第四期 第三話 「新しい命を迎える準備」
五月。
柔らかな風が窓から吹き込み、新居のリビングを優しく包んでいた。
結婚して一年。
そして、ミヤビのお腹には新しい命が宿っている。
妊娠七か月。
お腹は少しずつ大きくなり、赤ちゃんが元気に動くことも増えていた。
「ユウキ。」
ソファでくつろいでいたミヤビが優しく声をかける。
「今、動いたよ。」
「本当に?」
ユウキは慌てて隣へ座る。
「触ってみて。」
少し緊張しながらお腹へ手を添える。
その瞬間。
ぽこん。
小さな衝撃が手のひらに伝わった。
「……!」
ユウキは驚いて目を見開く。
「動いた。」
「元気だ。」
ミヤビは嬉しそうに笑った。
「最近、よく動くの。」
「パパが来たって分かったのかな。」
二人は顔を見合わせ、自然と笑顔になった。
休日。
二人はベビー用品店を訪れていた。
店内には小さな洋服やおもちゃ、ベビーカーが並んでいる。
「全部小さい。」
ユウキが思わずつぶやく。
「かわいいね。」
ミヤビは小さなベビー服を手に取った。
「これ、似合うかな。」
「絶対似合う。」
ユウキは即答する。
「まだ生まれてないよ?」
「でも似合う。」
真剣な表情に、ミヤビは思わず笑ってしまった。
二人はベビーベッドやチャイルドシートも見て回る。
「安全第一だから。」
ユウキは説明書を熱心に読んでいる。
「営業課長らしい。」
ミヤビが笑う。
「ちゃんと比較しないと。」
「頼もしい。」
ミヤビは安心したように微笑んだ。
数日後。
休日の午後。
届いたベビーベッドを二人で組み立てる。
「このネジかな?」
「説明書にはこっちって書いてある。」
ユウキは工具を持ちながら悪戦苦闘していた。
「完成!」
一時間後。
ようやくベビーベッドが完成した。
「お疲れさま。」
ミヤビが拍手をする。
「達成感あるね。」
「営業の資料を作るより難しかったかも。」
「ふふっ。」
二人は笑い合った。
完成したベビーベッドを見つめながら、ミヤビが静かにつぶやく。
「ここで眠るんだね。」
「うん。」
「もうすぐ会える。」
ユウキは優しくベッドをなでる。
「まだ実感が湧かない時もあるけど。」
「少しずつ父親になる準備をしてる気がする。」
「私も。」
「母親になるって、少し不安。」
ユウキはそっとミヤビの手を握った。
「大丈夫。」
「一人じゃない。」
「二人で育てよう。」
その言葉に、ミヤビは安心したようにうなずいた。
「ありがとう。」
夜。
二人は赤ちゃんの名前候補を書いたノートを広げる。
「いっぱいあるね。」
「男の子でも。」
「女の子でも。」
「どっちでも元気なら十分。」
ユウキは笑う。
「でも。」
「この子が大きくなった時に、名前を好きになってくれたら嬉しい。」
ミヤビもうなずいた。
「二人で、ゆっくり考えよう。」
眠る前。
ユウキはミヤビのお腹へ優しく話しかける。
「こんばんは。」
「パパです。」
「ママと一緒に、君に会える日を楽しみにしてるよ。」
ミヤビも優しく微笑む。
「元気に生まれてきてね。」
「みんな待ってるよ。」
窓の外では、満月が静かに輝いていた。
まだ姿は見えない小さな命。
けれど、その存在は確かに二人の未来を照らしていた。
家族になる日まで、あと少し。
二人は期待と少しの不安を胸に、新しい命を迎える準備を少しずつ進めていくのだった。




