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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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飽和(ヴィセリエ)

誤字報告ありがとうございました。



 空を切って巨大な影がヴィセリエの上空を横切る。着陸地点を見極め、その巨大な影――ワイバーンは広場へと舞い降りた。


「ひぃぃっ!」


 火トカゲのことを思い出し、住民が悲鳴を上げる。ワイバーンは騒がしくなった住民たちを一瞥するが、興味無さ気に視線を外した。そして抱えていた大きな箱――カーゴを地面へと降ろす。その扉が開き、中から人影が現れた。


「ふぅ……やっぱりこのくらい離れてるとけっこう時間がかかりますね」


 先頭で降りたアデルは肩をほぐしながら呟いた。


「別にお前が直接見に来る必要などないのだぞ」


 アデルに続いて降りてきたイルアーナが呆れたように言う。


「部下を信用していないのか?」


「い、いや、そういうわけじゃないんですけど……なんか任せきりなのも悪いじゃないですか」


 アデルとイルアーナは足を止めて会話する。傍目にはアデルがイルアーナに怒られているようにも見えた。


 まだアデルを見たことのない兵士たちや、ワイバーンを見て集まってきた住民たちも不思議そうにアデルを見ている。


 アデルが少年のような風貌をしていることはカザラス帝国内でも広まっている情報だ。しかし同時に”神敵”や”首狩り”など、アデルの強さや恐ろしさを喧伝する異名も付けられている。カザラス軍内ではアデルによって受けた被害も把握されており、神話上の悪魔のような姿を想像する者もいた。


「アデル様、ようこそお越しくださいました」


 そんなアデルたちにライナードが微笑みながら近づいていく。


「あぁ、ライナードさん。どうもどうも。すいません、大変な仕事をお願いして」


「はは、理解してくださってるならまあ……」


 頭を下げるアデルにライナードは苦笑いを浮かべた。


(まだまだこの感じには慣れそうにないな)


 アデルはライナードが今まで関わってきた貴族や軍人たちとまったく振る舞い方が違う。


(どんな綺麗事を言っても統治とは力による抑圧だ。この感じで大陸を統治なんて……)


 ライナードはそう思いつつ、アデルの横に目を向ける。そこにはライナードの心を見透かそうとするかのように睨みを利かせているイルアーナがいた。


(抑圧担当はこっちか)


 妙に納得しつつ、ライナードは頭を掻いた。


「はぁ……これには慣れませんね」


「でもとても便利ですよ。帝国にも似たようなものが導入できれば良いのですが……」


 その時、会話をしながら新たにカーゴから二人の美しい女性が降りて来る。


「ユリアンネ様、ヒルデガルド様!」


 ライナードは二人を見て驚いた。それはカザラス帝国前皇帝ロデリックの第二子ユリアンネと第七子ヒルデガルドだった。


「ライナード殿。無事で何よりです」


 少し青い顔でユリアンネが会釈をする。どうやらワイバーンに酔ったようだ。


「まさか……ここの統治をお二人が?」


 ライナードは唖然としつつ尋ねる。ヒルデガルドはともかく、ユリアンネがわざわざ現地に赴いて指揮を執る姿は想像していなかった。


「ええ。出しゃばりかもしれませんが……」


「いえいえ、とんでもない!」


 ライナードは首を振る。第二宰相として帝国を仕切ってきたユリアンネであれば、旧エターニア領を復興させるのに適任だろう。そして効率を重視しがちなユリアンネの補佐として、庶民目線で考えることが出来るヒルデガルドが就くのは理想的だった。


「おいおい、着いたなら起こしてくれよ!」


 そこにカーゴから慌てた様子で一人の男が走り出てきた。二人の護衛として付いてきた”千本槍”リオだ。


「ああ、リオ殿もいらしたのですか」


 ライナードが苦笑する。リオとは共に窮地を潜り抜けた仲でありその腕前は評価しているが、関わらないで済むならそうしたい人物でもあった。


「おう。俺が来たからには大船に乗ったつもりで安心しな!」


 リオがライナードの肩をバンバンと叩いた。ちなみにこの世界でも「大船に乗ったつもり」という慣用句が使われる。大型の魔物が巣くう海でも安全な大船ということで、現代日本よりもさらに強いニュアンスで使うものだ。


「アデル様」


 少し様子を伺っていたクロースがアデルに近づき、地面にひざまづく。


「再びお目にかかることができ、光栄に存じます。先日ダルフェニア軍の末席に加わるという栄誉を頂き、ライナード殿の補佐を務めている……」


「あ、クロースさん。どうもどうも」


 挨拶するクロースにアデルはペコペコと頭を下げた。


「おお、わたくしの名を覚えて頂けているとは……感無量です! もしお時間があるのであれば、ぜひ城へお越しください。わたくしが世界中から集めた美術品をお見せいたします」


「そ、そうですか。も、もし時間が余った時は、行けたら行きます」


 アデルは愛想笑いを浮かべながら、遠回しにほぼ断った。あまり美術品には興味が無かったからだ。


「ぜひ! アデル様がお作りになった竜戯王カードもあるのですよ。わたくしもダルフェニア軍に取り立てていただいたからには、竜戯王カードに加われるような働きをお約束しましょう」


 クロースは目で必死にアデルにアピールする。


「期待してます」


 アデルは苦笑いしながらクロースの能力を見る。


名前:クロース・ヴァイラー

所属:ダルフェニア軍

指揮 66

武力 85

智謀 77

内政 63

魔力 17


(全然悪くはないんだけど……ちょっといまさら感があるんだよな。将としてならもっと優秀な人たちがいるし、かといって低い地位にしたら気にしそうなタイプだし……性格が良いなら色々任せたいけど、いかにも貴族の人って感じがするもんなぁ)


 アデルは内心でクロースの使いどころに悩んだのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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