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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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好物(ヴィセリエ)

誤字報告ありがとうございました。

 中庭でキャロドレイクたちと別れたアデルたちは厩へと向かう。そこに彩ティアマたちが待っているからだ。彩ティアマに食べられないように馬は別の場所へ移動させている。


「おお、やっと来たティマ!」


 黒い大トカゲ、彩ティアマが厩から顔を覗かせる。彩ティアマは五人だけだった。


「どうもどうも。よく来てくださいました」


 アデルはペコペコと頭を下げる。


「運の良い男ティマ。我々の力があれば、怖いものはないティマ!」


 彩ティアマのイルマーがそう言いながらアデルに近寄り、背中をバンバンと叩く。そのあたりの仕草は人間と同じなようだ。


「ははは……ご希望の温泉は代替の場所がわかったので、町の復興が終わったらムラビットさんたちに掘ってもらいます」


 アデルは苦笑いしながら言う。彩ティアマたちには協力の見返りとして、温泉のある土地を要求されていた。


「助かるティマ。これで安心して卵を産めるティマ」


「卵?」


 アデルは首をかしげる。


「我々は卵を温泉で温めるティマ。そうするとより強い子が生まれるティマ」


(本当に温泉卵なんだ……)


 イルマーの話を聞き、アデルは顔を引きつらせる。


「ところで……イルマーさんが卵を産むんですか?」


「なにか問題ティマ?」


「い、いえ、なんでもないです」


(イルマーさん、メスだったのか……)


 アデルは顔をブンブンと振りながら思った。


 続いてアデルたちは城の中へと入り、客室のある区画へと向かう。その区画には談話室があり、そこで破魔妖狐たちと会う手筈を整えていた。


(けっこうたくさん気配があるな……)


 談話室の手前でアデルは思った。百近い気配が談話室にあるのを感じる。アデルは談話室の扉に手をかけた。


「失礼しま……うわっ!」


 扉を開いたアデルは固まる。談話室の中には大勢のうっふん美女が並んでおり、入ってきたアデルに視線を送っていた。


「お待ちしておりましたわ、アデルさん」


 破魔妖狐のアオバが進み出てアデルを迎える。


「ど、どうも……」


 アデルはグギギギと音がしそうなぎこちなさで頭を下げる。


「何をしている」


「おわぁっ!」


 イルアーナがアデルを押しのけて中に入る。続けてロレンファーゼとラズエルも中に入ってきた。


「ほほう、これはすごい光景ですな」


 ラズエルは微笑みながら言うが、イルアーナとロレンファーゼは破魔妖狐たちに冷たい視線を向けただけだった。


「お気に召していただけたなら何よりですわ」


 アオバが妖艶に微笑む。他の破魔妖狐たちもアデルを見つめていた。


(あれ……?)


 そこでアデルは違和感を感じる。破魔妖狐たちの顔を見渡して、その違和感の原因に気付いた。


(顔が同じだ……)


 美女に変身した破魔妖狐たちはほとんど同じ顔をしていた。顔つきに微妙な差はあるが、髪型が同じなら同一人物だと思ってしまうだろう。幻術で平均的な人間の顔に化けた結果、似たような顔になってしまっているのだ。


「アデル様に頂いた禁断の食べ物……みんなとっても気に入ったようです」


「ああ、それなら良かったです」


 アオバの言葉にアデルは安堵した。


「でも控えめにしてくださいね。あれは健康に悪いですから……」


「何をやったのだ? 麻薬か?」


 アデルにイルアーナが尋ねる。


「そ、そんなんじゃないですよ! 揚げチーズです!」


「揚げチーズ?」


 イルアーナは首を傾げた。


 破魔妖狐の協力を得るために、アデルは何をすればよいか考えた。そして好物をプレゼントすることにしたのだが、何が好物なのかわからない。そこでキツネの好物として油揚げを思いついたのだ。だが油揚げの材料となる豆腐がないうえ、そもそもキツネの好物が油揚げというのも日本の迷信だ。そこで豆腐の代わりになる白くて柔らかい物として、チーズが選ばれたのである。


 しかし人間ほどの料理文化のない破魔妖狐にとって、揚げ料理は未知の食べ物だった。味わったことのないサクサク感に、破魔妖狐たちはみな魅了されてしまったのだ。


「あんな美味しい料理が食べられるなら、みんな喜んでアデル様に協力すると申しておりますわ」


「わぁ、良かったです!」


 青葉の言葉にアデルは笑顔になる。


 そのアデルの横顔を、ロレンファーゼはじっと見つめていた。


お読みいただきありがとうございました。

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