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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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展望(ヴィセリエ)

誤字報告ありがとうございました。

 彩ティアマや破魔妖狐と会っているうちに、時刻はすっかり夜になってしまっていた。


 アデルたちは会議室で夕食を取りつつ、ユリアンネ、ヒルデガルドから報告を受けることにした。


「このラインから北は土地が痩せているため、産業のある町を除いて放棄します。守備兵は最小限。エリアごとに基幹となる町を設定し、そこに機動力のある部隊を配置して突発の事態に対処させます」


 ユリアンネが地図を指し示しながら説明する。


「退去することになる住民たちにはほぼ同意を取り付けています。一部どうしても故郷から離れないという方がいますが、根強く説得を重ねるしかありません」


 ヒルデガルドが沈痛な面持ちで言った。


「そんなわずかな住民のために労力を割いてはいられないでしょう。他の住民が去れば生活できず、自ら町へと来るはずです」


「ですが、それではわだかまりが残ります。故郷を追い出されたという話が広まれば、私たちの統治が強引だという印象を与えかねません」


 ユリアンネの言葉にヒルデガルドが反論する。


「じゃあ皆さんの引っ越しが始まったくらいで、もう一度だけお願いをしましょう」


 アデルがフォークで鶏肉のソテーを差しながら言う。


 食糧に関してはハーヴィル解放軍に援助を要請し、順次輸送隊が到着していた。あくまでもハーヴィル解放軍を独立した勢力として扱いたいサラディオが王のままであれば反発していたかもしれない。現在はクロディーヌが王の座についているため、この要請は速やかに受け入れられた。


「そうだな。周りが引っ越し始めれば、自分たちの生活が立ち行かなくなることはわかるだろう。そのタイミングで助け舟を出してやれば、住民たちも不満には思わないはずだ」


 まだ前菜を食べているイルアーナが言う。


「わかりました。それでいいですね、ヒルデガルド」


「……はい、説得して見せます」


 ユリアンネとヒルデガルドが頷く。


「ですが……ひとつ懸念があります」


「はんですは?」


 ユリアンネに見つめられ、アデルは鶏肉を頬張る手を止める。


「見てください」


 ユリアンネは再び地図を示す。


「現在、ダルフェニアの戦力は西に偏り過ぎています。大陸の南半分を統治するつもりであれば、ミドルンもロスルーも遠すぎるのです」


「ええ……まあそれはそうなんですけど……」


 アデルはあまり乗り気でなさそうだった。せっかくミドルンに首都として様々な施設を建てているのに、遷都を行うのは気が引けたのだ。


「首都を移す必要はありません。軍事拠点を築けばいいのです。ただし帝国はもちろん領土全体に睨みが利くような場所でなければなりません」


「そんな都合のいい場所……あっ」


 地図を見たアデルは何かに気付いた。


 地図の中ほどには、アデルの求める都合の良い場所がある。それは昔カザラス帝国が敵対する三国を攻略するために建てた要塞だった。


「そうです。ドローレン要塞を手に入れるべきかと」


 ユリアンネはアデルを見つめながら言う。


「で、でも、停戦を受け入れてくれたんですよね? そこを攻撃するのはまずいかと……」


「ええ。ドローレン要塞を守るヨシュア殿はだいぶ理解を示してくださっています。最近の状況の変化を見れば、こちら側に付くか降伏してくださるかもしれません」


「も、もし断られたら……?」


 アデルは恐る恐る尋ねる。


「その時は……実力行使も考えなければなりません。ドローレン要塞が健在であれば、必ず帝国を攻める際に障害となります」


「そ、そうですか……う~ん」


 アデルは地図を見ながら唸る。カザラス帝国に攻め入るのにドローレン要塞を迂回出来ないわけではないが、背後を付かれたり留守となった領土を攻撃される恐れもある。確かに放っておくことはできない存在だった。


「少しよろしいですか?」


 その時、会話を聞いていたロレンファーゼが口を開く。


「何かいい案でも?」


「いえ」


 アデルは期待した視線を向けたが、ロレンファーゼは首を振った。


「お聞きしたいのですが、その要塞はどの程度の規模なのですか?」


「すごいおっきいんですよ。こんなに!」


 アデルは腕を大きく広げて見せる。だがそれでは大きさがわからず、ロレンファーゼは首を傾げた。


「この城の三倍……いや、五倍はあるかもしれません」


 ヒルデガルドがアデルの代わりに答えた。


「そうですか。そのくらいの大きさなら……」


 ロレンファーゼは何やら考え込む。


「何か気になることでも?」


 アデルはそんなロレンファーゼに尋ねた。


「ええ。ラーベル教会の軍勢を転移門で迎え撃った時……かなりの広さの地下室が見えました。彼らの本拠地を特定する手掛かりになるかもしれません」


「興味深いですね」


 ロレンファーゼの話を聞き、ユリアンネは険しい顔つきになった。


「ですが……ドローレン要塞の地下は考えづらいのでは? 一般兵が大量におりますし、ダルフェニア軍も監視しています。気付かれずに救命騎士を配備し、送り込んで来れるとは思えません」


「では他に同程度の規模の建物は?」


「帝都にあるイルスデン城くらいです。ですが私たちがいたころは地下には物資倉庫や宝物庫、牢獄などがあり、そんなに余分なスペースはありませんでした。もしかすると今は違うのかもしれませんが……」


 ユリアンネとロレンファーゼはラーベル教会の本拠地を検討し合う。しかしなかなか結論は出なかった。


「ここって可能性は無いんですか?」


 そんな中、アデルが地図を指さす。


「えっ……」


 アデル以外の皆が言葉を失った。アデルが指をさしたのは煉獄山地――古代魔法文明の首都があったとされる場所だった。

お読みいただきありがとうございました。

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