第4話 初めてのボス戦
ダンジョンに入ってから二時間。
四人は第一階層を進んでいた。
草原がどこまでも広がる景色。
現実の東京とはまるで違う世界。
「何体目だ?」
旬が剣を肩に担ぐ。
「七体目」
舞が答えた。
最初こそ緊張していたが、徐々に慣れてきている。
もちろん油断はない。
だが、自分たちでも戦えているという実感があった。
◇◇◇
ゴブリンが現れる。
旬が前へ出た。
「俺がやる」
踏み込む。
剣が走る。
一撃。
ゴブリンが崩れ落ちた。
「よし」
思わず笑みが漏れる。
中学まで剣道を続けてきた。
竹刀と実戦は違う。
それでも積み重ねた経験は確かに活きていた。
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【神速】
熟練度上昇
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視界の端に文字が浮かぶ。
まだ何が起きているのか完全には分からない。
だが。
身体が少しずつ馴染んでいく感覚があった。
◇◇◇
舞も順調だった。
魔力弾。
命中。
ゴブリンが倒れる。
「凄いな……」
百華が感心する。
「自分でもびっくりしてる」
舞が苦笑した。
頭の中に自然と計算が浮かぶ。
距離。
角度。
威力。
考える前に答えが出る。
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【魔力演算】
熟練度上昇
⸻
◇◇◇
「はっ!」
百華の拳がゴブリンの腹にめり込む。
吹き飛ぶ。
「だからなんで殴るんだよ!」
旬がツッコむ。
「私も分かんない!」
百華も叫ぶ。
「歌姫だよ!?」
「歌えよ!」
「今は殴る方が強いの!」
本人が一番困惑していた。
◇◇◇
そして。
奏だった。
ゴブリンが飛びかかる。
拳。
終了。
ゴブリンが吹き飛ぶ。
別のゴブリン。
蹴り。
終了。
「なあ」
旬が聞く。
「なんだ」
「武器買わなかったの?」
「高かった」
「いや買えよ」
「殴ればいいだろ」
「よくねぇよ」
旬は頭を抱えた。
◇◇◇
それからさらに進み。
四人は大きな石扉の前へ辿り着いた。
第一階層最奥部。
ボス部屋。
「来たな」
旬が息を吐く。
緊張していた。
今までのゴブリンとは違う。
本物のボスだ。
◇◇◇
扉が開く。
広い空間。
中央に立つ巨大な魔物。
ホブゴブリン。
身長三メートル。
巨大な戦斧。
「グォォォォォ!!」
咆哮が響く。
空気が震えた。
百華が息を飲む。
舞も杖を握る。
◇◇◇
その瞬間。
ホブゴブリンが突進した。
「来る!」
旬が叫ぶ。
だが。
奏が前へ出た。
「奏!?」
舞が驚く。
ホブゴブリンが戦斧を振り上げる。
普通なら即死。
しかし。
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【威圧】
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スキルが発動した。
ホブゴブリンの動きが一瞬だけ止まる。
奏自身も気付いていない。
ただ身体が自然に動いた。
◇◇◇
踏み込み。
腰の回転。
腕。
全身の力が一点に集まる。
⸻
ドゴォォン!!
⸻
衝撃音。
ホブゴブリンが吹き飛んだ。
壁へ激突する。
倒れる。
動かない。
だが。
一撃ではなかった。
まだ息がある。
「生きてる!」
旬が飛び出す。
追撃。
剣が走る。
舞の魔力弾。
百華の蹴り。
三人の攻撃が重なる。
そして。
ホブゴブリンは完全に消滅した。
◇◇◇
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【レベルアップ】
Lv1 → Lv2
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四人の視界に同時に表示される。
「上がった!」
百華が声を上げた。
初めてのレベルアップ。
初めてのボス討伐。
初めての成功体験。
自然と笑みが浮かぶ。
◇◇◇
「でもさ」
旬が言う。
「最後のあれ何だった?」
「何が」
奏が首を傾げる。
「お前のパンチだよ」
「普通に殴っただけだ」
「絶対違う」
舞も頷く。
百華も頷く。
だが。
奏本人だけは本気で分かっていなかった。
◇◇◇
こうして。
一ノ瀬奏。
神楽旬。
神門舞。
桜木百華。
四人の探索者としての最初の一日が終わった。
まだレベルは2。
世界から見れば新人中の新人。
だが、4人の物語は着実に進んでいる。




