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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第六「運ばれた遺体」
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穣平川

「でも、どうして運んだんだろう」

りまが言った。

「殺人事件だとして、Aさんを殺した場所が、その穣平川なら、わざわざここに運ばなくても、そのまま置いとけばいいのに。何でリスクを負ってまで、こんな遠くて、見つかりやすいところに置いたんだろう。川の方が、茂みがあったりして、遺体も見つかりにくいよね?」

「確かに、そうだな」

「その穣平川に行ってみようよ、何かわかるかも」

「わかった、行こう」

近くに停めていた車へ向かう俺を、照井は不思議そうに眺めていた。

「……どうした?」

「あ、いえ……以前からそのように、りまさんの意見を聞きながら、捜査をしていたんだなー、と」

「そうだな……りまの意見や疑問は的確だし、俺達が気付いていなかったことに気付いてくれる。頼りになるぞ」

そう言うと、ポケットから「そ、そんなことないよ……!」と聞こえた。


その後、車で穣平川へ向かった。緩やかな流れが特徴の、浅く広い川だ。近くには住宅街や公園がある。

俺達が到着した頃には、既に規制線が張られていた。

「犯行現場はこの辺り、ですね」

コンクリートの階段からほとりに降りたすぐのところ、鑑識が既に捜査を開始していた。

「足跡はある程度採取できたそうですが、この辺りは人通りも多くて、足跡も相当な量が出てきたそうです」

「足跡から判断するのは難しそうだな……」

「とりあえず、私達も聞き込みしてみますか」

近くの住宅地に向かい、午前九時から十時三十分の間に何か見聞きしなかったか、虱潰しに聞いた。

ついでに、Aさんのことを知っている人がいないか訊いてみたが、それは見つからなかった。

「その頃なら、近くの保育園の散歩の時間ですね、近所の子供達が通ってるので――」

一人の主婦の証言を聞き、近くの保育園を訪ねてみた。

事情を話し、保育士の一人に、別室で話を聞かせてもらった。

「その時間でしたら、確かにお散歩の時間ですね。ですが、川の近くは通りましたけど、特に何もなかったような……子供達を見ていましたので、自信はありませんが」

思い出してもらったが、あまり情報は手に入らなかった。


話を終えて部屋を出たところで、数人の園児達に取り囲まれた。来客が珍しいらしい。

おじさん達何しに来たの、先生と何話してたの……色々訊かれてしまった。適当にあしらうのも違うと感じ、目線を合わせるためにしゃがみこんだ。

「おじさん達ね、捜してる人がいるんだ。君達がお散歩してた時間に、何か見なかったかな?」

優しく訊くと、「ゆうくん知ってる、変な男の人見たよ!」と、一人の園児が声を上げた。

見ると、名札には「ゆうと」と書かれている。大石さんと同じ名前だな、とぼんやりと考えていた。

「あのね、男の人が、川の近くで、大きな箱を押して走ってたよ」

川の近く、大きな箱……。

「その人、何色のお洋服を着てたかわかるかな?」

「青い服だった。あとね、帽子かぶってた、黒い帽子」

「帽子? どんな形かわかる?」

「持つところがあって、丸いやつ」

ジェスチャーで表してくれたそれは、ツバのついた丸いものだった。

黒い帽子に青い服、大きな箱ともなれば、近くの防犯カメラに映っているかもしれない。

「わかった、ありがとう」

礼を言って、園を後にした。




「赤石刑事、子供お好きなんですね」

車へ向かう俺に、照井が声をかけた。

「そうだな、甥っ子がいるから、慣れてはいるな」

車へ乗り込み、りまに意見を聞こうとポケットを覗いた。

だが、りまは顔を真っ青にして、ポケットの内側を掴んで震えていた。

「ど、どうした?」

俺の声を聞いて、照井も身を乗り出して覗き込んだ。

「な、何でもない、もう大丈夫……」

その様子を見て、照井がピンと来たようだ。

「もしかして、りまさん、子供が怖いんじゃ……?」

それを聞いて、ハッとした。確かに、子供達と話すために、しゃがみ込んだ。もしかしたら、気付かれるかもしれない……そんな距離だった。

「……すまない、配慮が足りなかった」

謝罪したが、もう遅い。照井が責めるように俺を見ている。

「大丈夫だよ、話は聞いてたし……気にしないで」

笑ってはいるが、その笑顔は引きつっていた。

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