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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第六「運ばれた遺体」
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揺らぐ信頼

課長に言われた通り、車の運転席で、少し頭を冷やしていた。あんな風に怒られたのは、久しぶりかもしれない。

「りま、すまなかったな、情けないところを見せて」

そう声をかけたが、返事はなかった。

不思議に思い、ポケットを覗くと、悲しそうな顔をして言った。

「……どうして、助けは必要ないなんて言ったの?」

「え?」

助け。守内刑事のことか。

「今回の事件、かなり難しいよ。わからないことだらけだし……だから、守内刑事が手助けしてくれて、正直助かった。それなのに、どうしてあんな言い方したの? 気付いてるかわからないけど、守内刑事、はっきり言ってかなり頭が切れる人だよ。この前の森林公園の事件の時から、何か違うとは思ってた。せっかく協力してくれてるのに、拒絶したのはどうして? 言うことを聞く気がないなら、大石さんにもう一度証言を聞いたのも、どうして?」

立板に水のようだった。彼女の中で、溜まっているものがあったらしい。

「守内刑事と、過去に何かあったのは、さすがにわかる。事件と関係ないから深入りはしないつもりだったけど、いくらなんでもあんまりだよ」

そう言って俯いた。声が震えている。

「……私、省吾のこと、信用できなくなりそう」

その言葉に、頭の中が真っ白になった。

「それは、困る」

「じゃあ、せめて、守内刑事を拒絶する理由を教えてよ」

「わかった、じゃあ、照井が戻ってきたら話す」

「うん……」


照井に、「報告が終わったら駐車場に来てくれ」と連絡を入れ、重苦しい空気の中待っていると、三十分後に照井が駆けてきた。

「お待たせしました……」

「来てくれてありがとう、助手席に乗ってくれ」

「はい」

助手席に乗ってすぐに、照井が口を開いた。

「あの……守内刑事のこと、なんですけど」

「ああ、そのことなんだが……正直、気になってるだろう? 俺があそこまで、あの人を嫌う理由」

「そう、ですね」

何かを言いたそうにしていたが、飲み込んでくれた。

「君は俺のことを調べていたそうだから……あの人との関係は知っているのか?」

「はい。……元々二人で、組んでいたんですよね」

その時、ポケットから「えっ」と声が聞こえた。りまはそのことは知らなかったらしい。

「もう、七年も前になるな……ある事件をきっかけに、俺はあの人と決別したんだ。課長も理解してくれたし……それから、一人の時期もあったが、俺は仲西と組むようになった」

「それ以降、仲違いしたままだったんですね。でも、それならどうして、大石さんにもう一度意見を聞けという指示には、従ったんですか?」

「あれは……的確な指示だと思った。実際、捜査には行き詰まっていたし、何か取っ掛かりがほしいとは思っていた……でも、よりによってあの人に言われるなんて……」

「まるで、反抗期の子供じゃないですか」

「そうだな……」

溜息をついた。本当に、いい歳して何をやっているんだ、俺は。

「決別した理由、訊いてもいい?」

りまが言った。

「スタンスの違いだ。俺とあの人では、刑事という職に対する姿勢が違った……言ってしまえば、それだけなんだ」

二人一組で捜査を行う以上、その方向は同じでなければならない。だが、明らかにそれが違っていた。

「俺はあの人のやり方を受け入れられない。いくら頭が切れても、それは変わらない……二人まで巻き込んで、すまなかった」

「……わかったよ。守内刑事を受け入れろなんて言わない。でも、せめてこの事件の間は、言葉だけでも聞いてほしいかな」

「ああ、そうするよ」

今だけは、仕方ない。


「あの、その守内刑事のことなんですけど」

「そういえば、何か言おうとしていたな」

「はい、あの後、課長も一緒に、少し話をしまして……今回の捜査、守内刑事も参加されるそうです。本当はその予定はなかったそうですけど」

「そうか……」

俺達だけでは不安だと課長が判断したのかもしれない。

「というわけで、課長から、今日はもう上がっていいそうなので、私はこれで失礼します」

そう言うと、車から降り、一礼してから立ち去った。

「……俺達も帰るか」

「うん……」




帰宅後、手早く、りまの風呂の準備をした。

だが、りまはすぐに入ろうとはしなかった。深刻そうな顔で、風呂場の前で立ち尽くしている。

「どうした?」

声を掛けると、ハッとして、顔を上げた。

「あ、えっと……ちょっと、考え事……なんでもないっ」

そう言って、風呂場に駆け込んでいった。

それを見て、俺はすぐに携帯を手に取り、ある人物にメッセージを送った。

送ってから一分もせずに、「今から電話する」と返ってきた。

そして、電話がかかってきた。出ようとしたが、聞かれるとまずいと判断し、ベランダへ向かい、電話に出た。


「……ごめん、急に」

「いいよ。相方さんと、何かあった?」

「まあ、そんなところだ」

「なるほどね。そうねえ、四六時中一緒にいるのに、色々内緒にされているのは、気持ちの良いものじゃないね。私が相方さんの立場なら、ちょっと信用できなくなっちゃうかな」

「やっぱり、そうか」

「でも、省ちゃんの場合、それを話して失望される方が怖いんでしょ」

「それも、確かにある」

「それって、逆に言えば、省ちゃんが相手を信じてあげてないんじゃない? それくらいで失望するような間柄なのかな?」

「……俺は、その人のことを、ほとんど何も知らないんだ」

「そりゃあ、何と言うか……相手には言えない過去とかある感じ? それか、聞き出しにくいとか?」

「そうじゃない。でも、聞いてない」

「じゃあさ、先に省ちゃんが色々話してあげてよ、できるだけ包み隠さず。それで相手の信用を得ようか」

「大丈夫なのか?」

「曝け出すことで得られる信頼もあるよ。じゃ、頑張ってー」

そう言うと、俺の返事も待たず、通話を終えてしまった。

話して信頼を得る、か……。

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