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甲羅に刻まれた歴史 第2話

ご覧いただきありがとうございます。


引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。

*** 


スプラッシュの目に、海藻の間で昼寝をしている亀の姿が映った。



彼は何かを思いついたように、亀をそっと持ち上げ、人魚たちのもとへ連れてきた。


「なあなあ、俺たちもこの亀の甲羅に“あの模様”を刻んでみようぜ!」


「スプラッシュ、それっ!海神様、マレアルス様の使いの亀だよっ!」


「見て、お腹に海神様のシンボルがあるっ!!」


「早く戻してきてー!!」


2人の人魚は口々に叫び、慌てふためいていた。



そのとき、スプラッシュが手にしていた亀の甲羅がブルブルと震え出し、次の瞬間、亀が頭、手足を甲羅からゆっくりと出した。


「小童ども……ワシを持ち上げて、何をしようとしておった?」


地鳴りのように響く重低音の声に、人魚たちは一斉に動きを止め、息をのんだ。


「へっ? 寝てたんじゃないの……?」


スプラッシュが情けない声でそうつぶやく。


「……ワシを誰だと思っておる?マレアルス様の使いが、ただの昼寝をしているとでも思ったか?」


亀はゆったりとスプラッシュの手から離れ、ぐるりと旋回すると、セレナたちをじっと見回した。


「お前たちの声も、動きも……すべて聞こえておったわい」


その言葉に場の空気が凍りつく。


クラウディオは小さくつぶやいた。


「……やっちまったな」


亀様と目が合うと、クラウディオは何も言わず、静かに海の警護へ戻っていった。


使いの亀の甲羅には、古木のような深いシワが刻まれていた。


「この甲羅は何万年の間、大海原の記憶を刻んでおる。おまえさんたちが気安く触れてよいものではないっ!よって、人目に付かぬよう三日間、海の清掃をせよ」


と一喝した。


その言葉に人魚たちも背筋をピンッと伸ばし声を揃えた。


「はいっ!!」


と返事をした。



使いの亀はその光景を見て


「よいな」


と念を押しゆったりとした動きで、海藻の間に去って行った。



「なあなあ、この後どうする?」

とスプラッシュが尻尾をパタパタさせ、あおみを帯びた鱗がキラリと光を弾いた。



「私は、お母さんにヒトデを取って来るよう言われているの」

リーネが答える。



「セレナはどうする?」


セレナの目が輝き、顔がパッと明るくなった。


「私、やりたいことがあるから一度帰るわ」



「そっかー。じゃあ、夜にサンゴの丘で待ち合わせな」



そう言うと、人魚たちはそれぞれの家の方向に泳いで行った。



***



人魚たちはサンゴや岩で出来た家に住んでいた。



その一角、サンゴの岩で出来た家にセレナは帰ると、自室に籠った。


作りかけの貝のブレスレットを手に取り、少し微笑んでからそっと置いた。


次に選んだ貝に、一文字ずつ丁寧に刻み込む。


「S・E・R・E・N・A…っと。次はこれを通して…。」


文字を刻んだ貝を指でつまんで順番に通していく。

最後に留め具を取り付けて。


「よーし!できたっ!」


できたばかりの貝のブレスレットを眺めながら、セレナは少し考え込んだ。


「ゴミに引っかかって壊れたらヤダし……置いていこーっと。」



小声でつぶやく。



ユニコーンカラーの輝きを放つ、二枚貝で作られたアクセサリーボックス。


角度により色が変わり、乙女の心の様だった。


セレナは、そこにできたばかりのブレスレットを大切にしまった。



その後、母に今日の出来事を話す。


「三日間夜、海の清掃をすることになったんだぁ…。」


口をとがらせ少し不満げに言うと、母はくすっと笑って答えた。


「あら、海の掟を破ると大変なのよ。お友達と遊ぶのもいいけれど、ちゃんと守らなくっちゃね。大変な罰もあるのよ。」


とセレナに顔を近づけてると、一粒パールのネックレスが揺れ茶目っ気たっぷりに言ってきた。



「もっと大変な罰もあるの?」


「そうよ。お母さんが子供の頃は、すべての亀の甲羅磨きをさせられたわ。」



「お母さんも同じ事してたんだ……。なんだちょっと安心した」


と少しほっとしたように言った。



母は優しく微笑み、窓の外を見つめながら、やわらかく言った。


「セレナ、そろそろ家を出る時間じゃない?」


セレナも母の隣に並び木枠で十字に仕切られた窓から外を見た。海流が風の様に心地よく入ってくる。


海面近くで発光性プランクトンがゆらゆらと揺れて、夜の海に神秘的な光を浮かべていた。



「本当だ! 行かなきゃ」


セレナは母と軽くハグを交わすと、明るい声で言った。



「行って来るね」



そして、にっこり笑って家を後にしサンゴの丘に向かった。







3話を最後までお読みいただきありがとうございます。


引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。

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