第三期 第七話 「結婚式まであと一か月」
七月。
朝から蝉の鳴き声が響く大阪。
リビングのカレンダーには、大きな赤い丸が付けられていた。
「結婚式まで、あと一か月」
その文字を見つめながら、ミヤビが小さく息を吐く。
「本当に、もうすぐなんだね。」
キッチンでコーヒーを淹れていたユウキも振り返り、笑顔でうなずいた。
「あっという間だった。」
朝食を食べながら、二人はテーブルいっぱいに広げた資料を確認する。
招待状の返信はほぼ揃い、席順表や進行表も少しずつ完成に近づいていた。
「タクミは一番前のテーブルだね。」
ユウキが名簿を見ながら言う。
「サークルのみんなも同じテーブルにしよう。」
ミヤビが提案する。
「その方が楽しめそう。」
「賛成。」
二人は笑顔でペンを走らせた。
その日の午後。
式場で最終打ち合わせが行われた。
「こちらが当日のスケジュールです。」
プランナーが丁寧に説明してくれる。
入場。
誓いの言葉。
指輪の交換。
披露宴。
友人代表スピーチ。
花束贈呈。
一つひとつ確認するたびに、結婚式が現実味を帯びてくる。
「緊張してきた?」
ミヤビが小声で尋ねる。
「少し。」
ユウキが苦笑する。
「営業のプレゼンとは違う緊張だ。」
「私も。」
二人は顔を見合わせて笑った。
その頃。
サークル「オタクっ子集まれ」のグループチャットでは、ある計画が進んでいた。
タクミ
「結婚式、普通に出席するだけじゃ面白くないよな。」
ユイ
「サプライズしたい!」
リク
「二人の思い出をまとめた動画とか?」
ケンジ
「いいね!」
タクミ
「じゃあ俺が編集する!」
グループ全員が賛成し、ユウキとミヤビには内緒のプロジェクトが始まった。
夜。
新居では、招待状の返信を一枚ずつ確認していた。
「みんな来てくれるね。」
ミヤビが嬉しそうに言う。
「ありがたいな。」
ユウキもうなずく。
中には手書きのメッセージも添えられていた。
『二人の晴れ姿を楽しみにしています。』
『末永くお幸せに。』
読むたびに、胸が温かくなる。
片付けを終えたあと。
二人はソファに並んで座る。
少し疲れた表情をしていたが、その顔には充実感もあった。
「準備、大変だったね。」
ミヤビが言う。
「でも。」
「全部、一緒だった。」
ユウキは静かに笑う。
「一人だったら、きっと途中で頭がいっぱいになってた。」
「俺も。」
「ミヤビがいてくれたから。」
「ここまで来られた。」
ミヤビは少し照れながら、ユウキの肩にもたれかかった。
「結婚式が終わったら。」
「うん?」
「少しゆっくりしたいね。」
「旅行も行こう。」
「新婚旅行。」
「楽しみ。」
二人は未来の予定を話しながら笑い合う。
その夜。
眠る前。
ベッドサイドに置かれた結婚式のしおりを見つめながら、ユウキは静かにつぶやいた。
「あと一か月。」
ミヤビも小さく微笑む。
「今でも信じられない。」
「一年前は恋人になったばかりだったのに。」
「本当だ。」
ユウキは優しく手を重ねる。
「でも。」
「これまで積み重ねてきた時間があったから。」
「今がある。」
「うん。」
二人は手をつないだまま目を閉じる。
結婚式まで、あと一か月。
期待と少しの緊張を胸に、二人は人生で最も幸せな一日へ向けて、また一歩前へ進んでいく。
次回予告 第三期 第八話「独身最後の夜」
結婚式を翌日に控えたユウキとミヤビ。それぞれ実家で家族と過ごす「独身最後の夜」。両親への感謝、これまでの思い出、そして新しい人生への決意を胸に、静かに明日を迎える。二人にとって忘れられない一夜が始まる。




