表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/64

第三期 第五話 「新生活への引っ越し」

挿絵(By みてみん)


六月。


 青空が広がる休日。


 今日は、ユウキとミヤビにとって特別な日だった。


 新居への引っ越しの日である。


 朝早くから引っ越し業者のトラックが到着し、荷物が次々と運び込まれていく。


「思ったより荷物が多いね。」


 ミヤビが段ボールを見ながら笑う。


「ほとんど本だな。」


 ユウキも苦笑する。


「ライトノベルに漫画、それからBlu-ray……。」


「半分くらいは私かも。」


「いや、俺も同じくらいある。」


 二人は顔を見合わせ、大笑いした。


 新しいマンションのリビング。


 まだ家具は少なく、段ボールが積み重なっている。


 それでも大きな窓から差し込む光が部屋を明るく照らしていた。


「ここが、私たちの家。」


 ミヤビがゆっくり部屋を見渡す。


 ユウキも静かにうなずく。


「やっとここまで来たね。」


 午前中は荷ほどき。


「これは本棚へ。」


「食器はキッチン。」


「テレビはこの位置かな。」


 二人で相談しながら、一つずつ家具を配置していく。


 作業は大変だったが、不思議と疲れは感じなかった。


 どれも「二人の家」を作るための時間だったからだ。


 午後。


 ようやくソファとテレビの設置が終わる。


「記念すべき一本目は?」


 ユウキがリモコンを手に取る。


 ミヤビは少し考えてから笑う。


「やっぱり、二人が最初に好きって分かった作品。」


「賛成。」


 テレビには、二人をつないだ思い出のアニメが映し出される。


 ソファに並んで座り、顔を見合わせて笑った。


「ここから全部始まったんだね。」


「うん。」


 画面よりも、隣で笑う相手の方が気になってしまう。


 夕方。


 キッチンでは、初めて二人で夕食を作る。


「包丁お願い。」


「はい、料理長。」


「今日は助手だから。」


「昇格はいつ?」


「腕前次第。」


 そんなやり取りをしながら、笑い声が絶えない。


 出来上がったのは、ハンバーグとサラダ、そしてコンソメスープ。


「いただきます。」


「いただきます。」


 新しいダイニングテーブルで向かい合って食べる食事は、いつも以上においしく感じられた。


 夜。


 まだ片付いていない段ボールがいくつも残っている。


「今日はここまでにしようか。」


 ユウキが大きく伸びをする。


「うん。」


 ミヤビも少し疲れたように笑った。


 二人はリビングの床に座り、コンビニで買ってきたプリンを食べる。


「引っ越し祝い。」


 ユウキがスプーンを差し出す。


「乾杯の代わりだね。」


「そうだね。」


 甘いプリンを食べながら、部屋を見渡す。


 まだ完成していない部屋。


 それでも、ここには安心できる空気が流れていた。


「ユウキ。」


「うん?」


「ここが私たちの家なんだね。」


 その言葉に、ユウキは静かにうなずく。


「そうだね。」


「これから毎日。」


「『おはよう』って言って。」


「『いってらっしゃい』って送り出して。」


「『おかえり』って迎える。」


「そんな毎日が始まる。」


 ミヤビは嬉しそうに微笑んだ。


「ずっと憧れてた。」


 窓の外には、大阪の夜景が広がっていた。


 二人は並んでその景色を眺める。


「ありがとう。」


 ミヤビが小さく言う。


「何が?」


「この家を一緒に選んでくれて。」


「こちらこそ。」


「一緒に暮らそうって言ってくれてありがとう。」


 ユウキはそっとミヤビの手を握る。


「これから。」


「嬉しいことも、大変なこともあると思う。」


「でも。」


「全部、一緒に乗り越えよう。」


 ミヤビは力強くうなずいた。


「うん。」


「一緒なら大丈夫。」


 その夜。


 眠る前。


 リビングには、まだ開けていない段ボールが残っている。


 けれど、その段ボールさえも二人には未来への楽しみに見えた。


 少しずつ家具が増え、思い出が増え、この家が「帰りたい場所」になっていく。


 そう信じながら、二人は新しい生活の第一日目を迎えた。

次回予告 第三期 第六話「一緒に迎える朝」


新居で迎える初めての朝。寝坊して慌てて朝食を作るミヤビと、それを手伝うユウキ。慌ただしい朝も笑顔で乗り越える二人は、「一緒に暮らす幸せ」を少しずつ実感していく。何気ない日常こそが、かけがえのない宝物だと気づく物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ