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第三期 第六話 「一緒に迎える朝」

挿絵(By みてみん)


六月。


 新居で迎える、初めての月曜日。


 カーテンの隙間から、柔らかな朝日がリビングへ差し込んでいた。


 静かな部屋に響くのは、小鳥のさえずりと目覚まし時計の音。


「……ん。」


 ユウキはゆっくりと目を開けた。


 見慣れない天井。


 けれど、すぐに思い出す。


(そうか。)


(ここが、これから帰ってくる家なんだ。)


 リビングからは、小さな物音が聞こえてきた。


「おはよう。」


 キッチンへ向かうと、エプロン姿のミヤビがフライパンを手に振り返る。


「あ、おはよう。」


 少し寝ぐせのついた髪のまま笑うユウキを見て、ミヤビは思わず笑ってしまう。


「まだ眠そう。」


「昨日、荷ほどき頑張りすぎたかな。」


「ふふっ。」


 穏やかな笑い声が新しい家に響いた。


 朝食はトースト、スクランブルエッグ、サラダ、そして温かいスープ。


「いただきます。」


「いただきます。」


 二人で食卓を囲む。


「こうして一緒に朝ご飯を食べるの、なんだか新鮮。」


 ミヤビが微笑む。


「今までは待ち合わせして会ってたもんね。」


 ユウキも頷く。


「『おはよう』から始まる一日って、いいな。」


 しかし、その穏やかな時間は長く続かなかった。


 時計を見ると、出発まであと十五分。


「えっ!」


 ユウキが声を上げる。


「もうこんな時間!?」


 ミヤビも時計を見て目を丸くする。


「ゆっくりしすぎちゃった!」


 二人は顔を見合わせたあと、一斉に立ち上がる。


「お弁当!」


「俺が詰める!」


「水筒お願い!」


「了解!」


 キッチンでは、まるで息の合ったチームのように動き回る。


 ユウキがお弁当箱におかずを詰める間に、ミヤビがコーヒーを淹れる。


「ハンカチ持った?」


「持った!」


「社員証は?」


「……あ。」


「玄関!」


 二人は思わず笑ってしまう。


 なんとか予定通りに家を出ることができた。


 マンションのエントランスを出ると、爽やかな朝の風が吹く。


「間に合ったね。」


 ミヤビがほっと息をつく。


「初日から遅刻しなくてよかった。」


 ユウキも笑う。


 駅までの道を並んで歩く。


 以前は別々の家から向かっていた道。


 今は同じ家から一緒に歩いている。


 その変化が嬉しかった。


 駅前で立ち止まる。


 二人は通勤路が少しだけ違う。


「じゃあ、行ってきます。」


 ミヤビが笑顔で言う。


「行ってらっしゃい。」


 ユウキも優しく答える。


「ユウキも。」


「今日も一日頑張って。」


「ミヤビもね。」


 短い会話。


 でも、その一言だけで元気が湧いてくる。


 その日の夜。


 ユウキが仕事を終えて帰宅すると、部屋からカレーの香りが漂ってきた。


「ただいま。」


 玄関のドアを開ける。


 すると。


「おかえり!」


 キッチンからミヤビが笑顔で顔を出した。


 その一言だけで、一日の疲れがすっと軽くなる。


「ただいま。」


 自然と笑顔になる。


 夕食を食べながら、今日一日の出来事を話す。


「課長、最近楽しそうですねって部下に言われた。」


 ユウキが照れくさそうに話す。


「なんて答えたの?」


「『そう見える?』って。」


「本当だもん。」


 ミヤビがくすっと笑う。


「私も職場で、『最近笑顔が増えたね』って言われた。」


「そうなんだ。」


「うん。」


 二人は目を合わせて笑った。


 食後。


 ソファに並んで座り、録画していたアニメを一本観る。


 エンディングが流れる頃には、外はすっかり夜になっていた。


「こういう時間。」


 ミヤビがぽつりと言う。


「うん?」


「ずっと憧れてた。」


「仕事が終わって。」


「一緒にご飯を食べて。」


「一緒にアニメを観て。」


「『おやすみ』って言う。」


 ユウキは静かに頷く。


「特別なことは何もない。」


「でも。」


「これが一番幸せなんだね。」


 二人は自然と肩を寄せ合う。


 派手な出来事はなくてもいい。


 笑い合える朝があり、安心して帰れる夜がある。


 そんな何気ない日常こそが、二人にとって何より大切な宝物だった。

次回予告 第三期 第七話「結婚式まであと一か月」


結婚式まで、あと一か月。招待状の返信が届き始め、式の準備もいよいよ大詰めを迎える。そんな中、サークル「オタクっ子集まれ」の仲間たちは、二人へのサプライズを密かに計画していた。

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