」
言いながら、俺は右の拳に力を込めて見せた。
「説明しとくと、俺の……なんていったらいいかな、流派? 俺の流派では闘気とか魔力を区別しないのよ。体の『内から出る力』ってことで全部一緒くたに考えて『内力』っていうようにしてるの。俺の場合は魔力と闘気ごちゃまぜにすることで内力の総量を増やしてるのさ」
もう内力って言ったから、これからは内力って言い続けるからね。
「内力を通すと硬くなるし威力もあがる。そのうち身に着けたらいいよ。ちなみに身に着けるときは魔力と闘気を別のものとして考えてるうちは絶対に成功しないからね。で、身に着けるとスゲー恩恵を感じるからさ」
別に隠す技術じゃないけどわざわざ教えるほど仲も良くないからこんな程度でいいでしょう。
さぁ、引き続き魔物狩りをしていくとしよう。
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