第三期 第十二話 「新しい家族を夢見て」
十月。
新婚旅行から戻って数週間。
ユウキとミヤビは、穏やかな新婚生活を送っていた。
平日は仕事へ行き、夜は一緒に夕食を囲み、休日はアニメを観たり、近所を散歩したりする。
特別ではない毎日。
それでも二人にとっては、かけがえのない時間だった。
ある土曜日。
サークル「オタクっ子集まれ」の集まりが開かれていた。
会場は、いつもの居酒屋ではなく、タクミの自宅。
「いらっしゃい!」
玄関で迎えてくれたタクミの腕の中には、小さな赤ちゃんがいた。
「この子が……。」
ミヤビが目を輝かせる。
「そう。」
タクミが優しく笑う。
「先月生まれた娘。」
「おめでとう!」
ユウキとミヤビは声をそろえて祝福した。
リビングでは、サークルの仲間たちが赤ちゃんを囲んで笑っていた。
「かわいい。」
ユイが頬を緩める。
「寝顔が天使。」
リクも優しくのぞき込む。
ミヤビは少し緊張しながら、タクミに声をかけた。
「抱っこしてもいい?」
「もちろん。」
そっと腕の中へ迎えた赤ちゃんは、小さな手をぎゅっと握った。
「……。」
ミヤビは思わず笑顔になる。
「温かい。」
「軽い。」
「かわいい……。」
その穏やかな表情を見て、ユウキも自然と笑みを浮かべた。
しばらくすると、赤ちゃんはユウキの指を小さな手で握った。
「おっ。」
ユウキは驚きながらも優しく指を添える。
「俺の指、握ってる。」
「気に入られたんじゃない?」
ミヤビが笑う。
「そうだったら嬉しいな。」
赤ちゃんは安心したように小さく笑った。
部屋中が温かな空気に包まれる。
帰り道。
二人は秋風の吹く公園をゆっくり歩いていた。
「今日は幸せな時間だったね。」
ミヤビが静かに言う。
「うん。」
ユウキもうなずく。
「タクミが、お父さんの顔になってた。」
「本当に。」
二人は笑い合う。
ベンチに腰掛ける。
金木犀の香りが風に乗って漂ってきた。
「ユウキ。」
「うん?」
「今日ね。」
「赤ちゃんを抱っこして。」
「少しだけ想像しちゃった。」
「何を?」
「いつか。」
「私たちにも子どもができたらって。」
ユウキは静かにミヤビの言葉を受け止めた。
「俺も。」
「同じこと考えてた。」
「もし子どもができたら。」
ユウキが笑う。
「休日は家族みんなで公園へ行って。」
「夜は一緒にアニメ映画を観よう。」
ミヤビも楽しそうに続ける。
「絵本もたくさん読んであげたい。」
「運動会の応援にも行きたい。」
「誕生日には手作りのケーキを作って。」
「家族旅行にも毎年行こう。」
未来の話は尽きなかった。
しばらく話したあと、ミヤビが優しく言う。
「もちろん。」
「子どもができることを急ぐつもりはないよ。」
「うん。」
ユウキも穏やかに答える。
「今は、夫婦としての毎日を大切にしたい。」
「その先で。」
「もし新しい家族を迎えられたら。」
「その時は、二人で力を合わせよう。」
ミヤビは笑顔でうなずいた。
「うん。」
「きっと大丈夫。」
夜。
新居へ帰ると、ソファに並んで座り、今日撮った写真を見返す。
赤ちゃんを抱いて笑うミヤビ。
指を握られて照れ笑いするユウキ。
「いい写真。」
ミヤビが微笑む。
「タクミにも送ってもらおう。」
「そうだね。」
寝る前。
ユウキはリビングの窓から夜景を眺めながら、小さくつぶやく。
「家族って、少しずつ増えていくものなんだな。」
ミヤビは隣へ並び、そっとユウキの手を握る。
「焦らなくていい。」
「でも。」
「いつか、その日が来たら。」
「笑顔いっぱいの家にしよう。」
ユウキは力強くうなずいた。
「約束。」
二人の未来には、また一つ新しい夢が加わった。
それは、まだ見ぬ小さな家族と、たくさんの笑顔があふれる温かな毎日だった。
次回予告 第三期 最終話「幸せのはじまり」
結婚して初めて迎える結婚記念日。ユウキとミヤビは、初めて出会ったアニソンバー「Sirius」を訪れ、この三年間を振り返る。そして「ここからが、本当の幸せの始まりだね」と笑い合う二人。夫婦編の感動のフィナーレが幕を開ける。




