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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第九「集中できない事件」
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対立の理由

課長への報告を終えたその瞬間、別の人物から電話がかかってきた。

「はい、赤石です」

「よう、調子はどうだ?」

相手は守内さんだった。

「……用件は何ですか」

「いや、片腕で捜査しにくいんじゃないかと思って、電話したんだよ」

「問題ありません」

「相変わらずつっけんどんだな、心配してやってんじゃん……そんなお前にお知らせ、司法解剖の結果、僅かに胃の内容物が残ってて、牛乳と卵だってさ」

「牛乳と、卵……」

どこかで聞いたような組み合わせだ。

「加えて言うと、阪爪さん、重度の卵アレルギーだそうだ。死因は、アナフィラキシーショックによる窒息」

「卵アレルギーに、アナフィラキシーショック……」

「おかしいよな? 牛乳ならまだしも、卵なんて、アレルギーなら、自分から口にしないだろ?」

「そうですね……牛乳と混ぜられたものを、そうと知らずに飲んだのかもしれませんね」

そうなると、事故以外の可能性も出てきた。

「もう少し、掘り下げてみます、ありがとうございました」

「おう、頑張れよ」

通話を終え、俺も車に戻った。


車内の空気は最悪だった。

お互いに、何も話してはいないが、敵対しているのが丸わかりだった。

後回しにするのは、良くないだろうな……。

「さて、出発前に、君達に確認したいことがある」

「……何でしょう?」

照井が首を傾げた。

「君達が敵対している理由だ。明らかにしないことには、事件に集中できないだろう」

「僕は、別に……」

仲西が小さく言った。

「本当か? それなら、今から二人だけで施設に戻って確認してほしいことがあるんだが、できそうか?」

「……」

二人共、答えなかった。

「仲良くしてくれとは言わない、だが協力はしてくれ。何度も言うが、人が亡くなってるんだ。事件を捜査する側の刑事がこれじゃ、市民も不安がってしまう。せめて、敵対している理由を教えてくれないか?」

なるべく優しく言った。

「……先輩が」

「うん?」

「先輩が怪我してるから、補助しようと思ったんですよ。そしたら、照井さんも補助するって話になって」

「そうですよ、仲西刑事も怪我してるんですから、私がやろうって話をしたんです。そうしたら、私は代理だから必要ないって言われて」

「……何だそりゃ」

思わず口に出してしまった。

「何だって、私達は赤石刑事のために」

「それはありがたいが、俺もいい歳した大人だぞ……自分の面倒くらい、自分で見れる。それに、車の運転くらいはしてほしいが、他に何か補助はできるのか? こういうのも何だが、君達は捜査においてはあまり役に立っていないように思える。聞き込みも殆ど俺がやっていたし、仲西の情報も、失礼だが誰でも……それこそ、怪我をしている俺でもできることだ。それに、推理は? 何か知恵を出したか?」

可哀想かもしれないが、はっきりと言った。

「それは、その……」

「……」

二人共俯いて黙ってしまい、車内がお通夜のような空気になってしまった。

「少し頭を冷やしなさい、俺はタクシーで現場に戻る。後でしてほしいことを連絡するから」

車を降り、施設前でタクシーを拾って現場へ戻った。




「あ、刑事さん」

現場へ戻ると、増山さんと鉢合わせした。手にはスーパーの袋をぶら下げている。

「どうも……買い物ですか?」

「夕飯の買い出しに。あれ、他の刑事さんは?」

「別のことを調べに行ってもらってます」

先程、タクシーの中で、仲西と照井にメッセージを送った。二人で協力して調べてくれると良いんだが……。

「大変なんですねえ刑事さんって。怪我しても働かなきゃだし」

「まあ、自分は、無理言って働かせてもらってるんで」

「無理しないでくださいよ、と言っても、事件は待ってくれないでしょうけど」

ちらっと、俺の左肩を見た。

「やっぱり、気になりますか」

「まあ、僕も身体鍛えてるんで……怪我だから仕方ないですけど、左右のバランス崩れちゃうんじゃないかって思っちゃって。特に三角筋の辺りがねえ」

「……」

まずい、また昨日のパズルを思い出してしまった。俺もなかなか集中できていない……。

「ああ、すみません、足止めしちゃいましたね」

「いえ……ついでにお訊きしたいのですが、ここ数日、アパート周辺で、何か変わったことなどはありませんでしたか? 事件に関係なさそうなことでも構いませんので」

「うーん……あ、お隣さん、彼氏がいるみたいで、ちょくちょく出入りしてましたよ」

「彼氏、ですか?」

「はい、同じ年くらいかな、僕モテないから、羨ましくって」

彼氏……事件とは関係ないかもしれないが、頭の片隅に入れておこう。

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