第五期 第三話「家族みんなでアニメ映画」
五月。
ゴールデンウィーク。
朝から晴れ渡った青空を見て、ひまりは元気いっぱいにリビングへ駆け込んできた。
「パパ!」
「ママ!」
「えいが、みにいきたい!」
ユウキは新聞から顔を上げる。
「映画?」
「うん!」
「ようちえんで、さくらちゃんがね。」
「アニメ、おもしろかったって!」
ミヤビはユウキと顔を見合わせ、笑顔になった。
「じゃあ。」
「今日は三人で映画館へ行こうか。」
「やったー!」
ひまりは両手を上げて飛び跳ねた。
難波の映画館。
入口には上映中のアニメ作品のポスターが並んでいる。
ひまりは目を輝かせながらポスターを見上げた。
「おっきい!」
ユウキはチケットを受け取りながら笑う。
「パパも映画館で初めてアニメを見た日は、すごくワクワクしたな。」
「パパも?」
「もちろん。」
「その頃からアニメが大好きだった。」
ひまりは嬉しそうに手をつないだ。
売店では、大きなポップコーンを一つ買う。
「しお?」
「キャラメル?」
ユウキが尋ねる。
ひまりは真剣な表情で少し考えた。
「……はんぶんこ!」
ミヤビが思わず笑う。
「いい考えだね。」
三人で塩味とキャラメル味のハーフを選んだ。
上映が始まる。
館内が暗くなると、ひまりは少しだけユウキの腕を握った。
「だいじょうぶ?」
ユウキが優しく聞く。
「うん。」
「パパとママがいるから。」
その言葉に、ミヤビは優しく微笑んだ。
スクリーンいっぱいに映し出される色鮮やかな世界。
主人公たちが冒険し、笑い、時には涙を流す。
ひまりは真剣な表情で物語を見つめていた。
楽しい場面では声を出して笑い、
少し切ない場面では、ミヤビの手をそっと握る。
ユウキは、その様子を横目で見ながら静かに笑った。
上映が終わる。
エンドロールが流れる中、ひまりは満面の笑みだった。
「おもしろかった!」
「よかったね。」
ミヤビが頭をなでる。
「また見たい?」
「うん!」
「さくらちゃんにも、おはなしする!」
映画館を出ると、ひまりは主人公の真似をしながら歩き始めた。
「えい!」
「とう!」
小さな勇者のように元気いっぱいだ。
「すっかり主人公になってる。」
ユウキが笑う。
「子どもって、すぐ影響を受けるね。」
ミヤビも楽しそうに見守っていた。
昼食は近くのレストラン。
ひまりは映画の話を夢中で続ける。
「さいごね。」
「みんなで、たすけあってた!」
「うん。」
ユウキはうなずく。
「仲間がいたから乗り越えられたんだね。」
「パパたちも?」
「そう。」
ミヤビが優しく続ける。
「パパとママも、お互い助け合ってきたから。」
「今があるんだよ。」
ひまりは少し考えてから笑顔になった。
「ひまりも、おてつだいする!」
二人は思わず笑い合った。
夕方。
家へ帰ると、ひまりはクレヨンを取り出した。
「えいが、かく!」
今日見た主人公や仲間たちを、一生懸命画用紙に描いていく。
その横には、小さく三人の家族も描かれていた。
「これ。」
ユウキが指さす。
「俺たち?」
「うん!」
「みんなで、えいがみた!」
ひまりは誇らしそうに笑った。
夜。
寝る前の読み聞かせが終わると、ひまりが小さくつぶやいた。
「パパ。」
「なあに?」
「また、いこうね。」
「映画。」
ユウキは優しく答えた。
「もちろん。」
「何回でも一緒に行こう。」
ミヤビも微笑む。
「次はどんな作品を観ようか。」
「たのしみ!」
ひまりは安心したように目を閉じた。
寝室を出たあと。
リビングで温かいお茶を飲みながら、ユウキが静かに言う。
「昔は一人でアニメを観る休日が楽しみだった。」
ミヤビは穏やかにうなずく。
「今は?」
ユウキは笑顔で答えた。
「二人で観るのも幸せだった。」
「でも。」
「三人で笑いながら観る今が、一番幸せだ。」
ミヤビはその言葉に微笑み、そっとユウキの手を握る。
アニメがつないでくれた二人の縁は、今では家族みんなの大切な思い出になっていた。
次回予告 第五期 第四話「初めての運動会」
幼稚園で初めての運動会が開催される。かけっこにダンス、一生懸命頑張るひまりの姿に、ユウキとミヤビは思わず涙ぐむ。家族みんなで迎える、忘れられない一日。




