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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第八「拐われた刑事」
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報告

危険があると思われたが、犯人は現れなかった。

病院へ向かう救急車を見送り、入れ替わりに鑑識が到着した。

照井に連絡を入れようとしたが、電話に出なかったため、留守電にメッセージを残し、奥さんにも連絡を入れ、隙を見て助手席のりまを迎えに行き、状況を説明した。

「じゃあ、無事なんだね、よかった……」

自分のことのように、安心してくれた。


署に戻る前に、工場長に、不審な人物がいなかったか話を聞くことにした。

「うちでこんな事が起きるなんて……ほら、だいぶ前にも、別の工場で人が閉じ込められたってニュースやってたじゃないですか、あれからうちでも防犯カメラとか、気をつけるようにしてたんですよ」

「では、その映像を確認させてください」

防犯カメラの映像には、その工場で使われている白衣に身を包んだ人物が、守内刑事を冷凍庫へ運んでいる姿が映っていた。

「時間は……十五時か」

現在の時刻から三十分近く経っている。

「この後ろ姿、うちの社員じゃないですよ」

白衣に加え、マスクや帽子で顔はわからないが、それでも工場長は社員じゃないと言い切った。

「そもそもうちの工場、髪の毛はきちんとしまうように徹底してるんです。この人、襟足が出てます」

確かに、映像の人物は襟足が出ていた。

「この工場で使われている白衣、一般の方でも買えるものですか?」

「確か、そうだったかな……」

ということは、犯人は、ここの白衣を購入していた可能性がある。もしかしたら、従業員が手薄な時間も、調べていたかもしれない。

計画的な犯行だった、ということになる……。

まさか、本当に正希さんが?


その時、携帯が鳴った。

「赤石です」

「照井です」

「君か、今どこにいるんだ? 望美さんには会えたのか?」

「はい、会えましたが、正希さんには会えませんでした……ですが、正希さんの部屋から、守内さんの家の住所のメモや、業務用冷凍庫のカタログが出てきました」

「……わかった。合流しよう、署に戻れそうか?」

「はい、すぐ行きます」

通話を終え、俺も車に戻った。

確定した。守内刑事を拐い、冷凍庫に閉じ込めたのは、金指刑事の弟、金指正希だ。

あの人は、よりによって自分の兄が殺害された時と同じ方法で、守内刑事を殺害しようとした。

とても、許されることではない――。


「省吾!」


りまに名前を呼ばれ、ハッとした。

「大丈夫? 落ち着いて……ね?」

そう言われ、冷静になった。

「……すまない、頭に血が上っていた」

「わかるよ、私も、許せないから……だからこそ、落ち着いて」

「ああ、そうだな……」

刑事として、しっかりしないといけない。数回深呼吸し、エンジンをかけた――。




「課長、ご報告です」

安全運転で署に戻り、守内刑事の無事と、犯人の目星がついたことを報告した。

「そう、よかった……赤石君もありがとう」

話し終えたタイミングで、照井が戻ってきた。

「赤石さん、車、ありがとうございました。それで、ご報告なのですが」


照井は俺と別れた後、すぐに望美さんと正希さんの元へ向かった。二人は同居こそしていないが、近くに住んでいて、お互いの所在を把握できるようになっていた。

だが、正希さんは、昨日から自宅に帰っていないようで、望美さんはその行き先まではわからなかった。

状況を説明し、合鍵を使って中に入り、部屋を確認し――守内刑事の自宅の住所が書かれたメモや、守内刑事が見つかった冷凍庫がある、あの工場のタイムスケジュール、冷凍庫のカタログ、工場で使われているものと同じ白衣を買った領収書などが出てきた。


「赤石さんの連絡に、気付いてはいたのですが、移動中でしたので……」

「望美さんのアリバイは?」

「今日は仕事は休みで、ずっと一人で家にいたそうです。証人はいないと言っていました」

ということは、望美さんも、容疑者の可能性があるということだ。

「全ては、守内君の意識が戻ったら、ね。今は二人ともお疲れ様。それと――」

俺達二人を見て、課長は言った。


「今後は、金指正希を重要参考人として捜索するわ。そして、二人は捜査から外れてもらいます」


「えっ」

「……」

狼狽える照井に対し、俺は何となくだが、そんな気はしていた。

「照井ちゃんの理由は、その金指正希さんと、七年前の刑事二人の殺人事件の遺族という共通点があるからよ。赤石君は……言わなくてもわかるわね」

「はい、俺はこの捜査、恐らく最後まで冷静ではいられません」

冷静ではいられない。課長は、あえて俺にそれを言わせた。

「わかれば十分。話は以上よ」




「まさか、捜査から外されるなんて」

退勤時間になり、駐車場まで来て、照井が不満そうに言った。

「課長が言ってただろう、正希さんと君には共通点があるんだ」

「そうですけど……」

「まあ、今日は疲れただろうから、家でゆっくり休むといい。俺は、明日、署に行く前に守内さんの見舞いに行こうかと思うんだが……りま、大丈夫か?」

胸ポケットを覗くが、難しい顔をして何かを考えていた。

「え? あ……うん」

明らかに生返事だった。

「何か、気になることでもあるのか?」

訊くと、少し考えて答えた。

「……私、正直納得できてなくて」

「捜査を外された件か? 仕方ないだろう、上の判断だ」

「あ、いや、そっちじゃなくて、金指正希さんの行動だよ」

「正希さんの行動?」

首を傾げる照井。俺も勿論、わかっていない。

「正希さんは、守内刑事を拐って、最終的に冷凍庫に閉じ込めた。その理由は、七年前の事件の真実の公表……それを果たすためなら、守内刑事が見つかることは避けたいはずだよね? でも、車を奥さんのわかる範囲に路駐したりしてる。照井刑事は、捜査を撹乱させるためって言ってたけど、どうもそうは思えなくて……最初に倉庫に監禁して、それから冷凍庫に移動させたのも、不可解だなって」

言われてみれば、不可解な行動が多いように思える。

「それもこれも、守内さんが何か知っているような気がする」

「私もそう思う。だから、会いに行こう……これは単なるお見舞い、捜査じゃないよね?」

「そうだな、この場合は、ただのお見舞いだ。それじゃ、照井、また明日」

「え、あ、はい、お疲れ様でした……」

戸惑う照井を置いて、車に乗り込んだ。

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