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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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ジャングル(ラパイソ近郊)

 森の入り口では蛮族の森の民たちがアデルたちを待っていた。森の途中までは彼らが案内してくれることとなっていた。


「お待ちしておりました」


 出迎えた森の民がアデルにお辞儀をする。その見た目は草の民に似ており、肌を包帯で覆っていた。近付くと香水のような強い匂いがした。


 森の民はコカトリスたちやダークエルフたちにしばらく視線を向けたが、特に何も発言はしなかった。


「よ、よろしくお願いします」


 アデルはペコペコと頭を下げながら彼らに近づく。


「本当に森の奥に向かわれるのですか?」


 少し困惑した様子で森の民が尋ねた。もともとそういう部族なのかロック鳥の一件があったからなのかは不明だが、他の蛮族たちに比べるとずいぶんと礼儀正しい態度だった。


「ええ。そうですけど……危ないですかね?」


 アデルは恐る恐る聞き返す。


「森には危険な虫がいます。どうぞこれを身体に塗っててください」


 森の民はそう言うとアデルに小瓶を差し出した。


「これは?」


「虫よけの薬です。虫が嫌がる匂いの草花の汁を煮詰めております」


 アデルの問いかけに森の民が答える。


 彼らが巻いている包帯にもハーブから取られた汁が染み込ませてあり、虫よけとなっていた。森には危険な毒や病原菌を持った虫も多く、刺されれば死に至ることもある。森の民にとってはどんな鎧よりも頼りになるものだった。


「あ、ありがとうございます」


 アデルは少し躊躇しながらも小瓶を受け取り蓋を開ける。草の民が放っているのと同じ香水のような匂いがした。かなり強い匂いだが、臭いわけではない。


 アデルたちは森の民の言う通り小瓶に入った液体を肌に塗りつけた。


「そちらの子供たちは?」


 森の民は神竜たちを見て言う。コカトリスに背負われた神竜たちは虫よけを体に付けようとはしていなかった。


「この子たちは……たぶん大丈夫です」


 アデルはどう説明すればいいか迷った挙句、言葉を濁した。


 その後、アデルたちは森の民の案内でうっそうと茂る緑をかき分けながら森の奥へと進む。その途中途中に森の民が仕掛けたという罠があった。罠にかかった動物は食用として町で売られるようだ。


「その花には気を付けてください」


 森の民が茂みに咲いている花を指さした。どぎつい色をした花の下には袋状の何かがついている。


「それはアシッドフラワーです。近付くと強力な酸を飛ばしてきます」


「えぇ……っ!」


 森の民の説明にアデルの顔から血の気が引いた。


 アシッドフラワーはその説明通り近付く獲物に強力な酸を吹きかける。そして溶けて地面に染みこむ獲物を根から吸収するのだ。付近には犠牲となった小動物の骨が転がっていた。


「こ、こんなものがあちこちにあるんですか?」


「ええ。注意深く観察すれば気付けますが、不用意に踏み込めばあっという間に死んでしまう。この森はそういう場所なのですよ」


 狼狽えるアデルに森の民はどこか得意げに言う。


「さて……申し訳ありませんが、我々がご案内できるのはここまでです」


 森の民はさらにそう続けた。まだまだ森の中心部までは距離がある。


「えぇっ!? もうですか?」


「この先は危険すぎます。皆様も引き返されたほうがよろしいかと……」


 申し訳なさげではあるが、森の民の口調には断固とした意志が感じられた。アデルが頼んだところでここから先へは一緒に進んではもらえなそうであった。


「植生はだいたいわかった」


 そんなアデルを尻目に、イルアーナが周囲の植物を調べながら言う。


「それに危険な場所には、そこに転がっている骨のように何らかの異変があるものだ。慎重に進めば問題ないだろう」


「ほ、本当ですか? でももし気付けなかったら……」


 イルアーナの言葉にもアデルは完全に怖気づいていた。


「なんじゃ、情けないのう。我が先導して進んでやろう」


 呆れた様子のピーコがコカトリスの背から降りる。


「……ひとつご忠告しておきます」


 森の民はアデルたちの様子を見て口を開いた。


「あなた方が何者なのか存じませんが……この森は特別です。あまり侮らないほうがいい」


 森の民の忠告には、やれるものならやってみろという思いが込められていた。


「忠告に感謝する。だが我々もまた特別。心配は無用……」


「あ、ありがとうございます!」


 イルアーナの言葉を遮るようにアデルが頭を下げながら森の民に礼を言う。アデルたちは森の民たちに見送られながらさらに森の奥へと進んだ。


 そして進むことしばらく。


 アデルたちはとくに被害を出すこともなく、森の中心部へと近づいていたのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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