↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/4

1、玉藻前

日本三大妖怪。

大天狗(だいてんぐ)・崇徳上皇(すとくじょうこう)、

九尾の狐・玉藻前(たまのもまえ)、

鬼神(きじん)・酒呑童子(しゅてんどうじ)。

その妖怪が眠る、3つの村__

大天狗眠る、「羽生叉村(はぶさむら)」。

九尾の狐眠る、「椰乙女(やおとめむら)村」。

鬼神眠る、「坂脩村(さかながむら)」。

日本三大(にほんさんだい)妖怪村(ようかいそん)。通称、三大村(さんだいそん)。

その三つの村は、三大妖怪の末裔(まつえい)だけで形成されている。だがどこかで人型になってしまったらしい。

今回の主人公__六花(りっか)は、椰乙女村に住む妖狐(ようこ)。艶(つや)やかな茶髪は所々跳ねており、襟足までの長さは首の真ん中ほど。一族でも大きめの耳がいかにもというようにピンと背筋を伸ばして生えている。妖狐(ようこ)にしては少し大きめの茶色い目と、狐のような逆三角形の鼻、緩やかに何度かカーブする口。

今日は六花の誕生日の前日だ。

六花(りっか)「村長、六花(りっか)です」

⁇「入ってどうぞ〜」

のれんの向こうから声がする。

六花(りっか)「はぁ…相変わらずですね、村長は」

六花(りっか)のそう言う声がして本から顔をあげたのは、人間でいうところの18歳ぐらいだろうか。すでに9本の尾がある、若い妖狐(ようこ)だった。周りには本という本がありとあらゆるところに置いてあり、村長の周りには読み切ったであろう本や読む予定であろう本が高く積まれていた。

梓「梓でいいって。久しぶり〜!元気にしてた?六花」

六花(りっか)「そういうわけにもいかないんですって。はしゃぎまくってたあの頃とは違うんだ…ですから」

梓「そっちも相変わらずだねぇ…六花(りっか)も12歳でしょ?明日で。尻尾増える時まじ超痛いんだよ〜?」

いかにも冗談混じりというように、にやっとしながら言う村長__梓(あずさ)。

九尾の狐の一族の妖狐は、十二歳が境(さかい)と言われている。

十二歳になった瞬間に尻尾が二本に増え、妖力が爆増する。

そこからは妖力が増えると共に、尻尾も増えていく。

九尾の狐の一族は、今ではもう半数しか九尾にはなれない。

残りの半数は五本〜八本であることが多い。

玉藻前(たまのもまえ)の血が薄れてきているからである。

梓(あずさ)「"歌"、何にするか決めてる?」

六花(りっか)「大然なら煌星、樹華なら花影、ですかね」

梓(あずさ)「いいんじゃない?六花(りっか)っぽくて。私は蒼天〜」

六花(りっか)「知ってますよ」

軽く笑いながら返す六花。

この世界にも、選ばれし百首の歌__そう、誰もが知る「百人一首」が存在している。

「百人一首」は、長い年月を経て、妖力が宿り、いつしか「呪文」となった。

五色各二十首に分けられ、どれか一人一種まで使うことができる。

いわば風属性、青色の《蒼天(そうてん)》。

いわば花属性、桃色の《花影(かえい)》。

いわば光属性、黄色の《煌星(きらぼし)》。

いわば草属性、緑の《若松(わかまつ)》。

いわば炎属性、橙の《黄昏(たそがれ)》。

この五種類も二種類に分けられ、花影(かえい)・若松(わかまつ)の《樹華(じゅか)》と

蒼天(そうてん)・煌星(きらぼし)・黄昏(たそがれ)の《大然(たいぜん)》。

選ぶには《妖火(ようび)》と言われる誰もが出すことのできる灯りを使う。

初めて妖火(ようび)を出した時、黒か白になる。

黒なら大然(たいぜん)、白なら樹華(じゅか)からどれかを選ぶことができる。

そしてを出した状態で、選びたい色を唱えると妖火(ようび)がその色に変化する。

梓(あずさ)「じゃ、増えたら一番にあたしに見して?」

六花(りっか)「はいはい、わかりましたよ。…失礼しました」

梓(あずさ)「またね〜」


ーーー


六花(りっか)「あと30秒…」

そう、六花(りっか)はあと30…20秒で十二歳になる。

尻尾が一本増えるのだ。

そして一人暮らしの六花(りっか)は今、自宅で時計と睨めっこしていた。

3、2、1__

六花(りっか)「ッ!」

全身の血液が脈打ち、体温がぐっと上がり、そこからお尻に熱さが集中した。

そして熱さが段々冷めていき、青白い淡い光が2本目の尻尾の形を作った。

光がぼんやりしたものからどんどんはっきりしていく。

30秒ほどすると、青白く淡い光の影はなく、完全に尻尾と化していた。

六花(りっか)「…痛くないじゃん、梓(あずさ)め……」

漏れた独り言。

悪口のつもりだったのだろうが、口角は上がっていた。

六花(りっか)「…?あれ?」

よっぽど妖力の強い九尾の狐でない限り、通常の妖狐(ようこ)の尾は身長の三分の二ほどだ。だが、なぜか2本目の尻尾は元々あったものより1.5倍ほど長く、毛量も2倍近くあり、少しくすんだ色をしていた。

六花(りっか)「なんか太いし長い…?色もちょっと暗いし…で、でも先に妖火(ようび)…!」

ぼわっ

念じると、六花(りっか)の前に炎が現れた。

六花(りっか)「黒…大然(たいぜん)だ…!」

烏のような鮮やかな黒色だった。

六花(りっか)「煌星(きらぼし)」

妖火(ようび)が眩い光を放ち、美しい黄色に変わった。

普段あまり感情を表に出さない六花(りっか)だが、この時ばかりは顔が嬉しさに溢れていた。

六花(りっか)「尻尾はまぁ…とりあえず、あず…村長に聞くか」

さっきまであんなに顔を輝かせていたのに、「村長」という言葉が出てきた瞬間、真顔に戻った。

自分の家の戸の鍵を閉め、徒歩5分ほどの梓(あずさ)の家に向かう。

やっぱり自分で見ても尻尾がアンバランスで、一目につかないかと少し心配になる。

六花(りっか)「(こんな明るかったら見られそう…でもみんな寝てるよな)」

妖怪の昼夜は人間と逆だ。

夜に活動し、昼に寝る。

そんなことを考えながら歩いていると、梓(あずさ)の小屋が見えてきた。

戸をノックして、召使いに挨拶をして、いつもののれんの前までやってきた。

六花(りっか)「村長、起きていらっしゃいますか。六花(りっか)です」

梓(あずさ)「!!六花(りっか)!入って入って!」

六花(りっか)「では、失礼します」

昨日と同じようにのれんをくぐる。

梓(あずさ)「おー!2本になって…る…」

本の海から抜け出していた梓(あずさ)は、六花(りっか)の元に駆け寄る。

六花(りっか)「?村長、どうかしました?」

梓(あずさ)「六花(りっか)、増えたのってこっちだよね…」

そう言いながら触っているのは、大きくくすんでいる方の尻尾。

六花(りっか)「ちょっ…勝手に触らないでくださいよ」

梓(あずさ)「……これ、玉藻前(たまのもまえ)の尻尾…?」

六花(りっか)「えっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。