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第一期 第四話 「初めての映画デート?」

挿絵(By みてみん)


土曜日の朝。


 サークル「オタクっ子集まれ」のグループチャットには、今日公開の劇場版アニメの話題で盛り上がっていた。


タクミ

「十三時からの回、楽しみ!」


リク

「ポップコーンは塩派!」


ミヤビ

「グッズも見たいですね!」


 ユウキもスマートフォンを見ながら笑顔になる。


 今日はサークル全員で映画を観る予定だった。


 しかし、その数時間後――。


ケンジ

「ごめん! 急に休日出勤になった!」


ソウタ

「子どもの行事で行けなくなった……」


ユイ

「体調崩しちゃいました」


 次々とキャンセルの連絡が入る。


 気づけば、参加できるのは二人だけになっていた。


 ユウキはミヤビへメッセージを送る。


「二人だけになっちゃいましたね。」


 すぐに返信が届く。


「せっかくなので行きませんか?」


 その一文を見て、ユウキは自然と笑みを浮かべた。


「もちろん。」


 大阪・難波。


 映画館のロビーは、多くのアニメファンで賑わっていた。


 公開初日ということもあり、作品のグッズを手にした人たちが行き交う。


「お待たせしました。」


 振り返ると、ミヤビが軽く手を振っていた。


 今日は淡いピンク色のブラウスに白いロングスカート。


 清楚な雰囲気がよく似合っている。


「こんにちは。」


「こんにちは。」


 二人は並んでチケットを受け取り、売店へ向かった。


「ポップコーン、どうします?」


「一つを二人で食べませんか?」


「いいですね。」


 ドリンクも購入し、上映開始までの時間をロビーで過ごす。


「この作品、原作は全部読みました?」


 ミヤビが尋ねる。


「もちろん。」


「結末は知ってるんですよね?」


「知ってます。」


「それでも楽しみです。」


「映像化されると、また違いますからね。」


 二人は期待に胸を膨らませながら劇場へ入っていった。


 上映終了。


 館内が明るくなる。


 二人ともすぐには立ち上がれなかった。


「……泣きました。」


 ミヤビが目元をハンカチで押さえる。


「俺もです。」


 クライマックスのシーンが頭から離れない。


「原作を知ってても泣けるなんて、すごい作品ですね。」


「演出も音楽も最高でした。」


 映画館を出ても、二人の会話は止まらなかった。


 近くのカフェに入り、感想を語り合う。


「あのラストシーン、私は原作より好きでした。」


「分かります。」


「主人公の表情がすごく良かったですよね。」


「声優さんの演技も最高でした。」


 二時間近く語り続けても、話題は尽きなかった。


 好きな作品を語り合える相手がいる。


 それだけでこんなにも楽しいのかと、ユウキは改めて感じていた。


 少し話題が落ち着いた頃。


 ミヤビがコーヒーカップを見つめながら、小さく言った。


「ユウキさん。」


「はい?」


「恋愛って……難しいですよね。」


 突然の話題に、ユウキは少し驚く。


「そうですね。」


「私、もう何年も恋人がいなくて。」


「実は俺もです。」


「そうなんですか?」


「仕事ばかりでした。」


 ミヤビは小さく笑った。


「私も趣味ばかりでした。」


 二人は思わず笑い合う。


「学生の頃は、恋人ができたらアニメを見る時間が減るって思ってました。」


「俺も似たようなこと考えてました。」


「でも……。」


 ミヤビは少し照れたように続ける。


「同じ趣味なら、一緒に楽しめますよね。」


「そうですね。」


 ユウキは自然に答えた。


「一緒に映画を観たり、イベントへ行ったり。」


「そんな関係、いいなって思います。」


 その言葉を聞いて、ミヤビは優しく微笑んだ。


 夕方。


 二人は難波の街をゆっくり歩いていた。


 休日の人混みの中でも、不思議と居心地が良い。


「今日は本当に楽しかったです。」


「俺もです。」


「また映画、一緒に観ましょう。」


「もちろん。」


 駅の改札前で立ち止まる。


 別れ際、ミヤビが少しだけ名残惜しそうな表情を浮かべた。


「次は……」


「はい?」


「映画じゃなくても、一緒に出かけたいです。」


 その一言に、ユウキの胸が少しだけ高鳴る。


「ぜひ。」


 短い返事だった。


 けれど、その言葉には自然な笑顔が添えられていた。


「じゃあ、また連絡しますね。」


「はい。」


 二人は手を振り合い、それぞれの改札へ向かう。


 帰宅したユウキは、ソファに座って今日一日を思い返していた。


(今日はサークルじゃなくて、完全に二人だったな。)


 映画を観て。


 食事をして。


 街を歩いて。


 気づけば、時間はあっという間に過ぎていた。


 スマートフォンを見ると、ミヤビからメッセージが届いていた。


「今日はありがとうございました

また一緒にお出かけしてください。」


 ユウキは少し照れながら返信する。


「こちらこそ。また行きましょう。」


 送信ボタンを押したあと、自然と笑みがこぼれた。


 まだ「好き」という言葉にはなっていない。


 けれど、お互いに「もっと一緒にいたい」と思い始めていることだけは、確かだった。

次回予告 第五話「雨の日の相合い傘」


仕事帰り、突然の夕立に見舞われたユウキ。駅前で立ち尽くしていると、偶然ミヤビと再会する。一本の傘を分け合って歩く帰り道、これまでよりも近い距離に、お互いの鼓動は少しずつ速くなっていく。二人の関係が、友達から特別な存在へと変わり始める雨の日の物語。

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