第五期 第十話 「未来へ」
十二月。
吐く息が白く染まる季節。
休日の朝、リビングには焼きたてのトーストの香りが広がっていた。
「おはよう!」
ひまりが元気よく起きてくる。
「おはよう。」
ユウキとミヤビも笑顔で迎えた。
朝食を囲む三人の会話は、いつものようににぎやかだった。
「きょうはどこいくの?」
ひまりが尋ねる。
「今日はね。」
ユウキがコーヒーを一口飲んで答える。
「久しぶりに、みんなで難波を散歩しよう。」
「やったー!」
昼前。
三人は難波の街をゆっくり歩く。
クリスマスの飾り付けが街を彩り、たくさんの人でにぎわっている。
「きれい!」
ひまりはイルミネーションを見上げて目を輝かせた。
「去年も見たね。」
ミヤビが微笑む。
「でも、その時はまだ抱っこだった。」
ユウキも笑う。
「今年は自分で歩いてる。」
「大きくなったな。」
散歩の途中、公園へ立ち寄る。
ひまりは元気いっぱいに遊具へ走っていく。
「パパ!」
「みて!」
「すべりだい!」
「気をつけてね。」
ユウキはベンチに座りながら、その姿を見守る。
「子どもの成長って。」
「本当に早いね。」
ミヤビが隣へ座る。
「この前まで赤ちゃんだったのに。」
「うん。」
「毎日見てるのに。」
「気づいたら、できることが増えてる。」
しばらくして。
ひまりが落ち葉を両手いっぱいに集めて戻ってきた。
「プレゼント!」
そう言って、ユウキとミヤビへ一枚ずつ渡す。
「ありがとう。」
ユウキは笑顔で受け取る。
「きれいな葉っぱだね。」
ミヤビも大切そうに手のひらへ乗せた。
「これ。」
「たからもの!」
ひまりは誇らしそうに笑う。
帰宅後。
三人で温かいココアを飲みながら、今日撮った写真を見る。
落ち葉を抱えて笑うひまり。
三人で手をつないで歩く後ろ姿。
「いい写真ばかり。」
ミヤビが微笑む。
「アルバムがまた増えるね。」
ユウキは静かにうなずいた。
「人生って。」
「特別な日だけじゃない。」
「こういう普通の日が。」
「一番大切なんだな。」
夕方。
ひまりがお昼寝を始める。
ユウキとミヤビはリビングで静かに話していた。
「最近。」
ミヤビが窓の外を見ながら言う。
「考えることがあるの。」
「何?」
「ひまりも。」
「いつか大人になる。」
「友達ができて。」
「恋をして。」
「自分の人生を歩いていく。」
ユウキはゆっくりとうなずいた。
「そうだね。」
「きっとあっという間なんだろうな。」
少しの沈黙。
そしてユウキが穏やかに言った。
「だから。」
「一つだけ願いがある。」
「うん。」
「大人になっても。」
「疲れた時。」
「嬉しいことがあった時。」
「何か話したい時。」
「『ただいま』って帰って来たくなる家でありたい。」
ミヤビは優しく微笑んだ。
「素敵な願い。」
「私も同じ。」
「帰る場所があるって。」
「すごく幸せなことだから。」
二人は静かに手を重ねた。
その時。
寝室から小さな足音が聞こえる。
「パパ。」
「ママ。」
眠そうな目をこすりながら、ひまりがやって来た。
「おきた。」
ユウキは笑顔で抱き上げる。
「おかえり。」
「ただいま!」
ひまりは元気よく答えた。
その何気ないやり取りに、ユウキとミヤビは思わず笑顔になる。
夜。
三人で布団へ入る前。
ユウキは窓の外に広がる大阪の夜景を眺めながら、小さくつぶやいた。
「未来は。」
「まだ分からない。」
「でも。」
「この家なら。」
「どんなことがあっても。」
「笑顔で『おかえり』と言える。」
ミヤビは優しくうなずく。
「そして。」
「『ただいま』が一番似合う家にしよう。」
ひまりは二人の間で安心したように眠り始めた。
静かな冬の夜。
家族三人の笑顔が、温かな灯りに包まれている。
未来はまだ始まったばかり。
けれど、その未来には、変わらない約束があった。
「いつでも帰ってこられる場所であり続けること。」
それが、この家族の願いだった。
次回予告 第五期 第十一話「親子で観るアニメ」
ひまりが「パパと同じアニメが好き!」と言い始める。親子三人で同じ作品を楽しみ、好きなものを共有する喜びを感じるユウキとミヤビ。物語は、いよいよ最終章へと向かう。




