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第四期 第二話 「初めてのエコー写真」

挿絵(By みてみん)


四月。


 桜が満開を迎えた頃。


 今日は、ミヤビの定期健診の日だった。


 ユウキは仕事を半日休み、一緒に病院へ向かう。


「ありがとう。」


 ミヤビが歩きながら言う。


「仕事、大丈夫だった?」


「もちろん。」


 ユウキは笑顔で答えた。


「今日の方が何倍も大事だから。」


 その言葉に、ミヤビは少し照れながら微笑んだ。


 病院の待合室。


 初めて訪れた時よりも、二人の表情は少し落ち着いていた。


 それでも、どこか緊張している。


「ユウキ。」


「うん?」


「少しドキドキする。」


「俺も。」


 二人は手をつなぎながら、自分たちの名前が呼ばれるのを待った。


「ユウキさんもどうぞ。」


 診察室で医師に声をかけられ、ユウキも中へ入る。


 照明が少し落とされ、モニターの電源が入る。


「今日は赤ちゃんの様子を確認していきますね。」


 医師が穏やかに説明する。


 二人は静かに画面を見つめた。


 モニターに、小さな命が映し出される。


「こちらが赤ちゃんです。」


 医師が画面を指さす。


「……。」


 二人とも言葉が出なかった。


 まだとても小さい。


 それでも、確かにそこに命があった。


「心臓も元気に動いていますよ。」


 医師の言葉とともに、小さく規則正しい鼓動が聞こえてくる。


 トク、トク、トク……。


 静かな診察室に、その音だけが響いた。


 ミヤビの目に涙が浮かぶ。


「本当に……。」


「ここにいるんだ。」


 ユウキも画面を見つめたまま、小さくつぶやく。


「すごい。」


「本当に赤ちゃんなんだ。」


 胸が熱くなる。


 嬉しさと感動で、言葉が見つからなかった。


 診察を終えると、医師が一枚の写真を手渡してくれた。


「エコー写真です。」


「大切な記念になりますよ。」


「ありがとうございます。」


 二人はそっと受け取る。


 白黒の小さな写真。


 そこには、確かに新しい家族の姿が写っていた。


 病院を出ると、春風が優しく吹いていた。


 二人は近くの公園へ立ち寄る。


 満開の桜の下のベンチに腰掛け、エコー写真をもう一度見つめる。


「かわいい。」


 ミヤビが微笑む。


「まだ顔も分からないのに。」


「もうかわいい。」


 ユウキも笑った。


「親ばか第一号かな。」


「まだ早いよ。」


 二人は声を上げて笑う。


 しばらく桜を眺めながら話をする。


「今日。」


 ユウキが静かに言う。


「初めて実感した。」


「何を?」


「俺、本当にお父さんになるんだ。」


 ミヤビは優しくうなずく。


「私も。」


「『お母さんになる』って。」


「少しずつ実感してきた。」


 帰り道。


 ベビー用品店の前を通る。


 小さな服や靴がショーウィンドウに並んでいた。


「こんなに小さいんだ。」


 ユウキが驚く。


「本当に。」


 ミヤビも目を細める。


「まだ買うのは早いかな。」


「うん。」


「でも。」


「見るだけでも楽しい。」


 二人はしばらく店内を歩き、小さなベビー服を見つめながら未来を想像した。


 夜。


 新居へ帰ると、エコー写真をフォトフレームに入れ、リビングの棚へ飾る。


「ここなら毎日見られるね。」


 ミヤビが嬉しそうに言う。


「うん。」


 ユウキもうなずく。


「これから少しずつ大きくなっていくんだな。」


 二人は写真を見つめながら、静かに笑った。


 眠る前。


 ユウキはミヤビのお腹へ優しく手を添える。


「今日は会えたね。」


 もちろん返事はない。


 それでも、そこには確かな命がある。


「元気に育ってね。」


 ミヤビも微笑みながら言った。


「また次の健診で会おうね。」


 春の夜は静かだった。


 その静けさの中で、小さな命は今日も少しずつ成長している。


 夫婦だった二人は、少しずつ「父」と「母」になっていくのだった。

次回予告 第四期 第三話「名前を考える夜」


赤ちゃんの成長を喜ぶユウキとミヤビは、少しずつ名前について話し始める。「男の子だったら?」「女の子だったら?」。辞典や本を広げながら、まだ見ぬわが子への願いを込めた名前を探す、心温まる夜。

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