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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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調査(ミドルン・ヴィセリエ)

誤字報告ありがとうございました。

 その頃、ミドルンでは兵士の一団が慌ただしく出立の準備をしていた。


「やっとの思いでここに来たってのに、また遠くまで移動させるなんてアデル王は何考えてんだい! 傭兵のことなんて駒の一個としか考えてないのかい? こっちだって人間なんだ! ちょっとは思いやりってものを持って欲しいね!」


 その中で一人の中年女性がギャーギャーと喚きたてている。”喚鳥”テレーゼ、黒鳥傭兵団の団長であるガーラントの配偶者だ。


「まあ傭兵とはそういうものだからね。押しかけたにもかかわらず、雇っていただけているだけでもありがたいじゃないか」


 ”黒装”ガーラントがそんなテレーゼをなだめる。


「そんなこと言ってるからあんたは舐められるんだよ! ここからヴィセリエなんて、ほとんど大陸横断じゃないかい! あたしたちはノルデンハーツにいたんだから、最初からそこに向かわせれば良かったのさ!」


「いや、ノルデンハーツにいた時はまだアデル様に雇われていなかったし……」


「わかってるよ! だけどあたしたちの気持ちにもなれってことさ! 誰かほかの奴らを向かわせればいいだろうに!」


 怒鳴り散らすテレーゼには目を向けず、傭兵たちは黙々と準備を続けていた。テレーザが理不尽なことを怒鳴り散らすのは彼らにとって日常の光景だった。


「アデル様にはアデル様のお考えがあるんだよ。ほら、我々にはまだ訓練が足りていないから、前線に立つ前に治安維持任務で経験を積むようにとおっしゃってくださっていたし……」


「つまりあたしたちが一人前じゃないってことだろう? 舐められたもんだね! あんたも馬鹿にされて悔しくないのかい!」


「いや、訓練を積んでいないのはその通りだし、それが理由で契約金を減らされたりもしていないからむしろ……」


「そうだ、思い出した! 強そうな奴らを連れて行って契約金吊り上げろって言ったのに、あんた全然だったじゃないか! 何やってんだい!」


 黒鳥傭兵団の傭兵たちはろくに剣の修練も積んでいない素人が多い。人数だけは揃えているが、その質は他の傭兵団に比べて著しく劣っている。


(それにしても……一目で我々の力量を見抜くとは。アデル王が武の達人という噂は本当なのだな)


 テレーゼの喚き声を聞き流しながら、ガーラントは思い出す。


 そして黒鳥傭兵団はヴィセリエへと出発したのだった。






「なるほど……」


 ヴィセリエ城でアデルは旧エターニア領の現状報告を聞く。


 想定していたことだが旧エターニア領は広大で、現状のダルフェニア軍の兵力で統治するのは困難だった。


「う~ん、どうしましょうかねぇ……」


 アデルは唸りながら他の者に意見を求める。


「いっそのことヴィセリエを放棄するという手もあります」


「え?」


 ユリアンネの言葉にアデルは驚いて声を上げた。


「住民も少なく、建物も損傷しています。しかしあくまでも選択肢の一つというだけです。ここは港も近く、各都市と街道も繋がっています。アデル王がこの町の修復にどれだけの労力をつぎ込むか。それ次第ではありませんか?」


「そ、そうですね……」


 そう言われてアデルは考え込む。


(正直、ハーヴィルほどは復興しなくてもいい気がするんだよなぁ……)


 クロディーヌやウルリッシュと言った関係者がいたハーヴィル王国と違い、アデルはエターニア王国にあまり縁がない。そのためそこまで旧エターニア領の復興に対する熱意はなく、保護を求める住民たちに対応する程度の気持ちしかなかった。


「ムラビットさんたちのお力を借りられれば町の修復自体はすぐに出来そうですが……」


 ヒルデガルドが呟く。


「おりますよ」


「え?」


 エルフの女王ロレンファーゼの一言にアデルは驚いた。


「ど、どこに!?」


「正確な場所は存じあげませんが、古の森の近くにも生息しているはずです」


「そ、そうか……そりゃこっちのほうにも異種族はいるはずですもんね」


 アデルは地図を見つめる。


「旧ヴィーケン領ほどではないだろうがな。大陸のこちら側の方が人間が幅を利かせている」


 イルアーナがそう言った。森や川の多い旧ヴィーケン領とは違い、旧ハーヴィル領や旧エターニア領は平地が多い。そのため人間の大きな町が作られ、異種族や魔物たちは僻地へと追いやられた。もともと旧魔法文明時代に人間を恐れ、多くの異種族たちは大陸の中心部から端の方へと移動している。旧ヴィーケン領に異種族や魔物が多かったのは、そういった影響があまりなかったからだ。


「こっちでも異種族の皆さんを探して、協力を求めましょうか」


 アデルは少しワクワクしながら言った。


「それであれば……辺境地に住む住民はヴィセリエに移住させましょう。そして異種族たちには協力の見返りとしてそれらの土地を与えるというのはいかがでしょうか」


「なるほど……そうしましょうか」


 ユリアンネの提案にアデルは頷く。


 この場にいるエターニア王国出身者はクロースのみだ。もし他にエターニア王国出身者がいれば、祖国の土地を異種族に明け渡すなどという決定に反対したかもしれない。しかしクロースは祖国への思いなどはなく、まったく反対することはなかった。


 そしてアデルは旧ハーヴィル王国・エターニア王国領の異種族や魔物の調査をするよう指示を出したのであった。


お読みいただきありがとうございました。

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