第三期 第十話 「夫婦になった日」
結婚式を終えた夕方。
ユウキとミヤビは、たくさんの祝福に見送られながら新居へ戻ってきた。
玄関の前で顔を見合わせる。
「……帰ってきたね。」
ユウキが静かに言う。
ミヤビは優しく微笑んだ。
「うん。」
「私たちの家に。」
ユウキが鍵を開け、玄関のドアをゆっくりと開く。
「ただいま。」
自然と口からこぼれた言葉だった。
一拍置いて、ミヤビが笑顔で答える。
「おかえり。」
その何気ないやり取りが、今日は特別に感じられた。
今日から二人は恋人でも婚約者でもない。
夫婦として、この家で新しい毎日を積み重ねていく。
リビングには、結婚式で贈られた花束や記念品が並んでいた。
「すごい量だね。」
ミヤビが苦笑する。
「みんな、本当に祝ってくれたんだな。」
ユウキも花束をそっとテーブルへ置く。
その隣には、披露宴で上映されたサプライズムービーのデータが入ったUSBメモリー。
「あとでまた見よう。」
「うん。」
二人は笑顔でうなずいた。
少し落ち着いたところで、ソファへ並んで座る。
静かな時間が流れる。
「終わっちゃったね。」
ミヤビがぽつりと言う。
「そうだね。」
「でも。」
ユウキは穏やかに笑った。
「今日がゴールじゃない。」
「ここからがスタートだ。」
ミヤビはその言葉を聞いて、小さくうなずいた。
「夫婦一年目。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
二人は照れながら笑い合った。
夜。
冷蔵庫を開けると、まだ食材はほとんど入っていない。
「今日は簡単にしようか。」
ユウキが提案する。
「賛成。」
二人は近くのスーパーへ歩いて向かった。
結婚式のタキシードやドレスではなく、いつもの私服姿。
それなのに、左手の結婚指輪が少しだけ昨日までとは違って見えた。
「何を買う?」
「今日は疲れたから、お鍋にしない?」
「いいね。」
「野菜もたくさん食べよう。」
買い物かごを一緒に持ちながら歩く。
そんな日常が、もう始まっていた。
帰宅後。
二人で鍋を囲む。
「いただきます。」
「いただきます。」
豪華な披露宴の料理も素敵だった。
けれど、二人だけで囲む温かい鍋にも、違う幸せがあった。
「やっぱり落ち着くね。」
ミヤビが笑う。
「俺も。」
「こういう時間が一番好きかもしれない。」
食後。
披露宴でもらったアルバムを開く。
「見て。」
ミヤビが写真を指差す。
「この時、タクミさん泣いてる。」
「本当だ。」
二人は思わず笑った。
ページをめくるたびに、家族や友人の笑顔が映っている。
「こんなにたくさんの人に支えられてたんだね。」
ミヤビが静かにつぶやく。
「うん。」
「これからは、俺たちも誰かを支えられる夫婦になりたい。」
「私も。」
二人はアルバムを大切に閉じた。
夜も更け、寝室へ向かう前。
リビングの窓から大阪の夜景を眺める。
「ユウキ。」
「うん?」
「今日から名字が変わったんだよね。」
「そうだね。」
ミヤビは少し照れくさそうに笑う。
「まだ実感がない。」
「そのうち慣れるよ。」
ユウキも笑った。
「俺も少し不思議な感じがする。」
眠る前。
ベッドサイドのライトだけが優しく部屋を照らしていた。
「今日は、本当に幸せだった。」
ミヤビが静かに言う。
「俺も。」
「でも。」
ユウキは優しく続ける。
「明日からは、もっと幸せな毎日を作っていこう。」
ミヤビは微笑みながらうなずく。
「うん。」
「一緒に。」
二人はそっと手を重ねる。
言葉は多くなくても、その温もりだけで十分だった。
恋人として出会い。
婚約者として未来を誓い。
そして今日、夫婦になった。
これから始まる何気ない毎日こそが、二人にとって何より大切な物語になっていく。
次回予告 第三期 第十一話「新婚旅行」
結婚式から数日後、ユウキとミヤビは以前から楽しみにしていた新婚旅行へ出発する。美しい景色、おいしい料理、そして二人だけの穏やかな時間。旅先で語り合う「これからの夢」が、夫婦としての絆をさらに深めていく。




