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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第六「運ばれた遺体」
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出会い

羽場さんは、自分の容姿に自信がなかった。小さい目に低い鼻、子どものような体形……整形を考える程だったそうだ。

そんなある時、動画投稿サイトで、ある人物を見かけた。

自分と同じ、容姿にコンプレックスのある人間。でも明らかに違うのは、彼女には自分を変える力があった。

それがコスプレイヤー、皆木智春だった。

羽場さんは皆木さんのファンになり、彼女を真似てコスプレを行うように……なりたかったが、羽場さんにはその勇気すらなかった。

手芸店に足を運んだことはあったが、掲示されている手本を見て、自信を無くして帰る、その繰り返しだった。

そんなある年のハロウィン。偶然バイト中に、皆木さんが現れた。

コスプレ姿で買ったのは、ソーイングセットにトランクス……もしかして、と、困っていることはないか訊いた。

すると彼女は「黒い布は売ってませんか?」と言った。曰く、黒い布とトランクスを組み合わせて、ミニスカートのようにするのだそうだ。

それなら、近くの手芸店に売っているかもしれないと、住所を教えた。

それから数日後、皆木さんは再び店に現れた。あの時の礼と、最近、この近辺に引っ越してきたことを伝えられた。

ハロウィンイベントの時に、視聴者に住所が漏れたからと語る彼女に、羽場さんは、家から出る際は変装することと、引っ越ししたとかは、あまり言わない方が良いことを勧めた。

そして二人は親しくなった。


それからすぐに、羽場さんが店の商品や売上金を横領しているという噂が流れた。

始めはすぐに否定したが、防犯カメラに他に犯人は映っておらず、売上金が合わないのは決まって羽場さんがいる日だということもあり、店長の宮田さんも他の店員も、羽場さんが犯人だと決めつけていた。

針の筵状態で、すぐに辞めてもよかったのだが、他で働ける自信もなく、辞めたら生活ができなくなるかもしれず、なかなか辞められなかったそうだ。

羽場さんは、次第に諦めていった。

だからせめて愚痴でもと思い、皆木さんに、横領の濡れ衣を着せられている件を話した。

すると、皆木さんは羽場さんの無実を証明するために、コンビニに通うと言い出した。

当然、止めた。自分なんかのために、そこまでしなくていいと。

だが皆木さんは、「羽場ちゃんには自信を持ってもらいたいから」と、半ば強引に真犯人探しを初めた――。


「真犯人が見つかれば、その後は自分で何とかするつもりでした。でも、その前に、智春さんは殺されてしまった……あんなに良くしてくれたのに……」

ケースの中には、作りかけの洋服や布の端切れがパンパンに詰まっていた。

「見てくださいよ、これ、智春さんが生地を選んでくれたんです。手芸に興味があるって話したら、私に合うんじゃないかって。既製品もいいけど、自分で作った方が愛着が湧くからって。でも、上手くできないんです……」

指したそれは、前身頃や袖はできていたが、少し改善が必要なように思えた。

「……羽場さん、針と糸と、糸切りバサミはありますか?」

「え? あ、はい」

上がり框に腰を下ろし、軽く手直しをした。

「もしかしてとは思いますが、目印をつけずにやっているのではと思いまして。こういうのは始めにチャコペンと定規などで真っ直ぐな線をつけて、なぞるように縫うのがセオリーです」

「で、でも、実家の祖母は針と糸だけでやってました」

「熟練の技ですね、プロの絵描きがフリーハンドで模写をするようなものです。始めはアタリといって、大まかな形から描き、それから頭の大きさや脚の長さを、目印をその都度つけて、測りながら描くものなんです。裁縫も同じです、最初から何の目印も無しにいきなり縫うのは難しいです。それと、裁断した生地をまち針などで固定して、ある程度完成に近い形を始めに作って、一度全体を見た方が、後で直すよりも改善点が先に見えるのでオススメです」

「刑事さん、詳しいんですね」

「……趣味でやっていたので」

言いながら、踊っていた縫い目を整えた。

「縫い目を見る限り、ミシンでやってると思いますが、部分次第では手縫いの方が上手くいく時もあります。糸や縫い方の選択はできていますから、後は慣れですね」

できたそれを、羽場さんに手渡した。

「……凄く、綺麗です。私、動画で手本を見たりしたんですけど、みんな上手くて……やっぱり、私には無理なのかなって」

「最初はみんなそんなものです、始めから上手い人はいませんよ。ご自分のペースで、進めればいいんです。それに、コンプレックスを逆手に取る方法もあります。俺は手の大きさと指の太さがコンプレックスでしたが、その分、大きな物を作るのに重宝してます。持ち味を活かすってことです」

物は言いようだが、小さい目や低い鼻にも、必ず良い面はあると、俺は考えている。

「ありがとうございます……頑張ります」

嬉しそうに笑う羽場さんに、照井が声をかけた。

「ちなみにですが……羽場さん、今日の十時頃、穣平川の付近で、何をされていたんですか?」

「あ、それは、あの近くに、革を売ってる店があって、買いに……ケースに入れれば、傷つけずに運べるので」

玄関に、ロール状に巻かれた革が置いてあった。一緒にレシートもあり、時間は九時四十五分、住所は穣平川の近辺だった。

「自分なんかが、コスプレや手芸なんてと思われたらと、怖くなって……黙っていて、すみませんでした」




「照井、これで羽場さんの無実が証明できたか?」

羽場さんの自宅を後にし、車に乗り込んだ。

「まだ何とも。あの時間に穣平川の近くにいたことは事実ですし、あの端切れも、帰宅後にケースに詰めることもできます。その前は遺体が入っていたとしたら?」

「そう言えなくもないか……」

「まあ、ケースの中がわかっただけでも、収穫ですかね。で、これからどうします?」

「俺はやっぱり、羽場さんが犯人とは思えない。コンビニで金銭を横領していた件と……ここを調べる」

取り出したメモには、ある場所の住所。これは非常に有力な情報だった。

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