第三期 第五話 「新生活への引っ越し」
六月。
青空が広がる休日。
今日は、ユウキとミヤビにとって特別な日だった。
新居への引っ越しの日である。
朝早くから引っ越し業者のトラックが到着し、荷物が次々と運び込まれていく。
「思ったより荷物が多いね。」
ミヤビが段ボールを見ながら笑う。
「ほとんど本だな。」
ユウキも苦笑する。
「ライトノベルに漫画、それからBlu-ray……。」
「半分くらいは私かも。」
「いや、俺も同じくらいある。」
二人は顔を見合わせ、大笑いした。
新しいマンションのリビング。
まだ家具は少なく、段ボールが積み重なっている。
それでも大きな窓から差し込む光が部屋を明るく照らしていた。
「ここが、私たちの家。」
ミヤビがゆっくり部屋を見渡す。
ユウキも静かにうなずく。
「やっとここまで来たね。」
午前中は荷ほどき。
「これは本棚へ。」
「食器はキッチン。」
「テレビはこの位置かな。」
二人で相談しながら、一つずつ家具を配置していく。
作業は大変だったが、不思議と疲れは感じなかった。
どれも「二人の家」を作るための時間だったからだ。
午後。
ようやくソファとテレビの設置が終わる。
「記念すべき一本目は?」
ユウキがリモコンを手に取る。
ミヤビは少し考えてから笑う。
「やっぱり、二人が最初に好きって分かった作品。」
「賛成。」
テレビには、二人をつないだ思い出のアニメが映し出される。
ソファに並んで座り、顔を見合わせて笑った。
「ここから全部始まったんだね。」
「うん。」
画面よりも、隣で笑う相手の方が気になってしまう。
夕方。
キッチンでは、初めて二人で夕食を作る。
「包丁お願い。」
「はい、料理長。」
「今日は助手だから。」
「昇格はいつ?」
「腕前次第。」
そんなやり取りをしながら、笑い声が絶えない。
出来上がったのは、ハンバーグとサラダ、そしてコンソメスープ。
「いただきます。」
「いただきます。」
新しいダイニングテーブルで向かい合って食べる食事は、いつも以上においしく感じられた。
夜。
まだ片付いていない段ボールがいくつも残っている。
「今日はここまでにしようか。」
ユウキが大きく伸びをする。
「うん。」
ミヤビも少し疲れたように笑った。
二人はリビングの床に座り、コンビニで買ってきたプリンを食べる。
「引っ越し祝い。」
ユウキがスプーンを差し出す。
「乾杯の代わりだね。」
「そうだね。」
甘いプリンを食べながら、部屋を見渡す。
まだ完成していない部屋。
それでも、ここには安心できる空気が流れていた。
「ユウキ。」
「うん?」
「ここが私たちの家なんだね。」
その言葉に、ユウキは静かにうなずく。
「そうだね。」
「これから毎日。」
「『おはよう』って言って。」
「『いってらっしゃい』って送り出して。」
「『おかえり』って迎える。」
「そんな毎日が始まる。」
ミヤビは嬉しそうに微笑んだ。
「ずっと憧れてた。」
窓の外には、大阪の夜景が広がっていた。
二人は並んでその景色を眺める。
「ありがとう。」
ミヤビが小さく言う。
「何が?」
「この家を一緒に選んでくれて。」
「こちらこそ。」
「一緒に暮らそうって言ってくれてありがとう。」
ユウキはそっとミヤビの手を握る。
「これから。」
「嬉しいことも、大変なこともあると思う。」
「でも。」
「全部、一緒に乗り越えよう。」
ミヤビは力強くうなずいた。
「うん。」
「一緒なら大丈夫。」
その夜。
眠る前。
リビングには、まだ開けていない段ボールが残っている。
けれど、その段ボールさえも二人には未来への楽しみに見えた。
少しずつ家具が増え、思い出が増え、この家が「帰りたい場所」になっていく。
そう信じながら、二人は新しい生活の第一日目を迎えた。
次回予告 第三期 第六話「一緒に迎える朝」
新居で迎える初めての朝。寝坊して慌てて朝食を作るミヤビと、それを手伝うユウキ。慌ただしい朝も笑顔で乗り越える二人は、「一緒に暮らす幸せ」を少しずつ実感していく。何気ない日常こそが、かけがえのない宝物だと気づく物語。




