ちがう
「――へぇ、これがお姉様のお母様……」
「お姉様に似ていますわねぇ。お姉様もいずれはこんな美人さんに……」
ルイナスとアリスが目を輝かせながら肖像画を見つめていたけれど、私としてはもういいかなぁという感じだった。いやでも『子供』としてはもっと感激するべきかな?
「……無理しなくていいよ。『家族』の思い出はこれから作っていけばいいのだからね」
お父様が私の肩に優しく手を置いた。私にお母さんとの思い出が全くないことを気づいているのかな?
「すみません……」
「謝ることはないさ。私だって、記憶にない女性を母親だと言われても困ってしまうからね。……ただ、私たちがリーナを見て懐かしい思いをするのは許して欲しい」
「それは、まぁ、そっくりですから仕方ないですけど……」
どんな反応をするべきだろう? 前世も今世も『親』というものに縁が薄いのでどうにも分からない。
迷いつつ、私が手持ち無沙汰に視線を漂わせていたら――ふと、他の肖像画が目に入ってきた。
両脇を固めるのはお爺さまとおばあ様。
私の母はおらず、その代わりに別の女性がお父様の隣に立っていた。
この世界の衣装事情はよく分からないけど……たぶん、ウェディングドレスであるはずだ。おそらく結婚式の前か後に描かれたのだと思う。
お父様の隣で、ウェディングドレスを着た女性。
まず間違いなくお父様の奥さん――ルイナスの母親であるはずだ。
でも、違う。
彼女は、違うはずなのだ。
◇
ルイナスのスキルについては光明が見えたとはいえ、まだ私たち以外の人間は危なくて近づけない。というわけで、まだルイナスは一人でご飯を食べないといけないのだ。
夕食後。
ルイナスの部屋を訪れた私は一つの提案をしてみた。
「――ルイナース、今日はお姉ちゃんと一緒に寝ないかーい?」
「いいのですか!?」
聞くが早いか。私に抱きついてくるルイナスだった。獣が襲いかかってくるような勢いで。わーい、いいにおーい。ぷにぷにー。
「しゃーっ!」
そんな鳴き声を上げたのはミャー……ではなく、アリスだった。
「けだもの! お姉様から離れなさい!」
むがー! っと私とルイナスを引き剥がすアリスだった。美少女らしからぬ超パワー。アリスって身体強化使えたんだっけ? ……いや、ドラゴンの血を浴びたのだから能力が向上しているのかな?
「ちっ」
ん?
ルイナスが舌打ちしたような? 気のせい? ……気のせいに決まっているか。こんな天使のようなルイナスが舌打ちをするはずがないし。
『ミャー……』
なぜか呆れたようにため息をつくミャーだった。どしたの?




