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隣に最強がいる世界で ―四葉と黄龍迷宮―  作者: toto


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第3話 覚醒

 エレベーターの扉が開いた。


 その先に広がっていたのは、東京の地下とは思えない光景だった。


 青空。


 草原。


 どこまでも続く大地。


「……は?」


 旬が思わず声を漏らす。


「すご……」


 百華も目を見開く。


 ダンジョン。


 テレビで何度も見てきた。


 だが、実際に目の当たりにすると全く違う。


 まるで異世界だった。


「空、あるんだね」


 舞が呟く。


「本物じゃないらしいけどな」


 奏が答える。


「知ってるの?」


「ニュースで見た」


「珍しい」


「なんだそれ」


 舞が少し笑う。


 その時だった。


 目の前に光の粒子が集まる。


 四人同時だった。


「なっ……!?」


 旬が驚く。


 次の瞬間。


 視界に半透明の画面が現れた。



【探索者資格を確認】


【ステータスを生成します】



「これが……」


「ステータス……」


 百華が震える声で呟く。


 そして。


 文字が次々と表示される。



【神楽 旬】


職業:ユニーク【神速の剣士】


レベル:1



【神門 舞】


職業:ユニーク【深淵の魔導姫】


レベル:1



【桜木 百華】


職業:ユニーク【戦奏の歌姫】


レベル:1



「ユニーク職!?」


 旬が叫んだ。


 職員から説明は受けていた。


 ユニーク職。


 数万人に一人。


 国の戦力になりうる希少職。


 その文字が自分の前に表示されている。


「私も……」


「私もだ……」


 舞と百華も驚いていた。


 そして。


 奏の前にも表示される。



【一ノ瀬 奏】


職業:ユニーク【極道の覇王】


レベル:1



 数秒。


 沈黙。


「……極道?」


 旬が言った。


「極道だな」


 奏が答える。


「いやなんで?」


「俺に聞くな」


「なんだその職業!」


「知らん」


 舞が吹き出した。


「ぷっ……」


「笑うな」


「だって極道って……」


 百華まで肩を震わせている。


「似合ってるかも」


「百華まで!?」


 旬が爆笑した。


 奏は無表情だった。


 だが内心。


(なんだこの職業……)


 本人も困惑していた。


◇◇◇


 その時。


 草原の奥で何かが動いた。


 四人は反射的に振り向く。


 小柄な影。


 緑色の皮膚。


 醜い顔。


 棍棒を持っている。


「ゴブリン……」


 旬が呟く。


 テレビで何度も見た。


 最弱モンスター。


 初心者ダンジョンの定番。


 しかし。


 本物を見るのは初めてだった。


「ギィィ!!」


 ゴブリンが突進してくる。


「来るぞ!」


 旬が叫ぶ。


 だが。


 次の瞬間。


 奏が一歩前へ出た。


「え?」


 旬が目を見開く。


 武器もない。


 素手だ。


「おい奏!」


 しかし。


 ゴブリンが棍棒を振り上げた瞬間。


 奏の身体が動いた。


 踏み込み。


 拳。


 たったそれだけ。


 ドゴッ!!


 鈍い音が響いた。


 ゴブリンの身体が吹き飛ぶ。


 十メートル以上。


 地面を転がり。


 動かなくなった。


 沈黙。


「……」


「……」


「……」


 旬たちが固まる。


「死んだ?」


 百華が聞く。


「死んだな」


 奏が答える。


「いやいやいやいや!」


 旬が叫んだ。


「なんで素手!?」


「殴った」


「見れば分かる!」


 舞も驚いていた。


「今の何?」


「昔習った」


「何を?」


「喧嘩」


「絶対違うでしょ」


 奏は肩をすくめた。


◇◇◇


 しかし。


 異変はそれだけではなかった。


 ゴブリンが消滅した瞬間。


 奏のステータスが反応する。



経験値を獲得


レベルアップ


Lv1→Lv2



「おっ」


 旬の画面も光る。


 舞も。


 百華も。



Lv1→Lv2



「全員上がった」


 百華が驚く。


「パーティー経験値かな」


 舞が分析する。


 すると。


 奏は違和感を覚えた。


 視界の端。


 職業欄の下。


 新たな文字が現れている。



固有スキル獲得


【威圧】



(スキル?)


 初めて見る文字だった。


 旬たちも同様だった。



神速


魔力演算


戦奏



それぞれ新たなスキルを獲得している。


 探索者としての力が目覚め始めていた。


◇◇◇


 一方その頃。


 探索者協会本部。


 地下深く。


 関係者以外立入禁止区域。


 一人の男が書類を見ていた。


 白髪混じりの老人。


 日本探索者協会理事。


 その机の上には一枚の資料。



桜木 百華


18歳



 男は静かに呟く。


「桜木……か」


 忘れるはずがない。


 三年前。


 黄龍迷宮。


 政府が隠している極秘案件。


 その中で消息を絶った女性。


 名前は。


 桜木 美咲。


 百華の母親だった。


「娘が来たか……」


 男は目を閉じる。


 そして。


 金庫から一枚の写真を取り出した。


 そこには十人の探索者が写っている。


 中央には。


 若き日の鳴神剣心。


 そして。


 桜木美咲の姿もあった。


「運命は動き始めたな」


 男の声は誰にも聞こえなかった。

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