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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第八「拐われた刑事」
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真犯人

「確か、期限は一日だったよね……ということは、守内刑事の命も、もしかしたら……」

りまが震えた声で言った。

「照井、望美さんのところへ向かってくれ」

「は、はいっ」

工場から車を飛ばし、金指家へ向かう。道中、課長へ連絡を入れた。

「あの人がいるのは、七年前の事件で使われていたものと同じタイプの冷凍庫です。それが現在使われている場所を調べれば、ある程度特定できると思います」

「そうは言っても、あの冷凍庫、使ってる業者が多いらしいのよ。特定は厳しい……あ、ちょっと待って」

電話の向こうで物音がした後、課長が戻ってきた。

「ごめんなさいね、科捜研から連絡。守内くんが最初に監禁されていた場所がわかったわ」

住所を聞きながら地図アプリで調べると、工場からは車で三十分、自宅のマンションからは十キロ以上離れた場所にある廃倉庫がヒットした。

「工場で拐われた時間は七時四十五分、それから三十分もかかる場所に運ばれた……俺のところに最初の動画が届いたのが、八時三十分頃、編集で音声を切っていることを考えると、監禁してすぐに動画を撮影したのかもしれないです」

「じゃあそこからどうにか場所を特定できないか、こっちでも調べてみるわね」

「お願いします」

通話を終えたタイミングで、携帯にメッセージが届いた。守内刑事の奥さんからだった。


「さっき、少しですが、夫の車の位置がわかりました。どうにか追ってみましたが、途中でわからなくなってしまいました」


奥さんなりに、頑張ってくれていたらしい。礼を伝え、住所を送ってもらった。

「この住所……この辺りだ」

金指家へ向かう道中。マンションからはギリギリ五キロだ。この辺りで、車の気配が途切れたらしい。

「奥さん、何者なんですか? ……あっ、あれですかね?」

照井が運転しながら、路駐されていた車を見つけた。

近くに車を止め、確認に向かう。見慣れた青い車体……間違いない。鍵は刺したままになっていた。

「中にあるの、百合の葉っぱじゃないですか?」

助手席の足元に百合の葉が落ちていた。よく見ると、シートに花粉のようなものもついている。

「やっぱり墓参りを……その後に工場に行って、拐われた……じゃあ、この車はどうしてここに? この辺に冷凍庫なんてありませんよ」

「多分、冷凍庫に運ばれて、その後に車だけ、ここに乗り捨てられたんです。犯人はその後、タクシーか何かで移動したのかも」

俺の言葉に、照井が首を傾げた。

「どうしてそんな紛らわしい真似を……もしかして、守内さんの奥さんの、その五キロ圏内なら居場所がわかるというのを逆手に取ったのでしょうか? この辺にいるって、攪乱させたかったのかもしれません」

確かに、奥さんは、守内刑事本人やその所有している物などは、半径五キロ以内ならどこにあっても探すことができる。

「奥さんの力ことを知っているのは、ごく僅かだ……それを知っていて、かつ、七年前の事件の真相を知って得する人物……金指刑事の弟、正希さんしかいない」

「え、守内さん、正希さんと接点あるんですか」

「以前話しているのを聞いた。あの人は、倉光刑事とはあまり接点はなかったが、金指刑事とは、家族で食事に行ったことがあるらしい。奥さんのことも、その時話したと。当時まだ結婚前だったはずだから、可能性があるのは正希さんだけだ」

「……望美さんに連絡して、今、正希さんがどこにいるか確かめます。住んでいる場所が近いんで、所在くらいならわかるはずです」

照井が電話をかけている間に、また携帯が鳴った。

「私よ、さっきの情報から、守内くんがいる冷凍庫が特定できたわ。大至急向かってちょうだい」

俺が名乗る前に課長が言った。続けて住所も伝えられた。

ここから車を飛ばせば五分もかからない場所にある、別の食品工場の冷凍庫らしい。

「照井、行くぞ」

振り返ると、照井はもう通話を終えていた。

「正希さん、家にいなかったそうです。今、連絡を取ってみるって。それと……すみません、赤石刑事、ここからは別行動をとってもいいでしょうか」

急にそんなことを言い出した。

「行かなければならない場所ができたんです、お願いします」

深々と頭を下げた。

……迷っている暇はない。

「わかった、俺の車を使って構わない、俺はこっちで行く」

守内刑事の車に乗り込んだ。七年ぶりの運転だが、身体が覚えていることを願おう。

「ありがとうございます」

礼を言う照井に頷いて返し、車を走らせた。




「省吾、話しかけても大丈夫?」

りまが声をかけた。そこそこスムーズな運転ができていると思う。

「ああ、どうした?」

「その……七年前の事件の、真犯人なんだけど」

「その件なら、俺もさっき、考えていた」

「あ、そうなんだ……ごめん、伝えるの後回しにして」

「構わない、俺が君の立場でも、そうしたと思う」

「ってことは、省吾も、気付いた?」

「そうだな……多分、犯人は――」

りまに自分の考えを伝えた。

「そう、私もそうだと思う。それを、倉光刑事と金指刑事は隠そうとしてたんだよ」

照井が言っていた、加害者に同情……最期まで、優しい人だった。

「でも、それが事実なら、被害者遺族としては納得いかないと思うし、多分、省吾も納得しなかったと思う」

「……」

さすがだ、よくわかっている。

「だから、先に照井刑事に話して、反応を確かめようと思ったの」

「そうか……で、どうだった?」

「『そうですか、わかりました』って、それだけ……あっさりしてたよ」

「照井も、どこかで察していたのかもしれないな」

……さて。

「りま、俺は今からあの人の救出に向かう。もしかしたら、犯人がまだ近くにいる可能性もある。できれば、君を連れて行きたくはないんだが……」

「言うと思った。車の中で待っていればいいんだよね?」

「ああ、頼む」


工場に到着し、りまを助手席のシートに残して工場長の元へ向かった。

「う、うちの冷凍庫に人が閉じ込められてる? まさか、そんな……」

手短に説明し、冷凍庫を開けてもらった。


冷凍庫の奥、棚の影になる場所に、送られた画像通り、椅子に縛られている守内刑事がいた。


「守内さん!」

肩を揺すって声を掛けるが、意識がない。首に触れると、まだ脈と体温を感じられた。

すぐに外へ運び、救急車を呼んだ――。

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