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病院に許可を取り、仲西と電話で話をさせてもらった。
「……お久しぶりです」
電話越しとはいえ、元気そうな声が聞けた。
「意外と早く起きたな、って思いました?」
「いや、目を覚ましてくれて、嬉しいよ。調子はどうだ?」
「精密検査を受けまして、今は結果待ちです。気持ち的には今すぐ復帰したいですけど」
「怪我してるんだ、休んでくれ。……ところで、代理の相方の件だが」
「課長から聞きました、僕の代理、照井さんって方ですよね」
「ああ、今代わる」
照井に携帯を渡した。
「お電話代わりました、照井と申します。直接お会いできず、すみません。……ええ、赤石さんのことは、課長からも聞いてます。はい、守内さんのことも。……いえ、そこは困っていないです、どちらかというと私の方が……え、そうなんですか?」
ちらっと俺を見た。仲西、何を言ったんだ?
「あ、いえ、大丈夫です。じゃあ、お二人は、随分前から……あ、その件は、えっと……」
再度、困ったように俺を見た。いや、違う、俺の胸元――りまを見てる。
「仲西刑事は、私のこと知ってます。会ったことはないですけど」
りまの言葉に、頷いた。
「それに関しては、直接会って話をしましょう。今はお大事にしてください」
通話を終え、俺に携帯を返した。
「赤石刑事、結構周りに支えられていたんですね」
「ああ、俺にはもったいないくらいだ」
仲西は、本当によく俺を支えてくれていた。離れてしまって、初めて、その事に気付いた。
「本当にそうですよ。仲西さん言ってましたよ、守内さんに、以前から捜査に協力してもらってたって」
「……え?」
仲西も、守内刑事に?
俺の反応に、照井はため息をついた。
「やっぱり、気付いてなかったんですね。自分が担当じゃない事件の時も、赤石刑事より先に現場に行って、情報を集めて、それを仲西さんに流していたらしいです。最近は守内さんも忙しくなってきたし、仲西さんも慣れてきたから、無くなってきてはいたそうですけど」
……思い返してみれば、仲西と組むようになって、二人だけで解決してきた事件がいくつかある。でもそれも、途中から減ってきて……結果、警察の検挙率の低下に繋がった。その後から、りまが仲西に電話をかけていた。
もしかして、別れてからも、ずっと? 俺は守内刑事と別れてから、四年近く一人で捜査をしていた。その時に解決できた事件も、いくつかある。まさか、それも?
りまの言葉が頭をよぎった。俺のことを、気にかけている、捜査に協力してくれている、相方がいない……。
「ならどうして、あの人はそれを言わないんだ。いくら俺が元相方だからって、そんなこと……」
守内刑事とは、スタンスの違いで別れた。でも、今ならその気持ちがわかる。でもわからない、どうして、俺に捜査協力なんて真似をしたのか。
「赤石刑事、失礼します」
照井が深く頭を下げ、上げた瞬間、強烈な平手打ちが飛んできた。
「!?」
頭が揺れた。左頬がじんじんと痛む。何が起きたのかわからなかった。
「あなたって人は、本当にわからず屋ですね。いいですか、あなたは七年前、自分の憧れだった恩人を殺されています。でもその犯人は、年齢を理由に逮捕されていません。そういう理不尽にあって、警察としての正義感が歪んでしまった人間を、私は何人も知ってます。私が知ってるくらいなんですから、守内さんはもっと生々しい現実を見てると思います。だからこそ、あなたには道を踏み外してほしくなかったんですよ。だから、捜査の手助けをすることで、影で支えて、道を示していたんです。でも、それを言ったら、あなたは嫌がるでしょ? 止めてくれって言うでしょ? だから言わなかったんですよ」
「守内刑事、昨日電話で言ってたよ、刑事としての赤石省吾を失うのは惜しいって。省吾のこと、必要だって言ってくれたんだよ。喧嘩別れした後だって、ずっと気にかけてくれてたんだよ」
照井とりまの言葉が、じんわりと染みていくのがわかった。
まるで、本当に、反抗期の子供じゃないか……。
「……すまない、二人共、ようやく目が覚めた。だが、そんな大切なことを、ずっと内緒にされていたのは、はっきり言って気分が悪い。あの人を捜そう、一言文句が言いたい」
「それでもいいです、行きましょう」
目指すは、倉光刑事と金指刑事が亡くなった、あの工場。何か、手がかりが見つかるといいんだが……。




