第三期 第十一話 「新婚旅行」
九月。
結婚式から一週間。
少しずつ日常が戻り始めた頃、ユウキとミヤビは以前から楽しみにしていた新婚旅行へ出発した。
「忘れ物ない?」
玄関でユウキがスーツケースを確認する。
「うん、大丈夫。」
ミヤビも笑顔でうなずいた。
結婚式の準備が終わってから初めて、時間に追われることなく過ごせる休日だった。
新幹線の車窓から景色を眺めながら、ミヤビが小さく笑う。
「旅行って、出発した瞬間から楽しいね。」
「そうだね。」
ユウキもコーヒーを片手に外を見つめる。
「結婚して初めての旅行か。」
「新婚旅行。」
その言葉を口にするだけで、二人とも少し照れくさくなった。
目的地へ到着すると、美しい海と緑豊かな景色が二人を迎えてくれた。
「空気がおいしい。」
ミヤビが大きく深呼吸をする。
「大阪とはまた違う雰囲気だね。」
ユウキも穏やかに笑う。
二人は海辺をゆっくり歩き、景色を写真に収めた。
「この写真、家に飾ろう。」
「いいね。」
「旅行の思い出がまた一つ増える。」
昼食は地元の食材を使った料理を楽しんだ。
「おいしい。」
「これは家でも作ってみたい。」
ミヤビが嬉しそうに言う。
「じゃあ帰ったら挑戦してみよう。」
「ユウキも手伝ってね。」
「もちろん。」
夫婦になっても、こうした何気ない約束が増えていく。
午後は展望台へ向かった。
青い空と海がどこまでも広がっている。
「すごい景色……。」
ミヤビは感動したようにつぶやく。
ユウキは隣に立ち、同じ景色を見つめた。
「きれいだね。」
「うん。」
「でも。」
ミヤビは少し照れながら笑う。
「一番嬉しいのは、この景色をユウキと見られること。」
ユウキは優しく微笑んだ。
「俺も同じ。」
夕方。
二人は海の見えるホテルへチェックインした。
部屋の窓いっぱいに夕焼けが広がる。
「ここで夕日を見るなんて贅沢だね。」
「時間がゆっくり流れてる気がする。」
ソファに並んで座り、静かに景色を眺める。
忙しかった結婚式の準備が、遠い昔のように感じられた。
夕食はホテルのレストラン。
窓の外には夜の海が静かに広がっている。
「乾杯。」
二人はグラスを軽く合わせた。
「結婚、おめでとう。」
ユウキが笑う。
ミヤビも笑顔で応える。
「ユウキも、おめでとう。」
二人は思わず笑い合った。
食後、ホテルのテラスへ出る。
夜空にはたくさんの星が輝いていた。
「きれい。」
ミヤビが空を見上げる。
ユウキも隣に立つ。
「これからの夢、ある?」
ユウキが静かに尋ねる。
ミヤビは少し考えてから答えた。
「毎日笑って過ごしたい。」
「仕事も頑張って。」
「休日は一緒にアニメを観て。」
「ときどき旅行に来て。」
「そんな普通の毎日が続いたら幸せ。」
ユウキはゆっくりとうなずく。
「俺も同じだ。」
「それと。」
「いつか家族が増えたら。」
「みんなで同じ景色を見に来たい。」
ミヤビは嬉しそうに微笑んだ。
「うん。」
「きっと来よう。」
部屋へ戻ると、窓の外では波の音が静かに響いていた。
二人は今日撮った写真を見返しながら、思い出を語り合う。
「この写真、お気に入り。」
「笑いすぎてるね。」
「楽しかったから。」
ページをめくるたびに、自然と笑顔になる。
眠る前。
ユウキはベッドサイドのライトを消す前に、小さくつぶやいた。
「結婚してよかった。」
ミヤビも穏やかに答える。
「私も。」
「これからも、たくさん思い出を作ろう。」
「うん。」
二人は手を重ね、静かに目を閉じる。
新婚旅行の一日は、特別な観光だけではなく、夫婦として同じ未来をゆっくり語り合えた、大切な時間となった。
次回予告 第三期 第十二話「新しい家族を夢見て」
新婚旅行から戻り、穏やかな日常を過ごすユウキとミヤビ。友人夫婦の赤ちゃんと触れ合う機会があり、二人は「いつか自分たちにも子どもができたら」と自然に語り始める。夫婦として、新しい夢がまた一つ生まれる。




