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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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デコイ(旧エターニア領)

誤字報告ありがとうございました。

「あ、あの辺みたいですよ」


 アデルは空を見上げて言った。上空を千羽犬であるイバが旋回している。あらかじめイバが危険な魔物がいる場所に先行し、居場所を教えてくれているのだ。


「どんな魔物がいるという報告が来ているのだ?」


 同行するイルアーナが尋ねる。


「よくわからないんですけど、何人もの人間が襲われてたみたいなんですよね。偵察の兵士はそれを見てすぐ引き返したらしいんですけど……」


「正体は詳しくわかっていないのか」


「ええ。身の危険を感じたらすぐに離れるように徹底してるので……」


「確かに報告自体がもたらされぬよりはマシか」


 アデルの言葉にイルアーナが納得する。


「でもそこまで強い気配は感じませんわ」


 ヒミコが穏やかな表情で言う。だがそれはあくまでもヒミコの感覚であり、アデルたちはそれなりに大きな気配がいくつも動いているのを感じ取っていた。


「イバが見えてるかなぁ」


 アデルは空に向かって手を振る。それを見たイバはアデルに向かっておりてきた。


 イバはアデルの頭上で急制動をかけ、アデルの乗っている馬の上に降りて来る。


「おー、よしよし」


 アデルはイバを受け止め、頭を撫でた。アデルの前にはポチが座っているため、アデルとイバに挟まれる形となる。


「イバ、どんな魔物がいたかわかる?」


「ワン!」


 アデルが尋ねると、イバが一声鳴いた。


「『人間たちと大きなカエルが一緒にいる。数は十体ほどだ』だって」


 邪魔そうにイバをどけながらポチが通訳した。


(相変わらずしゃべり方に慣れないな……)


 アデルは苦笑いを浮かべる。カワイイ顔をしたイバが硬い口調でしゃべっているのがなかなか結びつかなかった。


「人間も? なんでだろう……」


 アデルは首をかしげる。


「ワン?」


 その時、イバが馬に吊り下げてある荷物袋の匂いを嗅ぎ始めた。荷物袋の口は開いた状態になっている。


「キャーッ! けだもの!」


「助けて、食べられちゃう!」


 荷物袋の中がギャーギャーと騒がしくなる。そこにはキャロドレイクたちが入っていた。連れて帰るために


「ワンワン!」


 それを見つけ、イバが嬉しそうに尻尾を振った。口からはよだれが垂れている。


「『おお、キャロドレイクではないか! 私の大好物だ!』だって」


「ダ、ダメだよ! その子たちは食べ物じゃないの! 絶対食べちゃダメだからね!」


「ク~ン……」


 慌ててアデルが言うと、イバは悲し気に鳴いた。


「アデル殿。どうやら敵がこちらに向かって来ているようです」


 ラズエルがアデルに声をかける。確かに気配が近づいて来ていた。恐らくイバの姿を見つけて付いてきたのだろう。


「そうみたいですね……」


 アデルは弓を構える。いざという時のために馬には乗ったままだった。


 すぐに大きな影が姿を現す。


「うわぁ……」


 アデルはそれをみて言葉を失った。


 それは確かに大きなカエルのように見える。大きさは3メートルほどだろうか。その群れがこちらに近付いてきていた。身体は周囲に溶け込むような緑色で、体中にコブのような突起がある。そして奇妙なのはその背中だった。


 そこには人間がいた。下半身はなく、カエルの背中から裸の上半身のみが生えている。カエル一体につき、五、六人の人間が生えていた。人間は生気が無く、無表情だ。よく見ると肌の質感はカエルの皮膚に近かった。


「なるほど、ヒトギンチャクか」


 イルアーナがその姿を見て呟く。


「ヒ、ヒトギンチャク?」


 アデルは顔を引きつらせながらヒトギンチャクの奇妙な姿を見つめた。


「背中にある人間を模した囮で他の生き物を引き付け、食糧とする。もちろん人間も例外ではない」


「そ、そうなんですね……」


 イルアーナの説明を聞きながら、アデルは弓を構える。


「コブからは毒液が出る。近付かれると厄介かも」


 ポチがボソッと呟いた。


「あれって……話とか通じないよね?」


「カエルだからね」


 アデルの問いにポチはあっさりと答えた。


「じゃあいいか」


 狙いを定め、アデルは矢を放つ。


「ゲゴッ!」


 低い鳴き声を上げ、先頭のヒトギンチャクが地面に突っ伏した。


「ゲコッ!」


「ゲコゲコッ!」


 仲間の死に怒る様にヒトギンチャクたちが声を上げる。そしてスピードを増して突っ込んで来た。


 だがその前にアデルの頬を熱気が撫でる。


蛙火厳焦かえるかげんしょう!』


 荒れ狂う火の蛇がヒミコから放たれ、ヒトギンチャクたちを飲み込んだ。


「ゲゲゲッ!」


 ヒトギンチャクたちの悲鳴とともに、人間の姿をした部分が助けを求めるようにもがく。


「う、うわぁ……」


 アデルはそれを見て目を背ける。しかしすぐにヒトギンチャクたちは焼け焦げ、動きを止めた。


「ふぅ。ヒミコさん助かりました」


「いえいえ」


 アデルが礼を言うと、ヒミコは控えめに笑顔を浮かべた。


「あれ食べていいの?」


「え?」


 ポチに問われ、アデルは固まる。


「でも毒もあるし……」


「熱に弱いから大丈夫なはずだよ」


「だ、だけど……」


 アデルは焼け焦げた人間の部分を見る。


「や、やっぱりダメ! あれは人間だから!」


「え~? カエルじゃん」


 アデルの言葉にポチは不満げに言った。


お読みいただきありがとうございました。

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