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第五期 第一話 「はじめての幼稚園」

挿絵(By みてみん)


四月。


 満開の桜が、大阪の街を優しく彩っていた。


 ひまりは三歳になった。


 小さかった体も少しずつ大きくなり、おしゃべりも上手になっている。


「パパ、おはよう!」


 朝早くから元気な声がリビングに響く。


「おはよう、ひまり。」


 ユウキは新聞を置き、笑顔で抱き上げた。


「今日も元気いっぱいだね。」


「うん!」


 ひまりは大きくうなずいた。


 その様子を見て、ミヤビもキッチンから微笑む。


「今日は特別な日だよ。」


「うん!」


「ようちえん!」


 ひまりは嬉しそうに両手を広げた。


 朝食を終えると、真新しい制服に袖を通す。


 小さな帽子。


 黄色い通園バッグ。


 少し大きめの制服姿に、ユウキは思わず目を細めた。


「似合ってる。」


「ほんと?」


「世界一かわいい。」


 ミヤビが笑う。


「親ばか。」


「否定できない。」


 三人は声を上げて笑った。


 幼稚園へ向かう道。


 桜並木を歩きながら、ひまりは楽しそうに歌を口ずさんでいる。


「おともだち、できるかな?」


 ふと、不安そうに尋ねた。


 ユウキはしゃがみ込み、目線を合わせる。


「大丈夫。」


「ひまりは優しい子だから。」


「きっと素敵なお友達ができるよ。」


 ミヤビも優しく続ける。


「困ったことがあったら、先生にも話していいんだよ。」


「うん!」


 ひまりは元気よく返事をした。


 幼稚園の門には、たくさんの親子が集まっていた。


 先生が笑顔で迎えてくれる。


「ご入園、おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


 ユウキとミヤビはそろって頭を下げた。


 ひまりは少し緊張しながらも、先生へ小さくお辞儀をする。


「よろしくおねがいします。」


「とっても上手ね。」


 先生が優しく微笑んだ。


 教室へ入る時間。


 ひまりはユウキの手をぎゅっと握った。


「パパ。」


「どうした?」


「ちょっとだけ。」


「ドキドキする。」


 ユウキは優しく笑った。


「パパも初めて営業へ行った日は、すごくドキドキしたよ。」


「ほんと?」


「うん。」


「でも、一歩踏み出したら、新しい友達や仲間ができた。」


 ひまりは真剣に聞いている。


「ひまりも。」


「今日、その一歩を踏み出す日なんだ。」


 小さくうなずく。


「がんばる!」


 先生に手を引かれ、教室へ入っていくひまり。


 途中で振り返り、大きく手を振った。


「いってきます!」


「いってらっしゃい!」


 ユウキとミヤビも笑顔で手を振り返す。


 教室の扉が閉まると、二人は少しだけ寂しそうに顔を見合わせた。


「成長したね。」


 ミヤビが静かにつぶやく。


「うん。」


「昨日まで赤ちゃんだった気がするのに。」


 ユウキも感慨深そうに笑った。


 午前中。


 二人は近くのカフェで過ごしていた。


「静かだね。」


 ミヤビがコーヒーを飲みながら笑う。


「家にひまりがいないの、不思議。」


「すぐ帰ってくるって分かってるけど。」


「少し寂しい。」


 ユウキもうなずいた。


「でも。」


「こうやって少しずつ世界を広げていくんだね。」


 お迎えの時間。


 教室の扉が開くと、ひまりが元気いっぱいに飛び出してきた。


「パパ!」


「ママ!」


 二人のところまで駆け寄り、ぎゅっと抱きつく。


「おかえり。」


 ミヤビが優しく抱きしめる。


「どうだった?」


 ひまりは満面の笑みで答えた。


「おともだち、できた!」


「先生と、おえかきした!」


「おうたもうたった!」


 話したいことがたくさんあるようで、言葉が止まらない。


 ユウキとミヤビは顔を見合わせ、安心したように微笑んだ。


 帰り道。


 ひまりは今日描いた絵を大事そうに持って歩いている。


「明日も行く!」


「楽しみ?」


「うん!」


 その笑顔を見て、ユウキは静かにつぶやいた。


「これから。」


「ひまりの世界は、どんどん広がっていくんだな。」


 ミヤビは優しくうなずく。


「私たちは、その背中を見守っていこう。」


 夜。


 夕食を食べながら、ひまりは幼稚園で覚えた歌を元気よく歌っていた。


 その歌声を聞きながら、ユウキは思う。


 アニソンバーで偶然出会ったあの日から始まった人生。


 恋人になり、夫婦になり、家族になった。


 そして今。


 娘が新しい世界へ踏み出す姿を見守っている。


 これからも、この家族には、たくさんの「初めて」が待っている。


 その一つひとつを大切にしながら、三人はまた新しい春を歩き始めるのだった。


次回予告 第五期 第二話「初めてのお友達」


幼稚園生活にも少しずつ慣れてきたひまり。同じアニメが好きな女の子・さくらと仲良くなり、初めて「お友達」と呼べる存在ができる。娘の成長を見守るユウキとミヤビの心温まるエピソード。

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