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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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遭遇(ラパイソ近郊)

「たいして危険な目に遭わずに進めて良かったですね」


 アデルはほっとした表情で言った。


 アデルたちは森の中を順調に進んでいる。危険な植物はポチやダークエルフたちの知識でどうにかなった。また近付いてくる虫などはピーコの風魔法で作られた風刃によって駆除された。幼体で魔力がそれほどないとはいえ、風魔法の制御や正確さはさすが神竜といったところだ。


(たいして危険な目に遭わず……か)


 イルアーナはそんなアデルを少し呆れた目で見る。


「あっ」


 アデルは何かに気付いた様子で声を上げると、手を振るった。一瞬の動作で腰に携えていたクナイが空中を駆ける。


「グギャッ……!」


 すると10メートル以上先の木の上でくぐもった鳴き声がした。そしてドサッと重い音を立てて何かが地面に落ちる。


 それは大きな蛇のような生き物だった。しかしその頭部は鋭い牙を持ったライオンのものだ。蛇の体で音もたてず獲物に近づき、その牙と強靭な顎で獲物を仕留める。だがその額にはさきほどアデルが投げたクナイが突き刺さっていた。


「さすがアデルのカシラ、見事なもんです!」


 コカトリスのシャモンが死んだ魔物に近づき、アデルのクナイを引き抜く。そしてそのクナイをアデルに返しに戻ってきた。


「ありがとうございます」


 アデルは笑顔でクナイを受け取ると、刃についていた血を振り払った。


「あっちはロック鳥たちにやってええですか?」


 シャモンは死んだ魔物のほうに目をやりながら言う。


「ええ、いいですよ」


 アデルが言うとシャモンは魔物の死体を足で抱えて空へと飛び上がった。森の中でアデルが倒した魔物たちは上空で援護の機会を待っているロック鳥たちの食糧となっている。


(あの魔物をこれほど簡単に……)


 ダークエルフたちはアデルの戦闘力を見て驚いていた。普段行動を共にしているイルアーナと違い、他のダークエルフたちがアデルの戦いを直接見る機会はそれほど多くない。話には聞いていたが、実際にアデルが魔物を倒す姿は彼らの想像を超えていた。


(さすがに戦いに慣れてきたか……)


 イルアーナはアデルを見ながら思った。


 アデルは自身の力の強さに比べて気が小さく、戦闘時に力を発揮できない要因となっていた。しかしある程度戦いに慣れてきたためか、その辺の魔物相手であればあまり怖がらなくなっている。とはいえ、いまだに人間や大きな魔物が相手となると怖気づいてしまうことが多いのだが。


 その後もアデルたちはジャングルの中央を目指し、進み続けた。


「もうだいぶ世界樹は近そう」


 ポチが呟く。ポチは世界樹が放つ強い生命力を感じ取っていた。


「ということは……目的の部族も近いか」


 イルアーナが鋭い眼差しで前方を見据える。


「な、なるべく目立たないように移動しましょう」


 アデルが怯えながら提案した。しかしそう簡単にはいかない。草木にとって好ましい環境であるこの熱帯の森では、蔦や茂みが行く手を阻み、それらを切断したりしながらでないと先に進むことが出来ない。迂闊に茂みに足を踏み入れれば何が起こるのかわからないのがこの森だ。


 そのためどうしてもアデルたちは騒がしく音を立てながら進まねばならなかった。風魔法で音を消すことも考えられたが、その魔法自体が感知されてしまう恐れもある。


「ふむ。ここはひとつ、わたくしめが普通の鳥のふりをして偵察してまいりましょうか」


 ジェントアウルのセバスチャンがアデルに進言した。


「ちょっとそれは無理があるのでは……」


 アデルが顔を引きつらせる。セバスチャンは燕尾服のようなものを着ており、とても普通の鳥には見えなかった。


「どれ、ここはワシらの出番ですかいのう」


 セバスチャンを押しのけてシャモンが進み出る。


(……セバスチャンさんよりはマシか)


 アデルはシャモンの姿を見て思った。身体は大きく顔が凶悪なものの、姿形としては普通の鳥に近い。ロック鳥がいるような森であればそれほど違和感はないかもしれないとアデルは思った。


「じゃあ……お願いします。くれぐれも無理はしないでくださいね」


「おう、任しとくれなはれ!」


 シャモンは翼でポンと自分の胸を叩いた。


「うっしゃっ、行くぞテメーら!」


「おう!」


 張り切るシャモンの掛け声にコカトリスたちが答える。マーメイドを運ぶ役目以外のコカトリスたちが翼をはためかせて空中へ飛び立った。


「目的は戦闘じゃなくて話し合いですからね!」


 不安になったアデルがその背中に声をかける。


「わかっとります!」


 翼を上げてアデルの声にこたえると、シャモンは森の奥へと飛んでいった。


「さて……カシラの探しとる組のモンはどこかいのう」


 シャモンは森の中を捜索しながら進む。


「それにしても厄介な森や」


 森の中は枝や蔦が多く、まっずぐ飛ぶことが難しかった。


「……一休みするか」


 しばらく飛んだシャモンは一本の大木の枝に止まり、休むことにした。


「ふう……」


 シャモンの体重で枝がたわむ。


「ん?」


「は?」


 その時、シャモンは同じ枝の上で身を潜めていた一人のダークエルフと目が合った。


お読みいただきありがとうございました。

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