援軍(ロズマルク 縁港)
誤字報告ありがとうございました。
※更新が遅れて申し訳ありません。
大陸の東に位置する港町ロズマルク。そこでは王弟派を率いていたエスカライザが守備兵の指揮を執っていた。
「エスカライザ様」
エスカライザの執務室に一人の女騎士が入ってくる。それはエスカライザの補佐を任されたルイーザだった。
「港にラングールの船が到着しました。これで物資の不足は解消されます」
「わかった。報告感謝する」
書類から顔を上げ、エスカライザがルイーザの目を見て軽く会釈する。それを見てルイーザも頭を下げた。
(エスカライザ様、怖いイメージがあったけど意外と親しみやすい方なのよね……)
ルイーザは頃の中で呟く。
エスカライザはローゼス王家の血筋を引いている。しかし前皇帝ロデリックがローゼス王となり、その後カザラス帝国を築いて権力を独占していた。エスカライザはローゼス王家の血筋に権力を取り戻すという大義名分を掲げている。だが皮肉にも、エスカライザが人々から支持を得るためのお手本としたのはロデリックであった。自ら戦いの先頭に立ち、身分の上下に関わらず有能なものを重用する。そうして人々を味方につけ、国を強国へと導いたのだ。
「おい、人間の女!」
その時、乱暴に扉を開け一人のダークエルフが入って来た。
「なんじゃ、ギディアム殿」
エスカライザが少し怒りながら入ってきたダークエルフ――ギディアムを睨む。
「ヴィセリエから連絡があった。ライナードって奴がこっちに来るそうだ」
「ほう、そうか」
エスカライザが表情を一転させ、嬉しそうに微笑んだ。
「それとイズミの奴らからも連絡だ。こちらに間もなく援軍が到着するらしい」
「そうか。ようやく一息つけるな」
エスカライザはため息をついた。ロズマルクには今一万ほどの兵しかいない。もし敵が攻めてくれば十分な兵力とは言えなかった。
「二百人のノースリッジ氏族も同行している。これで俺も帰れるぞ」
ギディアムがウキウキしながら言う。
ノースリッジ氏族はイズミに住むダークエルフの一族だ。他のダークエルフたちと長らく交流を持てなかったせいか、かなり神竜王国ダルフェニアに対して協力的だった。
「それは良かったな」
エスカライザが心の底から同意した。
「ほらほら、マジ早で準備しちゃって!」
明るい声が縁港に響く。それは女サムライのアヤメのものだった。アヤメは一万人の草薙家の兵とともにロズマルクを目指していた。ただ草薙家には大型船を所持していないため、小船で一度新田家のある津久間に渡り、この縁港から再び海を渡ってロズマルクに行くこととなる。
アヤメたちが準備をしていると、護衛を連れた一人の男が近づいてきた。長髪を後ろにまとめた、温和そうな顔の男だ。
「草薙家のアヤメ殿ですか」
それは新田家の当主、マサトラだった。にこやかな表情でアヤメに近づいていく。
「マサトラじゃん、おひさー!」
アヤメは笑顔で手を振る。マサトラの護衛は渋い顔をしていたが、マサトラ自身は笑顔のままだった。
「ていうか兵それだけ? ショボいわねー」
アヤメはマサトラ一行を見て顔をしかめる。
「ははは、申し訳ない。なにぶん、この前の戦いでかなりの損害を受けたもので」
マサトラは苦笑いを浮かべ、頭を掻いた。
「そんなことじゃ、あっちにも舐められるわよ」
アヤメは顎である方向を指し示す。その方向からは新たな一団が現れた。その先頭には幼さの残る顔つきの美女がいた。
「草薙家のアヤメ殿に新田マサトラ殿ですね」
その美女、市ケ谷カオリが勝気な表情で言う。市ケ谷家の現当主であるカオリが自ら兵を率いてやってきたのだ。その数は草薙家と同じく一万だ。
「あ、あんたがカオリ? やっほー」
アヤメが笑顔で手を振る。
「新田マサトラです。お会いできて光栄です」
マサトラは恭しく一礼をしてみせた。
「食わせ者と聞いていますが……海を渡る我々を攻撃したりしないでしょうね?」
アヤメがマサトラに冗談っぽく言い。
「ご心配はいりません。そのために私が同行させていただくのです。せめてもの誠意の証としてね」
マサトラが笑みを浮かべる。イズミの三家はともに協力して神竜王国ダルフェニアに援軍を送ろうとしているのだ。
「それに……今の戦力でアデル殿を敵に回すほど愚かではありませんよ」
マサトラは神妙な面持ちで言った。
「確かにうちのヒミコ様もいるからねぇ。人間が勝つなんて難しいのかも」
眉をひそめながらアヤメが言う。
「神竜の力ですか……」
カオリは複雑な表情で呟いた。三人の中で唯一、ヒミコの力を直接見ていなかった。
「ロズマルクとの連絡が取れた」
そこに一人のダークエルフがやってくる。ノースリッジ氏族のダークエルフ、ディクタだ。
「あちらからも船を寄こしてくれるそうだ。準備を急いでくれ」
こうしてイズミの面々は海を渡り、ロズマルクへと向かったのだった。
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