幽霊
――真夜中。
とてもとても大きなベッドの上で。私の左隣でアリスが。右隣でルイナスが眠りについていた。
すやすやと。すやすやと。
とても気持ちよさそうに眠っているので、しばらく起きることはないと思う。
ベッドから普通に降りると物音を立ててしまうかもしれない。
なので、私は転移魔法を使って一気に廊下へと出たのだった。
「よし、完璧」
千里の果てを知る者よを使って部屋の中を視てみるけれど……うん、アリスもルイナスもよく眠っているね。
というわけで、私は抜き足差し足忍び足でそーっとルイナスの部屋へ――いやルイナスの部屋に転移しちゃえばいいのか。まず廊下に出たのはアリスたちがちゃんと眠っているか確かめたかっただけなのだから――
「――お嬢さまぁ? こんな時間にぃ、何しているんですかぁ?」
「ひぇえい!?」
ビックリした。めっちゃビックリした。でも最小限の叫び声で抑えた私、とてもえらい。
おそるおそる振り返ると――そこにいたのは、夜だというのにメイド服を着たままのフィナさんだった。
「ふぃ、フィナさんはこんな時間までお仕事ですか?」
「んや、そろそろ寝ようかなーっと思っていたんですけどね、お嬢様の部屋から魔力の乱れを感知しましたので」
私の専属メイドになったフィナさんは、私たちの部屋の隣で寝泊まりしているんだよね。主人が呼んだときにすぐ対応できるように。私たちの部屋に比べれば規模は小さいけれど。
「魔力の乱れって分かるものなんですか?」
「普通の人には話からないっすね。私は冒険者としての経験があって、しかも隣の部屋にいたからギリギリ察知できただけっす」
そこまで説明したフィナさんがジトーッとした目を向けてきた。
「で? リーナ様は何を?」
「えーっと、ちょっとトイレに♪」
「そこは『お花を摘みに』とか言って欲しいっすねぇ、公爵令嬢になったんですから」
「トイレにお花を摘みに」
「いやふざけないでいいっすから。トイレに行くために転移魔法を使うアホがどこにいるんすか?」
「ここにいますよ?」
弟妹を起こさないためならトイレまで転移魔法。それが私という姉である。
「あー……」
私の姉っぷりに感激のため息をつくフィナさんだった。
ま、冗談はこのくらいにしてと。
「フィナさんも倉庫にあった家族の肖像画を見ましたよね?」
「えぇ。後ろに控えていたっすから」
「何か違和感はありませんでしたか?」
「違和感……?」
首を捻るフィナさん。あれ? どういうことだろうと私も首を捻ってしまう。
……あ、そうか。
庭からルイナスの部屋を見上げたとき。私とアリスには幽霊の姿が見えたけど、フィナさんやお父様、そして他のメイドさんには見えなかったんだっけ?
じゃあ最初から説明しないとだね。
「ルイナスの部屋には幽霊がいるんですよ」
「えぇ。ルイナス様の亡くなったお母様の幽霊だって話っすよね?」
「はい。私もそうだと思っていたんですけど――肖像画に描かれたお母様の姿と、あの幽霊。別人だったんですよね」
※締め切りがヤヴァイので、しばらく不定期更新となります




