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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
小人編
69/76

危機

「そう……わかったわ、今後何か連絡があったら、共有してちょうだい」

課長さんへの報告を終えたところで、省吾を呼んだ。

「失礼します」

気付いてくれて、場所を変えてくれた。

「どうした?」

ポケットから身を乗り出した。

「気になることがあって……照井刑事は、正希さんと知り合いなんですよね? 兄弟仲ってどうだったのかなと思って」

「それが、私もよく知らなくて……父が亡くなった時に初めて会って、流れで連絡先を交換したので……あ、望美さんなら、知ってるかも。でも、それがどうかしたんですか?」

「正希さん、電話ではお兄さんのためにこんなことをしてるわけじゃない、って言ってたんです。ってことは、警察そのものに恨みがあるのかな、と思って。兄弟仲が悪いなら、お兄さんと警察に恨みがあっても不思議じゃないです」

「なるほど……望美さんに訊いてみます」


「ちょっと待った」


聞こえた声に身体が固まった。

省吾の背後に、課長さんがいた。……どうしよう、会話を聞かれた。

「何度も言うけど、あなた達は捜査に参加できないはずよ。……ところで、あなた達、今誰と話をしていたの?」

「何でもありません」

省吾が言いながら、私をポケットに押し込み、素早く背広を正して課長さんに向き直った。

「何でもないって、赤石君、あなた――」

「課長、申し訳ありませんが、正希さんの連絡先を知る照井や、七年前の事件を知っている俺がいる以上、捜査に参加できないというのは不可能な気がします。事情は理解しています、今日は署から出ませんので、俺達にも参加させてください」

ポケットに押し込められたため、外の様子が音でしかわからない。

「……わかったわ」

「ありがとうございます」

大きく揺れた。頭を下げたんだ。

「でも、そういうことなら、今はデスクに戻ってちょうだい」

「はい」

戻る道中、ポケットの中で考えた。デスクに戻るってことは、課長さん、近くにいるってことだよね……大丈夫かな……。

「課長、あの……望美さんへの連絡ですが」

照井刑事が恐る恐る訊いた。

「それ、照井ちゃんからお願い。後で私に知らせて」

「はい」


戻った後、照井刑事が望美さんに金指兄弟の仲について訊いた。

……結果は思った通り、二人の兄弟仲はあまりいいものではなかった。公務員になり、警察官になり、更に刑事なった兄を、弟の正希さんは妬ましく思っていたらしい。

ということは、警察官そのものに恨みを持っている。確かに、おかしいと思った。いくら守内刑事が、正希さんに恨まれているからって、そこは警察官だ、拐うには相応のリスクがある。それならいっそ、家族……この場合は、守内刑事の奥さんを狙えばいいと思った。家族を狙った方が、愛妻家である守内刑事にはダメージが大きいだろうし……。

でも、そうしなかった。狙いは警察であり、奥さんは関係ない、と思ったのかもしれない。それは流石に本人にしかわからないところだけど……。

ということは、やっぱり、省吾や照井刑事が、次に狙われる可能性がある? 今、捜査に出てる別の刑事も、危ないかも?

それを伝えたいけど……課長さんが近くにいるし、絶対マークされてる。どうしよう……。

「そういえば、さっき連絡が来たけど、樽見さん家族の所在が確認できたわ。母親は仕事、息子二人は家にいるそうよ」

「家に、ですか? 学校は?」

「それが、次男の陽葵君、ここ最近不登校らしいわ」

「不登校……」

ここ最近の不登校? 事件の影響かな……それか、正希さんが何かした?

いや、何かするなら、不登校じゃ済まない気がする。単なる偶然?

「二人で家にいるなら、安全ですね」

省吾の声が聞こえた。そうじゃないでしょ、違和感は調べないと!

胸を叩くと、数秒置いて立ち上がった。

「……課長、その不登校の理由、気になります」

「確かにそうね、調べてもらうわ」

伝わった、よかった……。

「それと、赤石君、後で話があります」

課長さんの低い声が聞こえた。怪しまれてる……。

「あの、不登校の理由、私かもしれないです」

照井刑事が言った。

「実は私、昨日赤石さんと別行動した時、望美さんの家に行った後、樽見さんの家に行ったんです」

「え、そんな報告聞いてないわよ」

「すみません、話してなくて……それで、その時に晃成君が犯人ではなく、陽葵君が犯人だと、母親に話したんです」

「……それで、母親はなんて?」

「わかりました、と言ってはいましたが、何か思い詰めた様子でした」

「そう……でもね、陽葵君の不登校はそれより前からあったらしいから、照井ちゃんの行動は関係ない気がするわ」

「そ、そうですか……」

「それより気になるのは、どうしてそんなことを言ったのか、よ。陽葵君が犯人だったとして、それを今更話して、どうするつもりだったの?」

「本人に罪の意識があるか、確かめたかったんです」

刑事ではあるけど、やっぱり、被害者遺族としての気持ちがあるのかな……。

「それを聞いてどうする気だったの、照井ちゃん、完全に私情で動いてるじゃない」

「……申し訳ありませんでした」

声だけでも、肩を落としているのがわかる。何だかいたたまれない。

にしても、気になるのは、母親の反応。思い詰めた様子って言ってた。

気になるけど、省吾は動くことができない……。

「ところで、赤石君、それは?」

「照井の父親の倉光刑事が、俺宛に残してくれたノートです」

さっきのノート、見てるんだ。

「へえ、いいもの貰ったのね」

上から声が聞こえてくる。一緒に見てるのかな……。

「……課長、照井が樽見さんに陽葵君の話をした時、思い詰めた様子だったというのが気になって……何か、行動を起こすかもしれないです」

省吾も同じところが気になったみたい。

「行動って、例えば?」

「自分の息子の無実を証明するために、工場に行く、陽葵君を問い詰める……色々考えられますね。もしかしたら、ここに来るかも」

その時、照井刑事のデスクの電話が鳴った。

「はい、はい……わ、わかりました。課長、樽見さんが、署に来たそうです……」

戸惑いながら言った。凄い、当たってる。

「……わかった、私と赤石君で対応する」

照井刑事をその場に残し、樽見さんに会いに行った。

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