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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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視察(ヴィセリエ)

 エルフたちに撃退されたことで警戒を深めたのか、その後ラーベル教会が奇襲を仕掛けてくることはなかった。ライナードは旧エターニア領内の各地に兵を派遣し、現状を把握する。幸い組織だった抵抗をする者はおらず、一部の熱心なラーベル教信者が抵抗を試みるだけだった。


 もし旧エターニア領内のカザラス軍が組織的に反攻しようとしても難しい状況だろう。カザラス軍の遠距離での連絡手段は伝書バードのみだ。それは伝書バードという鳥の帰省本能を利用し手紙を届けるものだ。しかし各町用の伝書バードを大量に用意するのは難しく、主要都市のみが伝書バードの安定した受け取りが可能だ。そこからは早馬に乗った伝令が連絡役を担う。旧エターニア領の場合は首都ヴィセリエが伝書バードの受け取り地点となっていた。旧エターニア領はカザラス軍の占領から十年強しか経っておらず、強固な連絡網を築く時間が無かったのだ。


 もちろん他にも伝書バードを飼育していた都市はあったのだが、ここ最近の動乱により食糧や兵士の催促、配置転換などで伝書バードが使い果たされていた。そのため各都市では指示を仰ぐことも友軍の状況を確認することも難しい状況となっている。


 また現在残っている守備兵の多くは徴兵されたばかりのほぼ民間人だ。わざわざ自分たちから指示を仰いで戦いに駆り出されるようなことはしたくなかった。旧エターニア領をダルフェニア軍が「解放」すると聞き、彼らは不安に思いつつも抵抗することなく降伏していった。


 こうして占領自体はライナードの予想よりもはるかにスムーズに完了した。だが予想以上に難航したのは食糧事情の把握だった。


 ライナードは各都市や村々にどれくらいの食糧の備蓄があるのか把握したかったのだが、どこからの報告も「食料の備蓄は全くない」というものばかりだった。食糧を接収されるのを恐れての事だろう。


 このためライナードは「ダルフェニア軍は絶対に食糧を接収しない」と約束をして、再度備蓄の調査に兵を送る羽目になった。それでも正確な備蓄量が報告されているかは疑わしかったため、さらに「虚偽の報告が発覚した場合、神竜王国ダルフェニアの特別措置である初年度の税制優遇が受けられない」という脅しをかけ、どうにか納得のできる報告を受け取ることが出来た。


「深刻は深刻ですが……覚悟してたほどではないですね」


 報告書に目を通し、ライナードはため息をつく。どうやら各都市はカザラス軍に対しても食料の備蓄量を偽っていたようで、多少の備蓄は持っているところが多かった。またヴィセリエのように住民のほとんどが消えてしまっていたり、そうでなくとも兵士として連れて行かれ人口の減少している都市が多い。


「畑の荒れ具合にもよるけど、いまから農業に力を入れれば今年の収穫でどうにかなりそうかな。港の修復もエルフたちがやってくれるそうだし、もうそっちは考えなくていいか」


 ヴィセリエのほど近くにはラングール共和国との交易を行っていた港町があった。しかしカザラス領になってからは交易が行われていなかったため、住民のほとんどが離れ港も放置された状態となっていた。そのためエルフの連れていたオークたちが桟橋の復旧などの作業に当たっている。


「でもこれは統治の準備段階に過ぎない。これからどうするかですね」


 ライナードは独り言を言いつつ肩をすくめた。


「貴族制の廃止とは興味深いですが……では統治をどうするのかという問題が付きまといます」


 神竜王国ダルフェニアでは貴族制を廃止したため、設立からずっと行政を担当する人材に悩まされている。貴族に領地として与えてしまえば国としては上納金や兵力を出させるだけで管理は楽だ。カザラス帝国前皇帝ロデリックが相手国の人材を引き抜くことに積極的だったのは、兵力を削るとともに併合後の管理のことも見据えていたのだろう。


「しかも実際は元貴族が要職を占めている状況。発想は良いと思うんですが……」


 一部は平民が務めているものの、神竜王国ダルフェニアの要職は下級の者もいるとはいえ元貴族が占めている。特にここしばらくはカザラス帝国からの人材の流入が相次ぎ、軍事にいたっては元カザラス軍人の方が多いくらいだ。カザラス皇帝一家の血族も多く、「神竜帝国カザラニア」などと揶揄する声もある。


 だがそういった声を上げるのはあくまでも一部にとどまっていた。大きな理由はアデル自身が平民であることだ。そして一から国を立ち上げ、ヴィーケン王国やハーヴィル王国、そしてカザラス帝国の人材を取り込み、異種族やドラゴンの力まで借りている。そういった成立の過程から他国の人材を取り込むのは当たり前の光景となっていた。平民にとってはたとえ数が少なくとも、国を運営する要職や役人への道があることは画期的なことだった。


「私は軍事はともかく統治はからっきしなんですよね。早く誰か送って欲しいところですが……」


「ライナード様!」


 執務室にいるライナードのもとに一人の兵士がやってくる。


「どうしました?」


「ダークエルフより伝言です。風魔法で連絡があり、アデル王が視察にやってくるそうです」


 その兵はノルデンハーツからライナードに付き従ってやってきた兵士だ。まだダルフェニア軍に所属して日が浅い者はアデルのことを「アデル様」ではなく「アデル王」と呼んでいる。ライナードもアデルに直接呼びかけるときは「アデル様」と呼ぶが、まだその呼び方に慣れてはいなかった。


「ほう、アデル王自身が。代わりの方を用意してくださってるといいのですが……」


 兵士の言葉を聞き、ライナードは呟いた。


お読みいただきありがとうございました。

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