弟ラブ
「――リーナに鑑定眼があるかどうかなど、教会でスキル鑑定をすれば分かるでしょう」
と、発言したのは同席していたおばあ様だ。
じろり、と。射殺さんばかりの目線を私に向けてくる。いやおばあ様? それ普通の7歳児は泣きますよ? 私は前世の記憶があるからセーフですけど。
「リーナにはルイナスに近づかないよう言い渡しておいたはずですが。なぜルイナスのスキルについて知ることができたのかしら?」
「あー……」
そういえばそうだった。安全性が分かるまで接近厳禁だったんだよね。まぁ弟愛力によって雲の彼方へと吹き飛んだけど。
だがしかし。
よく考えて欲しい。
いいや、考えるまでもないじゃあないか。
「――弟が困っているのですよ? 黙って見ていることなんてできません」
「自分の身に危害が加わるかもしれないのに?」
「そんなことを恐れて、どうして弟を愛でることができましょうか」
「……義理の弟よ? 出会ったばかりなのよ?」
「でも、弟ですよね?」
「……そうね、弟よね」
額に手をやるおばあ様だった。どうやら私の弟愛はちゃんと伝わったみたいだ。
『みゃー……』
呆れただけだろ、みたいにため息をつくミャーだった。失礼な、私とおばあ様の間には真なる祖母と孫の絆があるというのに。
◇◇◇
リーナが部屋に戻ったあと。
リーナの祖父であるガーランドと、祖母のセレス、そして義父となるガルナは顔をつきあわせての相談をしていた。
「うぅむ、リーナはルイナスを可愛がりすぎではないか?」
ガーランドの心配そうな声にセレスが首肯する。
「そうね。異常なまでの可愛がり方ね。まるで『弟』という存在そのものを愛しているかのよう」
「存在?」
「……リーナは物心つく前に実母と死に別れ、実の父と継母はアレ。しかも最近までは妹であるアリスとの仲も良好とは言いがたかったのなら……。『家族』に対して過剰な憧れを抱いていてもおかしくはないわ」
「なるほど、確かに。せっかくできた『弟』を可愛がっても仕方ないか……」
「でも危険かもしれないのにルイナスに近づくのはやり過ぎよ。もうちょっと頭がいいと思っていたのだけど」
呆れたような口ぶりでありながら、どこか嬉しそうな顔をするセレス。自分の『孫』が弟の苦難を見過ごすような人間ではなくて安心したのだろう。……それはそれとして後でお説教が必要だと考えてはいるのだが。
そんな複雑というか分かりにくい母の態度に苦笑しつつ、ガルナが軽く片手を上げる。
「しかしルイナスの病気――いや、スキルに光明が見えたのは素晴らしいです。このままリーナに任せるのも手なのでは?」
「うむ、儂はいいと思うが……」
ちらりとセレスの様子を確認するガーランドだった。よく言えば愛妻家なのだろう。
「まずはリーナが本当に鑑定眼を持っているか確かめてからね。これは何人か使用人のスキルを確認させれば明らかになるでしょう」
「それもそうですね。さすがにまだ使用人たちのスキルまでは把握しきっていないはずですから。今の状態でリーナが当てることができれば本物と判断していいでしょう」
「そうね、そうしましょうか」
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