第三期 第四話 「結婚式の準備」
五月。
爽やかな風が吹く休日。
ユウキとミヤビは、大阪市内のブライダルサロンを訪れていた。
入口には色とりどりの花が飾られ、ロビーには幸せそうな新郎新婦の写真が並んでいる。
「いよいよだね。」
ミヤビが少し緊張したように笑う。
「うん。」
ユウキもゆっくりとうなずいた。
婚約してから少しずつ進めてきた結婚準備。
今日は、結婚式場の見学と衣装選びの日だった。
チャペルへ案内される。
白を基調とした空間に、柔らかな陽射しが差し込んでいた。
「きれい……。」
ミヤビが思わず息をのむ。
祭壇へ続く長いバージンロード。
静かなパイプオルガンの音色。
ユウキもその景色を見つめながら、小さくつぶやく。
「ここを歩くんだな。」
その一言だけで、結婚が少しずつ現実になっていく気がした。
式場の見学を終え、次は衣装合わせ。
「それでは、新婦様はこちらへどうぞ。」
スタッフに案内され、ミヤビは試着室へ向かった。
「少し待っていてくださいね。」
「はい。」
ユウキはソファに座りながら、どこか落ち着かない。
(どんな姿なんだろう。)
期待と緊張が入り混じる。
しばらくして、カーテンがゆっくり開いた。
「お待たせしました。」
純白のウェディングドレスに身を包んだミヤビが、少し照れたように立っていた。
レースの刺繍が施されたドレス。
柔らかなベール。
いつもより少しだけ大人びた表情。
ユウキは思わず言葉を失う。
「ユウキ?」
ミヤビが不安そうに尋ねる。
「……どうかな?」
ユウキはようやく口を開いた。
「すごく、きれい。」
それ以上の言葉が出てこなかった。
ミヤビは少し頬を赤らめながら微笑む。
「ありがとう。」
今度はユウキもタキシードへ着替える。
ネイビーのタキシード姿で姿を見せると、ミヤビが目を丸くした。
「似合ってる。」
「本当?」
「うん。」
「すごく格好いい。」
今度はユウキが照れる番だった。
「ありがとう。」
二人は見つめ合い、自然と笑顔になる。
衣装合わせのあと、式の打ち合わせが始まる。
「招待客は何名くらいにされますか?」
プランナーが優しく尋ねる。
「家族と親しい友人を中心にしたいです。」
ユウキが答える。
「サークルのみんなも呼びたいね。」
ミヤビが笑う。
「もちろん。」
ユウキもうなずく。
「『オタクっ子集まれ』のみんなには、一番に来てもらいたい。」
出会いのきっかけとなった、大切な仲間たちだった。
帰り道。
二人は式場のパンフレットを見ながら歩く。
「決めることがたくさんあるね。」
「でも、不思議と楽しい。」
ミヤビが言う。
「一人だったら大変だったかもしれない。」
「でも。」
「ユウキと一緒だから。」
「全部が思い出になる。」
その言葉に、ユウキは優しく微笑んだ。
「俺も同じ。」
夕方。
川沿いのベンチへ座る。
心地よい風が吹き抜ける。
「ねぇ、ユウキ。」
「うん?」
「今日、ドレスを着て思ったの。」
「何を?」
「結婚式って。」
「『ありがとう』を伝える日なんだね。」
ユウキは静かに耳を傾ける。
「家族にも。」
「友達にも。」
「そして。」
ミヤビは少し照れながら笑う。
「ユウキにも。」
「今まで出会ってくれてありがとうって伝えたい。」
ユウキはゆっくりとうなずいた。
「俺も。」
「人生で一番感謝を伝える日にしたい。」
二人は手をつなぐ。
夕日に照らされたその手には、おそろいのペアリングが静かに輝いていた。
帰宅後。
ミヤビは今日撮影した試着姿の写真を見返していた。
少し恥ずかしそうに笑っている自分。
そして、その隣で照れながら笑うユウキ。
「早く本番が来ないかな。」
一方、ユウキもスマートフォンに保存された写真を見つめ、小さくつぶやく。
「世界で一番きれいだった。」
その言葉を胸にしまいながら、結婚式の日を静かに待つのだった。
次回予告 第三期 第五話「新生活への引っ越し」
いよいよ新居への引っ越しの日。家具を運び、段ボールを開け、一つずつ新しい生活を作り上げていく二人。夜、何もないリビングでコンビニのお弁当を食べながら、「ここが私たちの家なんだね」と笑い合う、温かな新生活が始まる。




