第三期 第三話 「新居探しの休日」
四月。
桜が葉桜へと変わり始めた頃。
ユウキとミヤビは、不動産会社の前に立っていた。
「今日は本格的に探す日だね。」
ユウキが資料の入ったバッグを持ち直す。
「うん。」
ミヤビも少し緊張したように笑った。
以前モデルルームを見学したことはあった。
けれど今日は違う。
本当に二人が暮らす家を決めるための一日だった。
「こちらの物件はいかがでしょうか。」
担当者が最初に案内してくれたのは、難波から電車で十五分ほどの新築マンションだった。
玄関を開ける。
「わぁ……。」
明るいリビング。
南向きの大きな窓。
対面キッチン。
温かい木目調の床。
二人は思わず顔を見合わせた。
「いい感じだね。」
「うん。」
リビングへ入る。
担当者が間取りを説明している間も、二人の頭の中では未来の生活が広がっていた。
「テレビはこの壁かな。」
ユウキが指差す。
「ソファはこっち。」
ミヤビも隣へ立つ。
「ここなら二人で映画を観ても広そう。」
「アニメも。」
「もちろん。」
二人は笑った。
続いてキッチン。
「広い!」
ミヤビが嬉しそうに声を上げる。
「料理しやすそう。」
「二人で並んでも余裕あるね。」
ユウキがシンクの前へ立つ。
「休日は俺もちゃんと料理する。」
「約束だよ?」
「うん。」
「肉じゃがだけじゃなくて、レパートリーも増やす。」
「楽しみにしてる。」
ミヤビは満面の笑みを浮かべた。
書斎として使える小さな部屋もあった。
「ここはどう使う?」
ユウキが尋ねる。
ミヤビは少し考えてから答える。
「半分ずつ。」
「半分?」
「ユウキの仕事机。」
「私の勉強机。」
「そして本棚。」
「アニメとライトノベル専用。」
「絶対足りなくなる。」
二人は同時に笑った。
二件目、三件目も見学したが、最初の部屋がやはり一番しっくりきた。
夕方。
近くのカフェで一息つく。
「どう思った?」
ユウキがコーヒーを飲みながら尋ねる。
「私は最初の部屋が好き。」
「俺も。」
「なんか。」
「帰りたくなる家って感じがした。」
ミヤビは嬉しそうに頷いた。
「私もそう思った。」
二人は間取り図をテーブルに広げる。
「ここにダイニングテーブル。」
「ここに観葉植物。」
「テレビは少し大きいのにしよう。」
「ソファは寝転べるくらい大きいの。」
「休日はアニメを一気見。」
「お菓子も準備して。」
「途中でお昼寝。」
次々と未来の暮らしが形になっていく。
ふと、ミヤビが小さく笑った。
「ユウキ。」
「うん?」
「私ね。」
「家って建物じゃないと思う。」
「え?」
「ユウキが『おかえり』って言ってくれる場所。」
「私が『おかえり』って言える場所。」
「それが家なんだと思う。」
ユウキは静かに頷いた。
「そうだね。」
「どんな豪華な家より。」
「笑顔で帰れる家が一番だ。」
夕焼けの中、二人は最初に見学したマンションの前へもう一度戻った。
建物を見上げながら、ユウキが言う。
「ここにしようか。」
ミヤビは少し驚いたあと、大きく頷く。
「うん。」
「私もここで暮らしたい。」
二人は自然と手をつないだ。
これから始まる新生活。
この場所で、笑って、泣いて、支え合いながら毎日を積み重ねていく。
そう思うだけで、胸が温かくなる。
帰宅後。
ユウキは契約書類の説明資料を机の上に置き、窓の外を見つめた。
今まで「一人暮らしの部屋」だった場所も、もうすぐ新しい役目を終える。
一方、ミヤビは新居の間取り図を何度も見返していた。
リビングに丸を描き、小さく書き込む。
『ここで、みんなでアニメを観る。』
その一言を見て、思わず笑みがこぼれる。
新しい家は、まだ空っぽだ。
けれど、そこにはこれから二人で積み重ねる、たくさんの思い出が待っている。
次回予告 第三期 第四話「結婚式の準備」
新居が決まり、次はいよいよ結婚式の準備へ。式場選びや衣装合わせ、招待状作りに追われる二人だが、その一つひとつが幸せな時間だった。純白のウェディングドレス姿を初めて見たユウキは、思わず言葉を失ってしまう。




