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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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交渉(ロスルー他)

誤字報告ありがとうございました。


「行くぞ! ガルルルッ……!」


 勇ましい声が空に響く。


 辺りには数百人の獣人たちが集まっていた。それを率いているのは犬系の獣人、ガドソラだ。


「アデル殿直々の要請だ! お役に立つチャンスだぞ!」


 ガドソラは尻尾をブンブンと振りながら声を張る。


「やれやれ、すっかり忠犬だな」


 その様子を見ていた獅子の獣人ガラウッドが呆れた口調で言った。


 獣人たちが集まっているのはロスルーだ。これから旧エレンツィア領に向けて出発するところだった。彼らには数名のダークエルフが同行する。


 彼らの任務は旧エレンツィア領内の異種族や魔物とコンタクトを取ることだった。獣人たちは戦闘力が高いのはもちろん、動物の血が色濃い彼らは言葉の通じない獣や魔物とも意思疎通しやすい。そのため彼らがこの任務に選ばれたのだった。


「当たり前だろう。なかなか活躍できる場がないからな」


 ガドソラが不服そうにガラウッドに言う。


 個々の戦闘力が高いはずの獣人たちだったが、戦争においてはなかなか華々しい戦果を得られていない。それは陣形や隊列といった集団戦法のせいだ。獣人たちも神竜王国ダルフェニアのもとで装備を一新し、集団戦法を学びつつある。だが獣人ごとに大きく特性が異なるため、あまり上手くは行かなかった。


「さあ、行くぞ!」


 ガドソラの勇ましい号令とともに、獣人たちは旧エレンツィア領へと出発した。






 薄暗い室内には緊張が漂っている。何本もの蝋燭の光が贅沢に室内を照らしていた。


「ふぅ……」


 豪華な服に身を包んだ貴族の男がハンカチでしきりに汗を拭う。


 そこは応接間だった。テーブルを挟んで向かい側には一人の女性が座っている。少し気の強そうな顔立ちで、浅黒い肌をした女性だ。


「いかがですか? ギュント殿」


 その女性はヴェルメラだった。前カザラス皇帝ロデリックの第六子だ。神竜王国ダルフェニア側に付いた彼女は、有力貴族とのコネクションを生かし、調略に励んでいた。


 ヴェルメラはダークエルフを中心とした数人の護衛だけを連れ、人目を避けながらカザラス帝国内へと侵入していた。


 すでにカザラス軍の監視網は崩壊しており、なんなく国境を通り抜けることができた。ヴェルメラたちが最初に接触したのは国境から近くに領地を持つギュント・ライター侯爵だ。


「そうですね。お誘いいただけたのは光栄なのですが……」


 ギュントと呼ばれた貴族は汗を拭きながら考えていた。時折ちらりとヴェルメラの後ろに立つ護衛を盗み見る。室内にいる護衛は二人で、そのうち一人はダークエルフ――リスティドだった。リスティドはダークエルフの幹部のような立場になっていたが、腕利きが求められる今回の任務のために護衛として同行していた。


「返事は急いだほうがいい」


 その視線に気づき、リスティドが低い声で言う。


「なに?」


「考えればわかるだろう。早い者勝ちだ。裏切者は過剰に必要ない。戦局を決定付け、相手の心を折り、損害を減らす。それに充分なだけの裏切者がいればいい。お前たちの前の皇帝もやっていただろう?」


「うぐっ……!」


 リスティドの言葉にギュントは黙り込む。


「お前たちがどれだけ抵抗してもカザラス軍が我々に勝てる見込みはない。いや、負ける前にラーベル教会に生け贄にされるかもな。お前たちも帝国の住民がどんどん消えていることは知ってるだろう? まさかまだダルフェニアが犯人だと思ってはいないだろうな?」


「もうおやめなさい。ギュント殿に失礼です」


 言葉を続けるリスティドをヴェルメラが止める。もっともこれは示し合わせたものだ。リスティドが脅しをかけることで相手を不安にさせ、ヴェルメラは礼儀正しく接することで相手に味方だと思わせる。捕虜の尋問などで使われる手であった。


「わ、わかった……少しだけ一人で考えさせてくれ」


 ギュントは絞り出すように言う。


「はい、わかりました。よいお返事を期待しております」


 ヴェルメラが言うと、ギュントは部屋を出て行った。


「さて……どうなることやら」


 ヴェルメラは大きくため息をついた。


 護衛の一人が扉に近づいて聞き耳を立てる。


「ドレイク殿。何を?」


 リスティドがその護衛――ドレイクに尋ねる。少人数による潜入ということで、アデルはもっとも信頼でき腕が立つ護衛として父親を選んでいた。


 ドレイクは腰に手を当てる。しかしそこには愛用している剣はなかった。ギュントに会う前に武装を解除され、他の護衛たちも待機している隣の部屋に置かれていた。


「立て。逃げるぞ」


「え?」


 ドレイクの言葉にヴェルメラはキョトンとする。だが意図を察したリスティドがヴェルメラの腕を引き、扉の近くまで引っ張っていく。


 それを待つこともなく、ドレイクは扉を開け放った。


「おい! 何をして……ウグッ!」


 扉の外に立っていた衛兵の声が途切れる。ヴェルメラたちが部屋の外に出ると、ドレイクの足元に喉を押さえて痙攣している衛兵の姿が見えた。恐らく喉に拳を叩き込んだのだろう。


 騒ぎを聞きつけたのか、隣の部屋の扉が開いた。他の護衛たちが待機していた部屋だ。すでに武器を構え、戦闘態勢に入っている。部屋には見張りの衛兵もいたはずだが、すでに排除したようだ。


 護衛たちは無言でドレイクとリスティドに武器を渡す。


「や、奴らが逃げるぞ!」


 廊下の奥からギュントの叫び声が響いた。周りには十人程の完全武装の兵を連れている。


「追いかけ……」


 追いかけろと言おうとしたギュントが固まった。逃げるどころか、ドレイクはギュントたちに向かって駆け出していたのだ。


 次の指示を出す間もなく、ギュントは切り倒される。ドレイクは周りの兵士とも交戦を始めた。


「町を封鎖される前にヴェルメラ殿は脱出を。私はドレイク殿の補佐に回ります」


「わかりました。お気をつけて」


 ヴェルメラたちとリスティドは別方向に走り出す。そしてしばらくして全員が無事に町を脱出したのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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