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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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縄張り争い(ヴィセリエ)

誤字報告ありがとうございました。


更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

 アデルはミドルンへ神竜娘たちやダークエルフなどの応援を求める通信を送る。異種族や魔物への対応のためだ。そしてエターニア出身の兵士たちや町の住民たちからも情報収集を行う。とはいえ首都であるヴィセリエの周囲には異種族や魔物はさすがにおらず、遠方の不確かな情報しか手に入れることはできなかった。しかしひとつだけアデルが気になる情報を得ることが出来た。


「犬?」


 アデルが首をかしげる。


「はい。ヴィセリエでは有名な空を飛ぶ犬です」


 いつもよりもハキハキとした口調でクロースが答えた。


「昔からいる犬で、はじめのうちは守備兵も撃ち落とそうとしていたのですが、すばしっこいのでそのうち諦めました。捕まえようとする貴族もいましたが、賢いうえに空を飛ぶので誰も捕まえられたものはいません」


「へぇー、そんな犬が……」


 アデルが興味津々で言う。アデルは犬派だった。


「おい、なんだあれは!?」


 アデルたちがそんな会話をしていると、にわかに兵士たちが騒がしくなった。


「噂をすれば……」


 アデルは空を見上げる。そこには羽の生えた犬のような生き物が飛んでいる。


「みんな攻撃しないでください!」


 兵士たちに言いながら、アデルはヴィセリエの外に向かった。クロース、イルアーナ、ロレンファーゼ、ラズエルが後へと続く。


 町の外に出ると、空を弧を描くように旋回している犬が見えた。


(すごいモフモフしてそう……ゴールデンレトリバーっぽいな)


 その犬は茶色い毛皮に包まれた大型犬に見えた。だがその背中には幾重もの羽で出来た大きな翼が生えている。


「あれは千羽犬ちばけんですね。その昔、ペガサスと犬が交配して出来た種族だとか」


 ロレンファーゼが空を見上げながら呟いた。


「ちばけん……そうなんですね」


 その名前に引っかかりつつアデルはどうにか気にしないことにした。


「おいでー!」


 アデルは犬に向かって手を振ってみる。しかし千羽犬は興味深そうに遠巻きに見つめて来るだけだった。


「来ないですね……餌とか欲しいのかな? 千羽犬って何が好物なんですか?」


「恐らくニンジンだと思います。ヴィセリエによく来ていたのは、誰かがコッソリ餌付けをしていたのかもしれません」


「そこはペガサス寄りなんですね……誰か、ニンジンを持ってきてくれますか?」


 アデルは門の近くにいた守備兵にお願いする。


「待て……何か他の者も近づいてくる」


 イルアーナが呟いた。確かに北の方角から何かが近づいてくるのをアデルも感じる。


「あれは……ドラゴン?」


 アデルがそれを見て呟く。それは馬ほどの大きさだが、全身が鱗に覆われていた。二足歩行でノシノシと歩いてくる様子は恐竜にも見える。鱗の色は黒を基調としているが、光の当たり方で様々な色に見えた。


「あれはさいティアマですね。ドラゴンに似ていますがトカゲです」


「彩ティアマ……」


 ロレンファーゼの言葉を聞き、アデルは怪訝な顔で呟く。


「彩ティアマか。魔法を操るなかなか厄介な魔物と聞いている」


 イルアーナが険しい表情で呟いた。


「おいおい、人間がいなくなったと思ったら、エルフやダークエルフがなぜいるティマ?」


 その声は彩ティアマから発せられたものだった。拡声魔法でも使っているのか元々大声なのか、まだかなりの距離があるのにその声は響いてきた。空からは千羽犬が少し遠慮がちに一声吠える。何か言っているのかもしれないが、アデルには分からなかった。


「エルフ、ダークエルフ! お前たちが人間の代わりにここを支配するティマか!?」


 彩ティアマが大声で尋ねる。


「我々は人間の要請で手伝っているだけです。ダークエルフたちも人間に協力しています」


 律儀にラズエルが答えた。


「なんだ、エルフもダークエルフも人間に従うティマか? 情けない」


 彩ティアマは嘲笑うように言った。


「あれはやってもいいのか?」


 イルアーナが彩ティアマを睨みながら言う。


「ちょ、ちょっと話はしてみましょう。せっかく言葉が通じるみたいですし」


 アデルは苦笑いを浮かべながら、イルアーナをなだめた。


「ほほほほ、ずいぶんと楽しそうね」


 その時、また新たな声が響く。声の主は気配を隠していたのか、アデルたちからそれほど離れていないところに立っていた。


 それは狐のような生き物だった。二本足で立っており、その背丈は小柄な女性ほどしかない。なぜか和風の着物のようなものを羽織っていた。


「あれは破魔妖狐ハマヨウコですね。かなりの魔法の使い手と聞いています。マナの濃い生息地を他の魔物から奪うことでその名がついたとか」


「ほう、そう来ましたか……」


 ロレンファーゼの説明を聞き、アデルはある程度予想していたかのように頷いた。


「破魔妖狐! 何をしに来たティマ!」


「あなたと同じですよ。最近、人間が急激に減ったようなので様子を見に来たのです」


 今にも噛みつきそうな剣幕の彩ティアマだったが、 破魔妖狐は余裕の笑みを浮かべていた。


(なんだこの上京……いや、状況は?)


 アデルは呆れた表情で魔物たちのやり取りを見る。


「邪魔をするならお前も倒すのみティマ……ん?」


「あら、これは……」


 彩ティアマと破魔妖狐が揃って同じ方向を見つめる。空では千羽犬が同じ方向に向かって吼えていた。アデルもその方向から多数の気配が近づいてくるのを感じる。


「どうやら我々だけではないようティマ」


「厄介ですねぇ。北の群魔ぐんまたちですか」


 彩ティアマと破魔妖狐の向いている方向では、土煙が上がっていた。


「へー、今度は群魔か……」


 アデルはなげやりに呟いた。その土煙は多数の黒い馬のような姿の魔物たちが上げているもののようだ。


「群魔は一体一体はたいしたことありませんが、あれだけの数を相手にするのは大変です。あなた方も逃げた方がよろしいですよ」


「ふん、言われなくてもわかるティマ」


 破魔妖狐と彩ティアマはその場から去ろうとする。


 その時、強烈な熱波が吹き荒れた。


「ひぃっ!」


「きゃぁっ!」


 彩ティアマと破魔妖狐から悲鳴が上がる。そして群魔たちは巨大な炎に襲われ、散り散りに逃げていった。次にアデルたちを巨大な影が覆う。


『襲ってきそうだったので攻撃してしまったのですが、よろしかったですか?』


 空から聞こえてきたのはヒミコの声だった。手にはポチを摘まんでいる。アデルの要請を受け、ミドルンからやってきたのだ。


「ま、まさか……神竜!?」


「ど、どうか食べないで欲しいティマ!」


 ヒミコを見上げ茫然とする破魔妖狐の横で、彩ティアマは恐怖にうずくまっていた。

お読みいただきありがとうございました。

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