第三期 第九話 「結婚式」
八月。
青く澄み渡る空。
朝から眩しい日差しが、大阪の街を照らしていた。
今日は、ユウキとミヤビの結婚式。
二人が初めて出会ってから約三年。
たくさんの思い出を積み重ね、この日を迎えた。
控室。
ユウキはネイビーのタキシード姿で鏡の前に立っていた。
ネクタイを整えながら、大きく深呼吸をする。
「緊張してる?」
控室を訪れたタクミが笑いながら声をかける。
「かなり。」
ユウキは苦笑した。
「営業のプレゼンでも、ここまで緊張したことはない。」
「そりゃそうだ。」
タクミは肩を軽く叩く。
「今日は人生で一番大事なイベントだからな。」
二人は笑い合った。
一方、ブライズルーム。
ミヤビは純白のウェディングドレスに身を包み、鏡の前へ立っていた。
ヘアメイクも終わり、ベールが静かに揺れる。
「とてもお似合いですよ。」
スタッフが優しく微笑む。
「ありがとうございます。」
少し緊張した表情だったが、その瞳には幸せがあふれていた。
母がそっと隣へ立つ。
「きれい。」
「ありがとう。」
ミヤビは照れながら笑う。
「お母さん。」
「今まで育ててくれて、本当にありがとう。」
母は目を潤ませながら、娘の手を握った。
「こちらこそ。」
「幸せになってね。」
二人は静かに抱き合った。
チャペル。
参列者が席に着き、静かなオルガンの音色が響く。
ユウキは祭壇の前で待っていた。
扉がゆっくり開く。
父親と腕を組み、ミヤビが一歩ずつバージンロードを歩いてくる。
その姿を見た瞬間、ユウキは息をのんだ。
(……きれいだ。)
試着のとき以上に美しかった。
涙をこらえながら、ミヤビもユウキを見つめる。
ゆっくりと歩み寄り、祭壇で向かい合う。
牧師の言葉が静かに響く。
「健やかなる時も、病める時も。」
「互いを敬い、愛し合うことを誓いますか。」
「はい。」
ユウキが力強く答える。
「はい。」
ミヤビもまっすぐ前を見て答えた。
指輪の交換。
少し震える手で、お互いの薬指へ結婚指輪をはめる。
ペアリングの隣で、新しい指輪が静かに輝いた。
そして。
「誓いのキスを。」
二人は照れながら微笑み合い、そっと額を寄せ合い、短く優しい口づけを交わした。
会場は温かな拍手に包まれる。
式が終わり、披露宴。
乾杯のあと、友人代表としてタクミがマイクを握った。
「ユウキさん。」
「最初にアニソンバーでミヤビさんと出会ったって聞いた時。」
「正直、こんな未来になるとは思ってませんでした。」
会場に笑いが起こる。
「でも。」
「二人を見ていると。」
「同じ趣味って、人をここまで幸せにするんだなって思います。」
「これからも、お二人らしく笑顔いっぱいの家庭を築いてください。」
大きな拍手が送られた。
披露宴の後半。
照明が少し暗くなる。
「ここで、ご友人の皆さまからサプライズがあります。」
司会者の声。
ユウキとミヤビは顔を見合わせる。
「え?」
スクリーンに映像が流れ始めた。
タイトルは――
『オタクっ子集まれ ~三年間の軌跡~』
初めての飲み会。
聖地巡礼。
映画。
夏祭り。
水族館。
クリスマス。
婚約。
新居。
たくさんの写真と動画が流れていく。
最後の画面には、大きくこう映し出された。
『出会ってくれてありがとう。末永くお幸せに。』
会場中が拍手に包まれる。
ミヤビは涙を流しながら笑っていた。
ユウキも目頭を押さえる。
「みんな……。」
披露宴の終盤。
ユウキはマイクを受け取り、ゆっくりと話し始める。
「今日ここに来てくださった皆さま。」
「本当にありがとうございます。」
「三年前。」
「一人でアニメを楽しんでいた僕が。」
「まさか今日、人生で一番大切な人と、この場所に立っているとは思っていませんでした。」
ミヤビの方を見る。
「ミヤビ。」
「出会ってくれてありがとう。」
「これからも。」
「笑顔の絶えない家庭を一緒につくっていこう。」
ミヤビは涙をぬぐいながら、大きく頷いた。
「はい。」
披露宴が終わり、会場を出る。
青空の下。
参列者たちが花びらをまく中、二人は並んで歩いた。
「おめでとう!」
「幸せになってね!」
祝福の声が響く。
ユウキとミヤビは笑顔で手を振り返した。
恋人として歩いた日々。
婚約者として準備した日々。
そのすべてが、この瞬間につながっていた。
今日から二人は、正式に夫婦となる。
人生という長い物語を、同じ歩幅で歩き始めるために。
次回予告 第三期 第十話「夫婦になった日」
結婚式を終え、新居へ帰ってきたユウキとミヤビ。少し照れながら「夫婦」として迎える最初の夜、そして初めて交わす「おかえり」と「ただいま」。新婚生活が、いよいよ本格的に始まる。




