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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第九「集中できない事件」
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パズル

話を終えた姉貴は、レトルトだけでは食事が不安だという俺に、常備菜をいくつか作り、手早く洗濯や掃除を済ませ、三日に一度はここに来ると勝手に決め、「りまちゃん、省ちゃんが何かしたら、いつでも連絡してちょうだい!」と、半ば強引に連絡先を交換して去っていった。


「りま、すまなかったな、騒がしい姉で」

去り際に淹れていったコーヒーを飲みながら一息つく頃には、もう夕方になっていた。

「大丈夫だよ、でも、さすが姉弟だね、よく似てる」

「そうか? あまり言われたことはなかったが……どの辺りが似ていた?」

「うーん、価値観かな」

「価値観……」

ピンと来なかったが、りまが言うならそうなのだろう。

「それと……君のことを不安にさせてしまったことも、悪かった」

「気にしないで、省吾にだって、わからないことくらいあるよ。むしろ私の方こそ、お姉さんの手を煩わせるようなことして、ごめんなさい。でも、今日は会えてよかった」

「それならいいんだ。俺も随分情けないことを言ってしまったしな……もう少ししっかりしないといけないな」

先程、りまは姉貴の言葉に「言う通り」と言っていた。そんなつもりは無いのかもしれないが、俺が情けないことを言ったという姉貴の意見を肯定したと捉えた。俺も自分の意識を変える必要があるな……。

「……そうだ、携帯貸してくれる? 好美さんに訊かれたこと、忘れないうちに答えておきたい」

「わかった」

携帯を差し出すと、丁寧に両手で操作して、奥さんにメッセージを送った。


見てはいけないと感じ、何気なく姉貴が持ってきた土産を見ると、何か紛れているのを見つけた。

それは一冊のパズル雑誌だった。クロスワードパズルやら、漢字クイズやら、色々載っている。多分、暇つぶしのつもりだったのかもしれない。

俺はこの手のパズルが正直苦手だ。これなら手芸の方が、まだ暇つぶしになる……そうだ。

「りま、これ、やってみるか?」

メッセージを送信し終えたりまに声をかけた。

「え? ……パズル雑誌?」

「ああ、姉貴が持ってきたんだが、俺は苦手で……君ならできるんじゃないか?」

「面白そう、やってみたい」

「じゃあ、どうぞ」

クロスワードのページを開いてテーブルに置き、鉛筆を添えた。

「よいしょ、っと……」

まるで書道家が巨大な筆を持つように、鉛筆を抱えた。

「小さくした方がやりやすいんじゃないか?」

「実家にいた時はこうしてたの。この方がやりやすいんだ」

そして、ページに文字を書いていく。とても綺麗な字をしていた。

「……な、何?」

俺の視線に気付いたのか、顔を上げた。

「器用だなと思って」

「そ、そうかな」

あまり見ていると、気になって書きにくいかもしれない。俺も問題に視線を落とした。


③縦のカギ三文字『次の部首名』

③横のカギ五文字『美しく飾り立てた言葉。表面上の、中身が伴わないお世辞のこと』

縦の三文字目と横の一文字目は同じ文字が入る。

縦のカギは何となくわかるが、そうなると横が合わない。

そういう時は、他のカギから埋めていくといいと聞いたことがある。

④縦のカギ四文字『鶴は英語で?』

④横のカギ六文字『上半身で一番大きい、肩を覆う筋肉』

④の縦の一文字目は③の横の五文字目と同じ文字が入り、④の縦の四文字目は④の横の六文字目と同じ文字が入る。

横はわかるが縦をど忘れした……。


りまを見ると、他の部分を解いている。邪魔するのも悪いから、後で確認するか……。

「そういえば、こういう雑誌って、懸賞がついてたりするよね、送ってみようよ」

「そうだな、やってみようか」

基本当たったことはないが……まあ、送る楽しさもある。

「さて、そろそろ夕飯の支度するか――」




翌朝、公共交通機関で出勤するため、普段より早めに家を出た。

「おはようございます」

真っ直ぐ署に向かい、課長に挨拶した。

「おはよう、今日から復帰ね、体調はどう?」

「左腕以外は絶好調です」

「ならよかった。早速だけど事件よ、昨日復帰した仲西君、照井ちゃんと一悶着あってね」

「一悶着ですか」

そういえば、守内さんも、気になる言い方をしていた。

「それがね――」

「おはようございます」

後ろから声が聞こえた。仲西が来たようだ。見ると、頭に包帯を巻いていた。

「先輩!」

駆け寄ってきた。こちらも絶好調らしい。

「おはよう、見舞いに行けなくてすまなかったな……よく戻ってきてくれた」

「そんな、先輩こそ、大変だったそうで」

「俺はまあ、これだけだから」

左肩を指した。

「色々聞きましたよ、守内さんと仲直りしたとか、減給されたとか、それと……照井さんのことも」

照井と言った途端、表情が暗くなった。

「それも気になるが、その前にちょっといいか?」

「はい」

仲西にも、りまを紹介しよう。手のひらに乗せて、差し出した。

「二宮りまさん、君がずっと気にしていた方だ」

「こ、この方が……!」

狼狽える仲西。想像と違う反応だった。

「そんなに驚くか? 君は知ってたんじゃないのか?」

「あ、いや、知ってたっていうか、小人さんだとは思わなくて」

「そうだったのか?」

「こっそり話をしていたのは、知ってました。でも、電話で話をしているのかと……あ、もしかして、現場にも一緒に?」

「そうだな、君のこともしっかり見ていたぞ」

「……」

口を抑えて呆然としている。

「あ、えっと、改めて、はじめましてですかね。二宮りまと申します、四センチです」

りまが挨拶すると、仲西は震える声で返した。

「会うのは、初めてですね……刑事の仲西です。先輩が、いつもお世話になってます」

お世話にはなっているが、どうして君がそれを言うんだ……と言いたかったが、拗れても嫌なので我慢した。

「と、いうわけだ。で、君は照井とはどうなんだ、昨日会ったんだろう?」

「そうだ、その件ですが、あの人と組むのは止めておいた方がいいです」

その言葉から察するに、相性が悪かったのかもしれない。

「電話で話をした時は、普通だったように思えたが?」

「電話じゃ普通でしたよ、僕もそう思いました。でも実際に会ったら、あれは僕とも先輩とも合いませんよ」

豪語しているが、これは実際に見ないことにはわからないな。

「というわけで、赤石君、先輩として、後はよろしくね」

「……はい」

課長に丸投げされた気もするが、仕方ない、照井の出勤を待とう……。

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