表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第六「運ばれた遺体」
46/59

協力

園を離れ、穣平川から現場のコンビニへと向かうルートにある飲食店やコンビニの防犯カメラを、片っ端から調べさせてもらった。

あまり目ぼしい情報は無いように思えたが、穣平川に程近い飲食店の防犯カメラ映像の隅に、それは映っていた。

「あっ、これ……」

それ見ていた照井が、声を上げた。

そこには、大きなキャリーケースを引いて走る、羽場さんの姿だった。服装は、青い服に、黒い帽子のような物を被っているように見える。目撃証言では男の人とのことだが、髪が短いから勘違いしたのだろう。

「時刻は、十時ちょうど。死亡推定時刻に当てはまりますね。映像の中の羽場さん、コンビニの方へ向かっていますし」

「……ちょっと待ってくれ、君はもしかして、羽場さんを疑っているのか?」

「関係者を疑うのは基本ですよ? でも、まだ確定ではないです。この運んでいるケースの中身、訊いてみましょう」

何か引っかかることはあるが、とりあえずコンビニに戻って話を聞いてみた。

「この映像には、大きなキャリーケースを持っているあなたが映っています。目撃者もいます。こちらのケースには、何が入っているんですか? それと、穣平川の付近で何をされていたんですか?」

照井の質問に、羽場さんはきっぱりと言った。

「……言いたくないです」

「それは、どうしてですか?」

「とにかく、言いたくないです」

さっきの弱々しい態度と違い、強く拒否された。

「羽場さん、答えた方がいいんじゃ」

隣にいた宮田さんが、焦ったように羽場さんを説得した。

「これって任意ですよね? 拒否します」

結局、答えを得ることはできなかった。


「すみません、普段はあんなに頑固じゃないんですけど」

コンビニを出たところで、宮田さんが頭を下げた。

「いいですよ、慣れてますから」

照井がそう言うが、宮田さんは深くため息をついた。

「何か隠してるみたいなんですよね……穣平川って言ってましたよね? あの近くに何かあるのか、最近よく通っているみたいなんです」

「そうですか。ちなみに、それが何故なのかはご存知でしょうか」

「それはさすがに……あの辺はお店が多いから何とも……最近は怪しい店もできたから、なるべく近付かないでほしいんですよね――」


宮田さんとの話を終え、改めて現場に戻り、一度情報を整理することにした。

「羽場さん、怪しいですね。あのケースそのものが見つかれば、動かぬ証拠になると思うのですが」

照井の中では、羽場さんが犯人で確定しているらしい。

「……俺には、そうは思えない」

俺の一言に、照井が首を傾げた。

「何故ですか? 何か、他にも手がかりが?」

だが、照井も前回の件のことを気にしているのか、慎重に訊いてきた。

「羽場さんに、人を殺すことはできない気がする。あのケースも、事件とは関係ない気がする……」

「気がするって、もしかして、刑事の勘ってやつですか? そんな根拠のない理由、聞いたことないですよ!?」

照井が興奮している。言っていることも、ごもっともだ。

「とにかく、少し待ってくれないか……証拠を集めたい」

「……りまさんはどう考えてるんですか?」

そうだ、彼女の意見を聞いていなかった。

胸ポケットを覗くと、すぐに反応してくれた。

「私も、羽場さんは犯人じゃないと思ってます」

「それは、ちゃんとした理由があるんですよね?」

照井の圧にも、りまは臆することなく続けた。

「Aさんは、身元も、交友関係すらわからない状態です。でも、羽場さんは、顔見知りであると、自分から話してくれました。照井刑事、言ってましたよね? 関係者を疑うのは基本だって。羽場さんは、自分から、疑われるような発言をしています。それと、羽場さんには、Aさんを殺すメリットが無いです。見つかってない、と言った方が正しいかも、ですけど……省吾が何に拘っているのかはわかりませんが、照井刑事も、一度落ち着いてください」

「……では、もう少し、調べてみます。それでも、あのケースは、探させてください。何か関係がありそうなので」

「わかりました、ありがとうございます」

りまの言葉で、納得してくれたようだ。

「とはいえ、これ以上調べることがないな……」

遺体の身元も、川から離れた場所に遺体がある理由も、羽場さんが持っていたキャリーケースの中身もわからない。完全に手詰まりだ。

その時、考え込んでいた照井が顔を上げた。

「……ちょっと待っていただけますか?」

そう言って、携帯を操作した。

「赤石刑事、もう一度、大石さんに話を聞きませんか?」

「大石さんに?」

思いも寄らない提案だった。

「初めに話を聞いたあの時、大石さんは夜勤明けでした。疲れていて、注意力も散漫だったと思われます。もうすぐ夕方ですし、仮眠も終わってる頃じゃないかと……何か思い出したことがあるかもしれません」

「そう、誰かに言われたのか?」

携帯を操作してからそう言ったのだから、そう考えるのが自然だ。

「そうですね」

「それは、誰に言われたんだ?」

訊くと、小さく答えた。


「……守内刑事です」


あの人か……。

「わかった。大石さんには、俺から連絡する」

「は、はい。お願いします……」

一度深呼吸をして、大石さんに電話をかけた。

数回のコールの後、大石さんが出てくれた。

「お休みのところ、すみません」

「いいですよ、さっき起きたんで。それで、どうかしました?」

「お手数ですが、先程、遺体を見つけた時のことを、もう一度聞かせて頂けませんか? 捜査に行き詰まってしまいまして」

「ああ、いいですよ。えっと、あの時は、職場で少し仮眠を取ってから、朝食と昼食を買いに十時四十分くらいにコンビニに行って、そこで……」

大石さんが、急に黙り込んでしまった。

「大石さん? どうしましたか?」

「……すみません、思い出したことがあって。関係無いかもしれないんですけど」

「と、言いますと?」

「あの時、俺、交通違反を見たんです、一時停止の無視。それにぶつかりそうになって……その後に、車を駐車場に停めて、降りたら遺体があって……」

「そうでしたか……でも、一時停止の無視は交通課の管轄なので、こちらの件とは――」

その時、胸ポケットから衝撃を感じた。それが何を意味しているのかは、すぐにわかった。

「やっぱり、関係無かったですかね?」

「いえ、念のため、詳しく調べさせてください。ドライブレコーダーの映像などはありますか?」

「はい、すぐに送ります」

「ありがとうございます」

通話を終え、少し待つと、大石さんから映像データが送られてきた。


会社と思われる場所の駐車場を出て、少し走り、午前十時四十分頃、現場近くの路地の前に差し掛かったタイミングで、路地から一時停止を無視した白い乗用車が飛び出し、咄嗟に急ブレーキを踏んだ。大石さんの「危なっ、何だあいつ!」と、興奮している声が入っていた。

その後、コンビニの駐車場に入り、映像はそこで終わった。


映っている白い乗用車の運転手の部分を拡大すると、粗い画質ではあったが、見たことのある顔が映っていた。

「これ……田岡さんだな」

今朝、現場を眺めていた、あの店員が映っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ