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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第八「拐われた刑事」
60/76

足取り

「さて……こんなことになるとはな……」

科捜研に動画を渡した後、家族に連絡を取って、昨日何をしていたか、今朝はどうしていたかを確認することにした。

「ねえ、守内刑事の家族って誰がいるの? 連絡先、知ってるの?」

課長が席を外したので、りまにも出てきてもらった。

「ああ、あの人には、奥さんがいる。以前組んでた時に連絡先を交換して、そのまま携帯に入れてある。変わってなければ繋がるはすだ」

メッセージアプリを開いた。

「電話じゃだめなの?」

「あの奥さんの場合は、この方がいいんだ」

文面はどうするか……久々だからな……。

とりあえず、「お久しぶりです、赤石です。突然のことで申し訳ありませんが、ご主人が事件に巻き込まれたようです。昨晩何をしていたか、今朝出勤まで何をしていたか、変わったことなどなかったか、教えていただけませんか?」と送った。

返事は、すぐに来た。


「お久しぶりです、元気そうでよかったです。

夫の件ですが、そんな気はしてました。彼からいつもの連絡が無かったので、何かあったのかと。

昨晩は、帰って夕食を済ませた後、テレビを見ていたら電話が鳴って、その対応をしていました」

電話は、りまがしていたものだろう。

「その後、二、三時間程、車で出かけていました。今、場所の住所をお送りします。今朝はいつも通りに出ていきました」


「二、三時間……その最中に、何かあったのかもしれないね」

りまの言葉に頷きつつも、俺は「ちなみに、ご主人の今の居場所、わかりませんか?」と訊いてみたが、「離れすぎているので、厳しいです」と返ってきた。

そのすぐ後、住所を送ってくれた。

「この場所は……」


記された場所は、七年前の、あのスーパーだった。


どうして、そんな場所に? と困惑していると、次いでメッセージが届いた。

「買い物とは思えません。恐らく、七年前の事件に関係があると思われます。私の方でも彼を探してみますので、何かわかりましたら連絡します」

お願いします、と返して、携帯をポケットに突っ込んだ。

「あの場所に行こう。何か手がかりがあるかもしれない――」




照井に車を飛ばしてもらい、スーパーに到着した。

店員に話を聞こうとしたが、このスーパーは午後九時には営業を終えていて、守内刑事が来た頃には、もう店員はいなかった。

近隣の防犯カメラの映像では、午後十一時にスーパーを車で訪れた後、三十分程周囲を徒歩で散策している様子が映っていた。

試しに同じルートを散策してみたが……気になるものは、特になかった。

「時間、あの事件と酷似してますね」

照井が言った。確かに、七年前は午後十時、昨日守内刑事がここに来たのは、午後十一時……ぴったりではないが、似ている。

まず、どうしてそんな時間に来たんだ? スーパーは当然閉まってる時間だ。いや、買い物が目的ならここまで来る必要はない。マンションの近所にもスーパーはあった。

それに、周囲を散策していたが、日中の方が散策はやりやすいと思う。明らかに不自然だ。

守内刑事の、不可解な行動……考えよう、あの人とは、五年間一緒に組んでたんだ。俺にも何か、わかるはずだ。

「りまさんは、どう思いますか?」

照井が声をかけるが、返事がない。

「りま」

胸ポケットを広げた。ハッとして顔を上げた。

「な、何?」

「ですから、どう思いますか?」

「あ、えっと……守内刑事は、私と電話した後、ここに来て何か調べてた。で、その時に何かがあって、その時は大丈夫だったけど、翌朝出勤前に、拐われた……だから、きっかけは、私の電話、かもしれない……」

次第に声が小さくなった。

「……もしかして、自分が電話をかけなければ、とか、思ってるのか?」

小さく頷いた。

「それは、仕方がないと思いますよ? 仮にりまさんの電話がきっかけだったとして、守内さんがこうなること、誰もわからないですよね?」

照井が声をかけたが、表情は晴れない。

「りま、聞きたいことがあるんだが、昨日あの人と話をした時、あの人の周りに、他に人はいたか?」

人がいたなら、何か変わった様子を見ているかもしれない。

「周り……電話する前はいたかも。私と話をする直前、わざわざ一人になるように、移動してくれてたから」

「移動したのか?」

「うん、外に。あ、マンションだから、ベランダかな……」

「その時に、おかしな様子はなかったか? 声が震えてた、とか」

「特に普通だったよ」

ベランダに出て、普通だった?

「すまない、確認なんだが、ベランダに出たんだな?」

「うん……窓を開ける音と、その後風の音がして、もう少し後に車の音がしたから、ベランダかなって」

「それは、あり得ないな……あの人の家はマンションの五階で、あの人、高所恐怖症なんだ」

「え、そうなの?」

「ああ、以前、別の事件の捜査で、高層マンションに聞き込みに行ったことがあったんだが、頑なにベランダやバルコニーには近付こうとしなかった。自宅でも無理だって、その時に言っていた」

「下の階に引っ越していたというのは、考えられませんか?」

照井の言葉を、俺はすぐに否定した。

「あの人はな……愛妻家なんだ。奥さんを守るために色々調べて、結果あのマンションのあの部屋に決めたんだ。今更階を変えるとは思えない」

自分の恐怖症を押し殺してまで決めた部屋だ。奥さんを守るためなら何でもすると、よく聞かされていた。

「待ってください、じゃあ守内さんは、昨日どこにいたんですか?」

照井が焦ったように言った。奥さんのメッセージと、矛盾している?

「……ちょっと待っててくれ」

奥さんに、再度メッセージを送った。

そして、すぐに返事が来た。


「刑事の妻でありながら、先程の文には色々と情報が足りなかったですね、ごめんなさい、私も焦っているみたいです。思い出しながらになるので、矛盾や記憶違いもあると思いますが……

昨晩、夫は午後六時半に帰宅して、七時に夕食、九時頃にテレビを見ていたら電話がかかってきました。

その後、九時半に車でマンションを出て、先程の住所の場所へ、それから午前零時に帰宅してます。疲れていたみたいで、すぐに寝てしまいました。朝は、午前六時に起きて、朝食と身支度後、七時に車で家を出ています」


ありがとうございます、ご自愛くださいと返し、今来たメッセージをりまと照井に見せた。

「ということは、守内さんが家で取った電話、りまさんがかけたものじゃない、ってことですか」

「しかも、私がかけた時、守内刑事は自宅にいなかった……」

「そう、だから、君がきっかけとは限らない、ということだ」

防犯カメラの映像と合わせて考えると、確かに、りまの電話で、スーパーには行ったかもしれない。だが、それ以上前から、守内刑事は出かけていた。拐われた理由はそこにあるかもしれない。

「ありがとう、省吾……」

漸く表情が晴れた。とりあえず、一安心だ。

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