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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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呪い(廃村)

誤字報告ありがとうございました。

 それから一週間ほどの時が過ぎた。旧エターニア王国領内の魔物や異種族の情報が次々と集まってくる。ハーピーやケンタウロスなど馴染みのある種族もおり、使者が向かって交渉にあたる。またランドワームや沼オークなど、明らかに手懐けることが難しい魔物に関しては討伐隊が送られた。しかし未知の魔物が相手となると、多くの戦力が失われる可能性がある。そのためそういった魔物にはアデルが直接対処することとなった。


「じゃあ出発します」


 馬に乗ったアデルが言う。メンバーはムラビットの所に向かったときと同じくイルアーナにポチ、ヒミコ、そしてロレンファーゼとラズエルだ。


(それにしても……どうしてここまで協力してくれるんだろう?)


 アデルはロレンファーゼたちを見ながら思った。ロレンファーゼとラズエルは今回も自分たちから同行を申し出ている。他のエルフたちも異種族の捜索や町の治安維持に手を貸していた。当初はヴィセリエを攻略するための協力しかお願いしていなかったので、ここまでエルフが協力してくれるのは意外だった。


 アデルたちはヴィセリエを出発する。しばらく馬を走らせると、建物の影が見えた。


「あれは……」


 アデルはその村を見て呟く。


「農村だな。今は無人のようだ」


 イルアーナがアデルの横に馬を並べて言った。


「全員連れて行かれちゃったってことですか?」


「恐らくな」


 アデルたちは話ながら村の中へと入って行く。村の家々は無人で、扉も開け放たれたままとなっていた。十件程度の家々の間を抜けていくと、畑が広がっている。しばらく手入れされていなかった畑はほとんど雑草で覆われていた。


「畑も荒れてますけど……何か埋まってるみたいですね」


 アデルは馬の歩を緩めながら呟く。畑にはところどころに魔力を放つ植物が埋まっていた。周りの雑草より背丈が大きい。緑の細長いものが大量に生えていた。根元には赤い根が少し見えている。


「ニンジンですかね。それなら収穫して持って帰りたいですけど」


 アデルは馬を降り、そのニンジンに見える植物に手を伸ばした。


「ニンジン? まさか……」


 イルアーナが眉をひそめる。そしてハッと何かに気付いた。


「やめろ、アデル!」


「え?」


 アデルは振り向く。しかしその手はすでに緑色の部分を掴んでいた。そして振り向いた拍子にそれを引き抜いてしまう。


「キャァァァァッ!」


「えっ!?」


 周囲に凄まじい悲鳴が響いた。アデルはビクッと身体を震わせ、自分の手にしたものを見る。


 それは赤い体をした少女のようだった。地上に出ていた緑色の部分は髪の毛のようだ。大きさは30センチほど。その赤い少女は涙を浮かべながらアデルを睨みつけていた。


「どうしたの!?」


「何の騒ぎ!?」


 悲鳴を聞き、何体もの赤い少女が地面から這い出してきた。


「まずいな、キャロドレイクだ」


「キャロドレイク?」


 イルアーナにアデルが聞き返す。


「珍しい魔法植物ですね。マナが豊富で、それゆえ魔物たちの大好物です。この村はだいぶ前に廃れてしまったようですね。魔物も人間もおらず、肥沃な地面。それでここに移り住んできたのでしょう」


 ロレンファーゼがため息をつきながら言った。


「ちょっと! 何してんのよ、男子!」


「サイテー!」


「変態!」


 キャロドレイクたちはアデルを取り囲み、ぎゃあぎゃあとまくしたてる。


「え? え?」


 アデルはオロオロしつつキャロドレイクたちを見つめた。


「放してよ、痴漢!」


「あっ、はい……」


 手にしたキャロドレイクが暴れ出し、アデルは彼女を地面にそっと降ろした。


「あ、あのですね、悪気はなくて……」


「悪気が無かったら許されると思うの!?」


「やられた方は一生、心の傷として残るんだからね!」


 謝るアデルにキャロドレイクたちは罵声を浴びせかける。


「キャロドレイクたちは戦闘力がない分、大声で騒ぎ立てて相手に心理的ダメージを与えます。もっとも大抵の相手には効かないのですが……アデル殿には効くようですね」


 ラズエルが淡々と語った。


「何よこいつ!」


「私たちのこと見下してるの? このキャベツ主義者!」


 キャロドレイクたちはラズエルの足を蹴る。だが短い脚では何の痛みも与えられていないようだ。


「それでどうする? 食べる?」


 しゃがんだポチが一帯のキャロドレイクを持ち上げながら言う。


「な、何言ってるのコイツ!?」


「きゃー、助けて!」


 キャロドレイクたちは仲間を助けようとポチをポカポカと叩く。もちろんそれは何のダメージも与えられていなかった。


「だ、駄目だよ、ポチ! 放してあげて!」


「ん」


 アデルの言うことを聞き、ポチはキャロドレイクを地面に降ろした。


「ご、ごめんなさい。お騒がせするつもりはなかったんです!」


 アデルはキャロドレイクたちに頭を下げる。


「すぐに去りますから……」


「ちょっと、待ちなさいよ!」


 離れようとするアデルをキャロドレイクが呼び止める。


「責任取りなさいよ!」


「せ、責任?」


「そうよ! 生野菜を引き抜いたら責任を取るのが筋でしょ!?」


「え? え?」


 キャロドレイクたちに攻められ、アデルはただオロオロするしかなかった。


「噂通りか」


 イルアーナが呆れたように言う。


「噂?」


 アデルは助けを求めるようにイルアーナを見た。


「あぁ。キャロドレイクは引き抜いた者に呪いをかけると言われている。恐らく引き抜いても自分たちを食べなかった優しい相手に。自分たちの世話をさせるのだろう」


「な、なるほど……」


 アデルは足元に群がるキャロドレイクに目をやる。


「呪いって何よ、失礼ね!」


「まあ、あなたがどうしてもって言うなら面倒見させてあげないこともないけど……」


「そうよね、よく見たらそんなにブサイクじゃないし」


(ツ、ツンデレ……?)


 アデルは茫然とキャロドレイクたちを見つめた。

お読みいただきありがとうございました。

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