飛び立て! 星の方舟
ひとまず、あの六人がお仕置きを受けることになっちゃったけど気にしない。
水着ファッションショーは終わりを迎えて、ようやく作戦会議が始まった。でも、もう外は真っ暗になっちゃっている。
「少し遊びすぎたね」
「そうねー、でも楽しかったわー」
ニルヴィーナさんとウィンディさんは一度顔を見つめる。そして、手を差し出し、固く握りしめていた。
「なかなかの相手だった」
「あなたこそ。ここまで変態だとは思っていなかったわ」
その笑顔はとても素敵だ。でも、そんな笑顔を浮かべている暇はない。
「ねぇ、二人共」
「あら、どうしたのマオちゃん? もしかして、私とハグをしたいの? なら遠慮せずきなさい。ギュッとしてあげるから!」
「うーっふっふっふっ、それともまた呪いをかけて欲しいのかい? そうだな、今度は色気が出る呪いでもかけてあげよう」
「遠慮します」
なんだかとても面倒臭い。いつものことだけど、この二人が一緒にいると余計にそう感じちゃうよ。
「そうじゃなくて、明日の戦争はどうするの? 今回はそのために開いた作戦会議だったでしょう?」
「あら? そんな感じだったかしら?」
「そういえばそんなことあったな。水着に夢中になりすぎていたよ」
この人達は……
「いいですよ、もぉー。一応、思いついた作戦がありますから」
「あら、それはどういう作戦なの?」
「悪いけど教えてくれないかな?」
私は先ほどカランさんからもらった瓶を取り出した。その中にある船を見せつけて、その作戦内容を口にする。
「これ、私の魔力に反応して出来上がったものらしいんです。壊せばそのまま使えるようで。それで、この船を使って対抗しようと思うんです」
「ほう。この船一隻でね」
「さすがに無理があるんじゃない?」
確かにこれだけだと無理かも。でも、この船はとーってもすごい船なんだ。
「これは空を飛べる船だよ」
「空を飛べる船?」
「ほう、なるほどね。海上ではなく空を翔けるのか」
「うん。カランさんの話だと、姿形はあまり変えられないけど基礎的なことや能力は変えられるんだって。だからできるだけ便利になるように変えてみたんだ」
そんなことを言うと、ウィンディさんとニルヴィーナさんは少し驚いたように声を上げた。
私は瓶の中の船を見る。ひとまず名前は決めてないけど、いろいろと変えていたら気づけば星マークがあちこちについているのに気づいた。
これが活躍してくれれば、どうにか戦争も乗り越えられると思う。でも、本当に活躍するのかなぁー?
「やっるー。さすがマオちゃんね」
「思いもしない収穫というものだね。これは作戦の練りようがあるな」
二人に褒められてなんだか嬉しいな。もっといい感じにこの船をかいぞうしてみようかなぁー?
「さて、では早速能力試験といこうか」
「そうね、これ以上は無駄な時間はすごせないし」
「え? 割っちゃうの?」
なんだかもったいないなぁー。もっといろいろ改造したかったんだけど。
でも、もう暗くなってきちゃっているし、これ以上は時間を割けないか。
「ということで、どうぞ魔王さま!」
「この窓から思いっきり投げつけちゃって!」
異様にテンションが高いなぁー
ま、まあ、言われた通りにやってみるかな。
「よぉーし」
上手く飛びますように。
そんな祈りを込めて、私は窓から叩きつけるように瓶を地面に投げた。すると、途端にすごい煙が溢れ出た。それは私の視界を真っ白にするほどたくさんだ。
「けほっ、けほっ」
もぉー、こんな煙はいらないよぉー
それよりもあの船はどうなったんだろ?
「おおっ」
目に入ってきたのは、巨大な船だった。しっかりと翼が生えていて、帆や大砲も完備されている。そしてこの船を象徴する星マークが、いい感じに飾られていてちょっと感動した。
「あらー、なかなかのデザインじゃない」
「思っていたよりはいい感じだね」
あれ? 二人はあまり気に入ってなかったのかな?
ちょっと不安を覚えつつ、船を見上げる。今にも飛び立ちそうだ。なんだか作ってよかったって感じちゃうよ。
「やるとしようか」
「そうね。あ、マオちゃん、船に名前はあるの?」
名前? うーん、特に考えてなかったけど。
そうだなぁー、星を象徴しているし、こんなのはどうかな?
「スターノアって、どうかな?」
「スターノア、ねぇ。悪くはないかな?」
「ふふ、マオちゃんらしい名前ね」
うーん、褒められているのかな? なんだか不安が残るよぉー
「さて、それでは乗り込むとしようか」
ニルヴィーナさんはそういって窓から飛び降りていった。ウィンディさんはというと、窓から出て、空を飛んで直接船に乗り込む。
二人共行動が早いなぁー。私も急いで乗り込もっと。
「うむ、これは困ったな」
急いで二人を追いかけると、とても困ったように頭を抱えている二人の姿があった。
どうしたんだろって思っていると、ニルヴィーナさんがこんなことを言う。
「これはどうやら、魔王さましか動かせない仕様みたいだ」
「え?」
「特別な魔力を持つ者しか動力が反応しない。つまり、魔王さまがいて初めて動くという代物なんだ」
そ、そんなぁー。それじゃあみんなのために作った意味がないよぉー
「まあ、マオちゃんが船の中にさえいればどうにかなるってことね」
「そういうことでもあるかな。しかし、これはなかなかの代物だ」
うーん、じゃあ私はこの船の中にいないといけないのか。
明日の決戦、どうなるのかなぁー?
「何、私がしっかりしとした作戦を考えてやるさ。それにこの船は、いろいろと面白い機能がついている」
「面白い機能?」
それって思い付きだけでつけただけの機能のことかな? うーん、それは役に立つのかなぁー?
「上手く使えれば、明日の戦争には負けないだろうな。まあ、そうなる状況を作ってもあげるけどね」
そういってニルヴィーナさんは楽しそうに笑っていた。
明日は戦争。負けるかもしれない戦いに、私達は挑む。
マオちゃんが魔改造した船。その名はスターノア!
この船はちゃんと活躍するのだろうか!?
次回は戦争だぁー!




