2、烏夜と蒼穹
六花「そっ、そんなわけないじゃないですか」
梓「いや、今ちょうど『妖狐と椰乙女村の歴史』読んでたんだけど、玉藻前の尻尾とぴったりだ…『嵐吹く』」
梓は百首の内の青、大然の蒼天の歌の最初の5文字だけをを唱えた。
能力が使えるのは、唱えている間だけ。一度唱え終えるとクールダウンが10〜30秒ほどある。
梓は、風の力で手元に『妖狐と椰乙女村の歴史』を持ってきて、ぱらぱらとページをめくった。
梓「えーっと…ほら、これ」
六花「……っ」
そう言って示されたページは、玉藻前の容姿がいくつか描かれており、梓は狐の姿を指していた。
通常の尾よりは1.5倍ほど長く、毛量も2倍近くあり、くすんだ色……
六花の2本目の尻尾の特徴にぴったり合っていた。
梓「……あのさ、六花。話したいことがあるから、明日の午前10時、ここに来てくれる?」
六花「は、はい」
梓「…あ、あと。"歌"は結局何にした?」
六花「黒だったので煌星、です」
梓「わかった、ありがとう」
玉藻前と尾が同じということが発覚した瞬間からのいつもとは違う、真剣な表情と口調に、六花は少し疑問を抱いた。
梓「煌星…確かあと二人が黄昏と花影だから…樹華と大然が1:2で丁度…今こそ漠嶺界に行く時…?他の村に遅れは取りたくない…」
何かぶつぶつ言っている。
梓「(梓の真剣な表情とか口調なんて見たの初めてだ…そんな、重大なのか…?)」
少しもやっとしながらも、六花は梓の元を去った。
六花「……失礼しました」
いつもの返事はなかった。
ーーー
六花「村長、六花です」
しーん…
六花「…あれ?」
返事がない。
すると、のれんが上がり、出てきたのは…
天に真っ直ぐと向かう角を生やし、髪は黒く、皮膚がほんのりと赤くて、爪の長い子供だった。
⁇「村長は今、不在だよ」
六花「!?」
六花は不意打ちに思わず尻餅をついた。
六花「だっ、だだ誰ですか??」
蒼穹「俺は蒼穹。坂脩から来た!ソウって呼んで!」
そう言ってニカっと笑った歯は、鋭く尖っていた。
六花「さっ、かなが…?なんで酒呑童子の子孫がここに…」
蒼穹「一昨日、12になったんだけどさ。急に左腕がむくむく成長しだして、ほら、見てよこれ」
そう言ってソウが見せてきたのは、真っ赤になり筋肉がこれでもかというほどついた腕だった。
蒼穹「利き手じゃなくてよかったよ〜。村長に話したら、なんか『酒呑童子の腕だ』とか言われてさ〜…あっ、急に自分語りして、ごめんな」
六花「いや…大丈夫だけど……」
六花はちょっと情報量が多すぎてついていけてなかった。
六花「とりあえず、中に入れば、いい…?あっ、僕は六花」
蒼穹「入れる許可はもらってるよ〜、六花ね、よろしく!」
のれんをくぐると、一人誰かが座って本を読んでいた。
白い翼に白髪、高い鼻。
⁇「…あ。ここの村の?」
六花「えと、うん。僕、六花」
座っていたところのそばに本を置き、立ち上がってこちらに向かってくる。
烏夜「私は烏夜。よろしく。今三大村の長たちが会議してるんだって。もうすぐここの村の長が来るから、待ってろとの命令が出てる。」
六花「よ、よろしく」
少しの沈黙。
六花「あのさ、ここにいる全員の共通点ってなんだろう…」
蒼穹「確かになー」
ソウがすかさず反応してくれる。
烏夜「異変が起きたとかじゃないの」
烏夜が口を挟む。
蒼穹「俺と六花はまだわかるけど… 烏夜は?」
烏夜「私?確かに、見た目は変わってないね。けど、」
烏夜はそう言うと手を出した。その瞬間、手の上に煙が現れ、煙が晴れるとそこにはうちわが握られていた。大きなうちわで、手のように分かれた葉に持ち手がついた物だった。
烏夜「自由にコレが出せるようになった」
烏夜が手に持ったうちわを軽く振ると、
ぶおっ
それに見合わない強風が吹いた。
六花「…大天狗の力おっそろし」
蒼穹「…だな」
梓「お待たせ〜」
六花「あz…村長」
梓「あ!今『梓』って言いかけたでしょ〜?」
六花「言いかけてませんっ」
梓「言いかけてた!」
六花「違いますって!!」
烏夜「…ここの長と六花って仲良いんだね。イイ感じじゃん」
と烏夜。何か意味深な気がする。
蒼穹「な。昔仲良かったのかな〜」
梓「…で、六花、烏夜、蒼穹。話なんだけどね、とりあえず座って」
さっきとは打って変わって真剣な口調になった梓は、3人を座らせた。
梓「えっと、本題から言うと…君たち3人には、“ 漠嶺界”に行って、魔王を倒してほしいの。」




