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第四期 最終話(第十三話) 「はじめての『パパ』『ママ』」

挿絵(By みてみん)


三月。


 春のやわらかな風が、大阪の街を包んでいた。


 ひまりは生後六か月を迎え、寝返りやお座りが少しずつできるようになっていた。


 リビングには、小さなおもちゃが増え、笑い声が絶えない毎日が続いている。


「ひまり、おはよう。」


 ユウキが声をかけると、ひまりは満面の笑みで両手を伸ばした。


「抱っこかな?」


 優しく抱き上げると、ひまりは嬉しそうに笑った。


「今日も元気だね。」


 ミヤビも笑顔で頬をなでる。


 休日。


 三人は近くの大きな公園へ出かけた。


 桜が咲き始め、家族連れでにぎわっている。


 レジャーシートを広げ、お弁当を食べる。


「去年はまだお腹の中だったんだよ。」


 ミヤビがひまりへ優しく話しかける。


「今年は一緒にお花見。」


 ユウキも微笑む。


「来年はきっと走り回ってるな。」


 二人はその光景を想像して笑い合った。


 午後。


 家へ戻ると、ひまりはプレイマットの上で楽しそうに遊び始める。


 ユウキはぬいぐるみを持って近づいた。


「ひまり。」


「パパですよ。」


 ミヤビも反対側から笑顔で声をかける。


「ママもいるよ。」


 ひまりは二人の顔を交互に見つめ、小さく口を動かした。


「ぱ……。」


 二人は顔を見合わせる。


「今……?」


 ひまりはもう一度口を開く。


「ぱぱ。」


 部屋の空気が一瞬止まった。


「……。」


 ユウキは目を丸くしたまま固まってしまう。


「今。」


「言った?」


 ミヤビは涙ぐみながら何度もうなずく。


「うん。」


「『パパ』って。」


 ユウキはひまりを優しく抱き上げた。


「ありがとう。」


 胸がいっぱいになり、それ以上言葉が出てこない。


 その様子を見ていたひまりは、今度はミヤビへ手を伸ばした。


「ま……。」


 ミヤビは思わず息をのむ。


「まま。」


「……!」


 ミヤビの目から涙がこぼれる。


「呼んでくれた。」


「ママって。」


 ユウキも優しく笑う。


「ちゃんと覚えてくれたんだ。」


 三人は自然と抱き合った。


 ひまりは楽しそうに笑っている。


「パパ。」


「ママ。」


 その二つの言葉は、ユウキとミヤビにとって何より大切な贈り物だった。


 夕方。


 サークル「オタクっ子集まれ」の仲間たちへ動画を送る。


ユウキ


「今日、ひまりが初めて『パパ』『ママ』って呼んでくれました。」


 すぐにグループチャットがにぎやかになる。


タクミ


「おめでとう!!」


ユイ


「動画だけで泣いちゃった!」


リク


「成長早いなぁ!」


 画面いっぱいに祝福のメッセージが並ぶ。


「みんなも喜んでくれてる。」


 ミヤビが嬉しそうに微笑んだ。


 夜。


 ひまりを寝かしつけたあと、ユウキとミヤビはソファに並んでアルバムを開いた。


 そこには、これまでの思い出がたくさん詰まっていた。


 初めてのエコー写真。


 退院の日。


 初めての笑顔。


 クリスマス。


 お正月。


 そして今日の動画。


「本当に。」


 ユウキが静かにつぶやく。


「毎日が宝物だった。」


 ミヤビもうなずく。


「恋人だった頃も。」


「夫婦になった時も。」


「幸せだった。」


「でも。」


「家族になってからは。」


「幸せが毎日少しずつ増えていく感じ。」


 ユウキは優しく手を握る。


「これからも。」


「ひまりの『初めて』を。」


「全部、一緒に見届けよう。」


「うん。」


「約束。」


 その夜。


 ベビーベッドでは、ひまりが安心したように眠っていた。


 ユウキはそっと毛布をかける。


「おやすみ。」


 ミヤビも優しく微笑む。


「また明日。」


 窓の外では春風が静かに吹いている。


 恋人として出会った二人。


 夫婦となり。


 父と母になり。


 そして家族三人で迎えた、たくさんの「初めて」。


 その一つひとつが、かけがえのない思い出になっていた。


 未来には、まだ知らない景色がたくさん待っている。


 入園式。


 運動会。


 卒業式。


 そして、大人になっていくひまりの姿。


 どんな未来でも、三人ならきっと笑顔で歩いていける。


 それが、この家族の変わらない願いだった。


第四期 完


「恋から始まった物語は、家族の愛へと育った。そして、幸せはこれからも毎日の中で続いていく。」

第五期予告「ひまりの成長物語」


幼稚園への入園、初めてできる友達、家族での旅行、そして新しい夢。すくすくと成長するひまりを見守りながら、ユウキとミヤビも親として成長していく。笑いあり、涙ありの家族の物語は、いよいよ感動の最終章・第五期へ。

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