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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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障害(死の砂漠)

更新遅れて申し訳ありません。


誤字報告ありがとうございました。

 その後も魔物などの襲撃もありながら、犠牲者を出すこともなくアデルたちは死の砂漠を進み続けた。


「死の砂漠っていうからすごい怖そうな場所を想像してたけど……無事に通れそうで良かったですね」


 アデルはそう言いながら矢を放つ。空から襲い掛かろうとしていたカランスが撃ち抜かれて地面に落ちた。


 カランスは槍の穂先のような身体に翼が生えた生物だ。空中から獲物に向かって突進し、その槍のような身体を突き刺す。槍のような身体の先端には小さな口があり、そこから獲物の体液を吸うのだ。硬い身体は少ない水分で生きられるよう砂漠に適応した結果でもある。


(こいつらどうなってんだよ……)


 そんな様子をラヒドは呆れながら見ていた。砂漠を渡るのは常に命懸けだ。過酷な環境に危険な魔物。そんな場所に住み続ける彼らは、もはや人間相手に戦うことなど怯まない勇敢な戦士となる。


 しかし簡単に砂漠を渡り、魔物たちを撃退するアデルは彼らの常識から外れていた。


「これはさすがに食えなそうじゃな」


「そう?」


「カチカチなの!」


 カランスを手にピーコ、ポチ、ひょーちゃんが話している。突進してきたカランスを素手で捕まえたのだ。


(とんでもねぇ化け物と手を組もうとしてるのかもしれねぇな)


 ラヒドは内心冷や汗をかく。


 そして数日ののち、一行はついに砂漠の端へと辿り着いた。まばらに植物が見えだしたかと思うと、すぐに草の生い茂る草原となった。草は腰の高さまでうっそうと生えており、進むのに相当苦労しそうだった。


「船はここまでのようだな」


 その様子を見てイルアーナが言った。


「船はここでおいて行くことになりますね。見張りとかどうしましょう?」


 砂船から降りたアデルは考え込んだ。


「我々が船をお守りしますわ。これだけ草が生えていれば、蜜のとれる花もあるでしょう」


 そこに名乗り出たのはハチアリたちの女王、ハニー・アントホーネットだった。


「いいんですか? どれだけお待たせするかわかりませんけど……」


 アデルは遠慮がちに尋ねる。


「ご心配なく。わたくしたちハチアリは触覚で200通り以上の遊びができますのよ。退屈とは無縁の種族ですわ。オーッホッホッホッ!」


 ハニーは口元に手を当てて笑った。


(どんな遊びなんだろう……?)


 アデルはそこが気になりつつも、ハチアリたちに砂船の番を任せることに決めた。ハチアリたちであれば空から周囲を警戒することもできるし、砂船を移動させることもできる。一番の適任だろうと判断した。


「じゃあお願いします」


 アデルはハニーに頭を下げると、他の者には荷物をまとめ出発するよう指示を出した。


 アデルたちは荷物を背負い、草原を進む。しかし背丈の高い草をかき分けて進むのは想像以上に困難だった。


「すまぬな、俺たちだけ」


 蛮族の一人が笑顔を浮かべる。足の長いヒトコブダチョウはこの草原でも難なく進むことが出来た。砂船に嫉妬していた蛮族にとって仕返しが出来たような気分なのだろう。


「これは大変そうですね……しかも暑い……」


 アデルは呟く。周囲は湿度が高く、砂漠にいた時よりも暑く感じた。軽装のアデルはともかく、鎧を着ている神竜騎士たちはさらに大変そうだった。


「我々ダークエルフやコカトリスたちの魔法で強引に切り開くこともできるが、どれだけの距離があるかもわからん。消耗は避けるべきだろう」


 汗をぬぐいながらイルアーナが言う。


「まさか砂漠よりも草原のほうが大変とは……」


 神竜騎士たちを率いるクライフが早くも汗だくになりながら言った。


「ホッホウ! どうやら私の出番のようですな!」


 そんなアデルたちの近くにジェントアウルのセバスチャンが飛んでくる。


「え? セバスチャンさん、この草をどうにかできるんですか?」


 アデルは意外そうに尋ねた。


「ホッホッホッ! もちろんそんな大それた力はございません!」


 しかしセバスチャンは自信満々に首を振る。


「ですがこれだけ自然があれば、色々な生き物がいるでしょう。乗せてくれそうな者を探して参りましょう」


「なるほど……お願いします」


「承知しましたぞ!」


 アデルが頷くと、セバスチャンは空へと舞い上がり飛び去って行った。


「大丈夫なのか? 何を連れて来るかわからんぞ」


 眉をひそめたイルアーナがセバスチャンの飛び去った方向を見つめる。


「大丈夫でしょう。それよりこの状況をどうにかしないと」


 アデルはそう言いながら自分の首筋をぺちっと叩く。どうやら蚊のようなものもいるらしかった。


「砂漠から先のこともしっかり聞いておくんだった……」


 アデルは後悔する。大きな障害となるであろう「死の砂漠」のことばかりに気を取られ、そこから先の確認を怠っていたのだ。蛮族たちも話題にしなかったことから「死の砂漠」ほどの危険性はないのだろうが、何らかの対策は必要だった。もっとも蛮族たちとしてもアデルたちは馬か何かに乗って砂漠を渡ろうとしていると思っており、こんな渡り方は予想もしていなかった。


(苦労しているな)


 ラヒドはアデルたちの様子を窺う。


(何人か先行させて騎乗動物を確保してくるか……恩を売るチャンスだ)


 ラヒドはアデルたちとの交渉で有利になる要素を見つけ、心の中でほくそ笑む。


「ん? あれは……!?」


 だがそれを実行する前に、ラヒドは草むらをかき分けてこちらへ向かって来る巨大な影に気付いたのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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